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コメ御三家の系統販売価格が焦点に【熊野孝文・米マーケット情報】2024年9月3日

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神奈川の大手米穀小売店からメールで「毎日100人ぐらいの消費者が店の前に並ぶので怖いくらいだ」という連絡があったので、電話で詳しい状況を聞いてみた。この大手米穀小売店は、主力は事業所給食や外食店などいわゆる業務用米だが、精米所を併設した店舗でも棚田米や有機米などこだわったコメを販売している。通常はチラシを撒くこともないので消費者が列を作ることはないのだが、8月27日から千葉の新米を店頭に並べたところSNSで情報が拡散、毎日列ができるようになったという。

komemarket_1600_900.jpg日米マーケット情報6年9月3日号 表.jpg先週から店頭に並べ始めた新米は千葉の「あきたこまち」や「ひとめぼれ」で、5㌔当たりの売価は2480円で、スーパー等で販売されている新米よりかなり割安で、これがSNSで拡散され列ができた原因。こうした価格で販売できた最大の要因は、長年にわたり千葉の生産者と直接取引してきたことで信頼関係を築き上げたことが大きい。生産者との直接取引は千葉の生産者だけでなく全国各地の棚田や有機米生産者など広域に及んでいる。千葉の生産者は特栽米作りに励む篤農家だが、新米の検査時に検査官から「そんな価格で小売店に売らないでうちに売れば2万4000円で買うよ」と言われたが、それを拒否して従来通り、新米をこの小売店に出荷してくれた。小売店側は平成5年のコメ不足パニック時に消費者から「米屋にコメを高く買わされた」という思いが醸成され、その後、コメの消費が急激に落ち込んだことから二度とそうした思いを消費者にさせたくないとのことでこの売価に設定した。ただ、売り出してみると用意した100袋が1時間で売り切れる有様で、物流改革の影響で運送の手配が難しくなっていることから自らトラックをレンタルして千葉にコメを取りに3回も行き、運び込んだ総量は30㌧にもなった。こうした頑張りにも関わらず今後、9月から新潟、長野、秋田、山形などの産地から新米を買い付けることになるが、仕入れ価格の値上がりは避けられないだろう。

そのことは829日に行われたクリスタルライス取引会の価格を見ればわかる。表で明らかなようにこれから出回る東北各産地銘柄はほとんどが2万6000円以上の売り唱え価格になっている。関東早期米の高値を引きずっているような形だが、一向に沈静化しないコメ不足騒動を見れば産地側が強気になるのも無理はない。昨年同期に比べると一俵当たり約1万円高く、小売の精米価格では5キロで1000円高く売らないと採算が取れない。食糧法は供給と価格の安定を謳って、莫大な予算を投じてコメ政策を推進しているが、現状を見ると食糧法などなくして今推進しているコメ政策をすべて放棄して自然に任せた方がよほど消費者のためになるのではないか。平成5年のコメ不足も実態は人為的に演出されたもので、そのことは食糧法よりはるかに流通規制が厳しい食管法があったにも関わらず、急いで国家在庫を空にしたことでもわかる。おまけに統計情報部は作況を出すたびに指数を落とすように圧力をかけられた。その結果が生産量よりも検査数量の方が多くなるというあり得ないことが起きた。今回のコメ不足騒動も作為的と言う意味では平成5年に似ている。

農水省は3月に開催した食糧部会で5/6年度の需要量を681万tと発表したが、7月の食糧部会では702万tに上方修正した。わずか4ケ月で21万tも見誤ったのである。この理由を後付けとしてインバウンド需要などと言っているが、3月時点で農水省はインバウンド需要は織り込み済みと言っていた。高温障害による精米歩合低下についても同じである。わずか4ケ月で21万tも狂う需給見通しなど出さない方が良い。これを信じて仕入販売している流通業者や実需者は目も当てられない。

今日の事態を沈静化させるには、家庭用の御三家「新潟コシヒカリ」「秋田あきたこまち」「ななつぼし」を集荷販売している農協系統が卸に市中価格より大幅に安い価格(12万円以下)で販売し、その価格を公表すれば一気に全体の流れが変わるはずである。

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