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「のうすいしょう」ってどう書くの【小松泰信・地方の眼力】2024年9月25日

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七福神の大国天を模したイラストのうえに、「農衰大臣 大穀天。」と記されている。よく見ると大穀天の顔は、坂本農衰大臣、じゃなくて、坂本農林水産大臣によく似ている。いずれにしましても、一本取られました。

komatsu_honbun.jpg説得力なき大臣の説明
 このイラストで当コラムから一本取ったのは、放送タレントの松尾貴史氏(毎日新聞、9月15日付の「ちょっと違和感」)。

 そのコラムで氏は、最近の米不足に「非常に違和感」を覚えているとして、次のように記している。

 「長期保存ができる米を主食とするこの国が、なぜこんな状況に陥ってしまうのだろうか。台風の接近や南海トラフ地震などの不安感から、コメを買い占めた浅ましい人が多かったのかもしれない。だが、政府は100万トン近くあるという備蓄米をなぜ供給しないのか。不作の時のためだからというが、不足している状況は同じだろう。『値崩れするから』という訳のわからない理由で、庶民の食を脅かす行政とは何なのか。放出するときに、米が不足する直前の価格を鑑みて調整すればいいだけではないか。あの農相の説明の説得力のなさはどうだろう。漫画家の水木しげるさんが『戦争はいかんです。腹が減るだけです』と言っていたのを思い出す。武器などを買うよりも食の安心を拡充するほうが、よっぽど大切ではないか」と。

 前回の当コラムで取り上げたテーマであるが、松尾氏のコメントに異議なし。そして、農衰大臣という洒落の効いた的確な表現も活用させていただくことにする。

不可欠なコメ政策の検証と再構築
 高知新聞(9月14日付)の社説も、「主食としての依存度は依然高く、供給不足や値上がりが消費者に与える影響は大きい。政府は状況を正確につかみ、これまでのコメ政策を検証する必要がある」と訴えるともに、「一時的とはいえ、主食が手に入らない状況を招いたことは重く受け止める必要がある。『在庫はある』とのアナウンスも結果的に外れた。因果関係には不透明さも残る。まずはしっかりとした分析が不可欠だ」とする。

 そして、背景の一つに「生産調整を長く続けてきたコメ政策」をあげ、「自給率100%のコメは食料安全保障の観点から極めて重要な品目である。その前提の下、気候変動や災害で高まっている栽培リスク、インバウンドを含めた海外需要の伸び、さらに、生産者の減少、耕作放棄地の増加などといった視点を加味し、政策を再構築すること」を強く求めている。

 加えて、政府が放出しなかった「備蓄米の扱いも再考するべきだ」とする。

輸出で販路が広がれば生産意欲が高まる?
 毎日新聞(9月15日付)は、政府が力を入れる農林水産物の輸出拡大の旗振り役である日本貿易振興機構(JETRO)の石黒憲彦理事長のインタビュー記事を載せている。注目した質疑応答の概要は次の通り。

Q1;農産物の輸出拡大が注目されていることについて

石黒;国内では農業の担い手が減少し、耕作放棄地が問題になっている。輸出で販路が広がれば、生産意欲も高まり、海外向けの生産に特化した「輸出産地」が形成されて生産基盤の強化につながる。ポテンシャルのある生産力をいかに増強するかが日本の農業の課題。生産基盤を整える上で、輸出という選択肢が増えることは、非常に重要。

Q2;輸出を増やすためのカギは何か

石黒;新規市場と現地レストランなど非日系企業の開拓が必要。海外の食品見本市などにジャパンパビリオンを出展したり、海外のバイヤーを招請して日本の食材のこだわりを見てもらったりして商品取引の流れである「商流」を太くすることが重要。例えば、アジアと欧米では、回転ずしやおにぎりが人気でコメの需要がある。訪日客として味わった日本産牛肉を帰国後にまた食べたいという人たちもいる。お茶は健康ブームの欧米で需要あり。今後は、現地の料理にも日本の食材を使ってもらいたい。

Q3;順調に思える輸出拡大の課題

石黒;価格が高いこと。高価格でも魅力を感じてもらうためには、どのような手間をかけているかをバイヤーを通じて売り込む。海外の小売りから「日本のものは旬が限られていて、通年で店舗の棚が押さえられない」という悩みを聞く。販路拡大には、ある程度の量を生産する基盤作りが必要で、「輸出産地」の形成が求められる。 

第2・3次産業の論理はもう結構
 プロフィールによれば石黒氏は、東大卒業後、通産省(現経産省)に入省し、退官後は東京海上日動火災保険顧問や日本電気副社長を務めた方。あえて言えば、第2・3次産業の論理に浸りきってきた方。そこで通用した論理を第1次産業にも押し付けようとするのは職業病のなせる技か。それはそれでお役目ご苦労様です。しかし、第1次産業にとっては迷惑千万な論理の押し付け。 

 そもそも、農業の担い手が減少し、耕作放棄地が問題になっているのは、国内への供給が満たされ、販路がなくなったからではない。国が、農畜産物の自由化をすすめるにもかかわらず、生産者に対して離農を促すかのように、適切な価格保障、所得補償を行ってこなかったことの帰結である。

 さらに国民の基礎代謝すら賄えない38%という低水準の食料自給率には目もくれず、海外向け生産に特化した「輸出産地」を形成するとは、現実を直視しない噴飯物の絵空事。まして、それがこの国の農畜産物の生産基盤の強化につながるという、ことわざ「風が吹けば桶屋が儲かる」を思い出させるストーリーを真剣に考えているとすれば、それはそれで恐ろしいこと。

 例えば、油抜きの食生活は考えられないにもかかわらず、この国の油脂類の自給率はわずか3%。原油だけに限らず、食料としての油切れが気がかりな油断国家である。国家プロジェクトとして、耕作放棄地油田化プロジェクトのような取り組みが早急に着手されなければならないにもかかわらず輸出拡大とは、国外に目を向けさせる目眩まし作戦でしかない。

 もちろん、一部の野心的な企業や農業関係者が、それこそ自己責任で取り組むことを否定はしない。

 しかし、我々の税金を投入して農林水産大臣や省が鉦と太鼓で、「国内産地の強化策」と恩着せがましい屁理屈を付けて取り組むことには断固反対。そのようなカネがあり、ヒトがいるのなら、農業をはじめとする第1次産業の再生のために投入せよ。

 それができない時には、農水相(省)でも農衰相(省)でもなく、脳衰相(省)と呼ばれることを覚悟しなければならない。

 「地方の眼力」なめんなよ

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