お米見廻り隊が感じたコメ売り場の変化【熊野孝文・米マーケット情報】2024年9月17日
このところ週末は複数のスーパーのコメ売り場を見に行くというのが習慣のようになっている。おこめ見廻り隊のようなことを行っているのだが、こうした行動をしている消費者は少なくないだろう。日曜日に大手スーパーに出向いてみると広いコメ売り場には新潟こしいぶきの1種類だけが置かれており、売価は5㎏3199円(税別)であった。売り場に立ち寄った主婦らしき消費者は「まだ高いわね」と独り言を言って買わずに立ち去った。
定点調査と言うほどではないが、週末ごとにスーパーのコメ売り場を見に行くと様々な変化に気づくことが多い。南九州の早期米が売り棚に並び始めた8月初旬は、まだ売り棚には高級銘柄と言われる5年産米の2㎏袋が残っていた。早期米の売り値はスーパーにより大幅な値開きがあったが、おおよそ5㎏3000円程度で、5年産魚沼コシヒカリ程度に価格設定されていた。その後には2㎏袋の精米もなくなり、南九州の早期米も姿を消し、売り棚にはパックご飯や海苔が置かれていた。そのころ例年より早く盆前に関東早期米刈取りが始まったことから、これらの早期米が売り棚を埋めるのではないかと予想していたが、間の悪いことに南海トラフ地震注意報が出たことから並んだ先から買われ、すぐに売り棚が空になった。農水省が公表しているPOSデータに基づくスーパーでのコメ販売数量の推移によると、今年8月5日から11日までの販売数量は前年同期比38.8%増、12日から18日までが同21.8%増、19日から25日までが48.6%増と大幅に伸びており、この時期に消費者の買い急ぎの傾向がみられたことがわかる。
この情報は農水省がまとめた「6年産米のコメ流通情報」の中に出ているものだが、これ以外に川上段階で6年産米の初検査の状況として8月末までに13産地銘柄、9月12日までに同じく13産地銘柄が検査を受けたことになっており、初検査時期は例年より早い。また、出荷のペースは8月末までに集荷業者から卸業者へ出荷した数量は前年同期に比べ2倍近い194%になっており、早いペースで出荷されたことがわかる。また、大手卸10社の6年産精米の販売状況も週間ごとに前年同期比のデータとして公表されている。それによると8月3日から9日までが143%、10日から16日までが135%、17日から23日までが189%、24日から30日までが225%、8月31日から9月6日までが253%、9月7日から13日までが237%となっており、盆明けから現在まで昨年同期に比べ約2倍のペースで精米が販売されていることになる。
こうした旺盛な新米需要を反映してか仲介業者の売り買い情報を見ると、直近でも出回り始めた北海道産や東北各県産米とも2万6000円から2万8000円と言う高値で取引されており、反落する兆しが見えない。
そうした中、異質ともいうべき値動きをしているのが堂島の先物市場の価格である。8月13日にスタートしたので9月13日でちょうど一か月経過したことになる。それまでの値動きは、スタート時の上場基準価格が農水省の相対価格をベースにした現物指数価格であったことから市場価格と乖離しており、ストップ高の連続で、売り物薄の中、9月4日まで上げ続けた。9月4日の引け値は、2月限が2万4100円、4月限2万4740円、6月限2万4,400円、8月限2万4050円であった。その後、値下がりに転じてストップ安の連続で9月13日の引け値は、2月限2万1130円、4月限2万1800円、6月限2万0950円、8月限2万1360円となっており、高値から3000円ほど下げている。
売買枚数が少ないとはいえ、売人の中には当業者もおり、先行きの値下がりを見越しして売りヘッジしている。中には1000枚単位の売りを検討している当業者もいるが、今の出来高では売買が成立しそうになく様子見を決め込んでいる。
1000枚と聞くととてつもなく大きな数量に見えるかもしれないが、堂島取の取引単位は1枚50俵であり、1000枚は5万俵に相当し、卸が扱う単位としてはそれほど大きな数量ではない。ただし、取引所にはそれだけの売り玉を受けられるだけの流動性がなければならず、一般投資家の参加拡大が不可欠だ。コメ先物取引に参加するためには、まず、堂島取で売買が出来る商先業者に口座を開設する必要がある。取引方法は対面取引とネット取引があるが、申込先ややり方が変わるので注意が必要だ。ネット取引ではネット上で必要事項を記入して商先業者の審査を経て、証拠金(1枚当たり2万3000円から3万円)振り込めば取引できるようになる。この時、口座を開設した人にはもれなくお米券をプレゼントするようにしたら一般の人の関心も高まり、コメ業界にとっても米券を通じた消費拡大にもなると思うのだがどうだろう。
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