(400)通過点で考えること【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年9月6日
何とか400回です。週に1度、1年に50回とすれば8年間です。まずは継続する機会を与えて頂いた皆様に深く感謝したいと思います。
半世紀ほど昔、部活動で水泳をやっていた頃、「400」という数字には様々な意味が存在した。今と異なり屋外プールが普通の時代である。
夏休み期間でも運動部の練習は続いた。グラウンドで練習する野球部やサッカー部、隣のコートのテニス部などの掛け声をBGMのように聞きながら毎日泳いだ時代だ。
例えば、夏の強化練習では準備体操の後、まず、アップ(ウォーミング・アップ)で400M(メートル)を流した。この時間は一種の水中瞑想、あるいは精神集中に至る時間だった。今の年齢での400Mはかなり長いが、当時はすぐに終わった。後は日々のメニューに従った練習である。
最初はSD(スタート・ダッシュ)だ。25MプールでのSDを16~20本、これは飛び込みとダッシュの練習だ。16本で400M。今では飛び込みは踏み台で足を前後にずらす方法が主流だが、当時は両足をそろえて飛び込んでいた。一連の練習(50Mや100Mなどの距離と時間を変えたインターバルなど)をこなした後、最後にもう一度SDを16本やり、ダウン(クール・ダウン)400Mで練習が終了する。400Mは、ボクシングの1ラウンドのようなイメージととらえていた。
かなり練習はしたが、当時の東京都大会で圧倒的強さを誇った日大豊山高の選手たちは同じ大会・同じプールで泳ぐと同世代とは全く思えなかった。全日本レベルで見れば、その遥か上に尾道高という異次元の絶対王者がいた時代である。
一般に、水泳や陸上は「型」と「時間」の競技である。理想的な泳ぎや走りの「型」を習得し、それを持続させるために日々練習する訳だ。たまたま同じ中学の先輩で、かつての自宅の近くにKさんという当時の全日本上位ランカーがいた。ある時、地元の大会の決勝で隣のコースで泳いだ。当時の自分はそこそこ泳げたはずだが、飛び込んで前を見た瞬間に斜め前に彼の足の裏が見えた時の、選手としての絶望的感覚は今でも鮮明に覚えている。極めてローカルな話だが、同じ町内メンバーでリレーを組んだため、他の町内との対抗レースではその先輩のおかげで何年間かは我々が圧倒的に強かった。
実はその頃からかもしれない。プレーヤーとその組織の運営・管理などのような共存する2つの世界、あるいは役割の違いに何となく気が付き始めた訳だ。
後年、自分が経験した「選手」的な職業として穀物のトレーダーがある。先物相場の動きを見ながら適切なタイミングで動く。本格的なプロのトレーダーではなく、あくまで人事異動の中で数年間経験したに過ぎない。それでもその世界で一生を過ごす人たちと何人か知り合いになり、違う世界観を学んだ。今の仕事も半分以上は「選手」としての活躍・活動を求められる。だが、それ以外の仕事も当然こなさなければならない。次世代の「選手」が思い切り活動するためには、組織維持とそれなりの環境整備が必要だからだ。
さて、昨今の世の中では「ジョブ型雇用」という言葉が各所で見られる。簡単に言えば、特定業務の「選手としてのみ雇用する」仕組みである。使えなくなれば、最悪の場合には離職するしかない。その場合でも従来型の日本の組織には元「選手」へのセーフティ・ネットがそれなりに存在していたと思う。だが、「ジョブ型雇用」が進むにつれて、その逃げ場が激減する。本当は、そういう現実こそ学校教育の中でしっかりと伝えていく必要があると思う。「気が付いた時には遅い」ということにならないように。
* *
「量よりも質」、「量はどこかの段階で本当に質を超える?」、「幅と深さ」、いろいろと考えてしまいますね。
重要な記事
最新の記事
-
日本人と餅【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第331回2025年3月7日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「コメ騒動」の原因と展望~再整理2025年3月7日
-
(425)世界の農業をめぐる大変化(過去60年)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年3月7日
-
「とやまGAP推進大会」に関係者約70人が参加 JA全農とやま2025年3月7日
-
新潟県産チューリップ出荷最盛期を前に「目合わせ会」 JA全農にいがた2025年3月7日
-
新潟空港で春の花と「越後姫」の紹介展示 JA全農にいがた、新潟市2025年3月7日
-
第1回ひるがの高原だいこん杯 だいこんを使った簡単レシピコンテスト JA全農岐阜2025年3月7日
-
【スマート農業の風】(12)ドローン散布とデータ農業2025年3月7日
-
小麦ブランの成分 免疫に働きかける新機能を発見 農研機構×日清製粉2025年3月7日
-
フードロス削減へ 乾燥野菜「野菜を食べる」シリーズ発売 農業総研×NTTアグリ2025年3月7日
-
外食市場調査1月度市場規模は3066億円2019年比94.6% コロナ禍以降で最も回復2025年3月7日
-
45年超の長期連用試験から畑地土壌炭素貯留効果を解明 国際農研2025年3月7日
-
日本赤十字社のプロジェクト「ACTION!防災・減災」に参加 コープみらい2025年3月7日
-
健康増進へ野菜摂取レベルなど競う企業対抗企画 タキイ種苗が優勝2025年3月7日
-
フルーツピークス横浜ポルタ店2周年記念 いちごの超豪華パフェや感謝価格のタルト登場2025年3月7日
-
EVトラックの最適充電マネジメントシステムサービスを提供開始 グリーンコープ生協くまもと2025年3月7日
-
「金芽米」活用で市職員の花粉症予防・改善にチャレンジ 大阪・泉大津市2025年3月7日
-
台湾へのイチゴ輸出を本格化 JAかみましき2025年3月7日
-
道の駅「明治の森・黒磯」で「手塚さんちの長ねぎドレッシング」新発売2025年3月7日
-
鳥インフル 米デラウェア州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年3月7日