【今川直人・農協の核心】法改正・5年後見直しで沈静化された「准組合員問題」2024年10月4日
平成28(2016)年2月に農水省が発表した法改正の解説「農協法改正について」は「地域農協」の改正前の状況を次のように指摘している。
「農協は協同組合である以上、員外利用規制がかかる、准組合員は議決権がなく、運営に参加できない」
法改正直後の解説で現行の員外利用制限を敢えて冒頭に置いているのは、准組合員問題は事業利用(規制)が主要課題であったという、農水省の認識の表明である。そして、5年後見直しに先立つ令和2(2020)年7月の規制改革推進会議答申は、「意志反映」と言う触媒を創造し、准組合員の事業利用を「農協の判断」とする方針を示した。
准組合員が農林水産業の協同組合に共通の制度で、農協の准組合員に(他の)農協及び農民を構成員とする団体が含まれていることから、准組合員制度に手を付けず問題の沈静化を図ったものである。
改めての「農業振興重視」
前記規制改革推進会議答申は貸出金額の47%が准組合員、18%が員外、35%が正組合員(農水省組合員調査、令和元年9月公表)であるとして准組合員の意思反映の必要性を説明している。そして、JAバンクグループの国内農業融資が貸出残高の5・3%(2018年度末)にとどまっている実態を示し資金の農業者への還流メカニズムの構築を求めている。
令和3年改正の農協等監督指針は、従来の「准組合員へのサー ビスに主眼を置いて、正組合員である農業者へのサービスが疎かになってはならない」に『農業者の所得向上を図るとの農協改革の原点に立ち...』を加えている。
自ら農業に参入する意義
2020年農林業センサス結果によると、農業経営体の販売金額第1位農産物の出荷先は首位の農協が64・3%、農協以外の集出荷団体が9・7%となっている。5年前に比べると農協が1・9ポイント低下し、集出荷団体が1・0ポイント上昇して消費者直売(0・1ポイント上昇)に代わって第2位になっている。販売事業のシェアは資材購買とも連動している。この新生組織の農協事業への影響がさらに増大することが懸念される。
農協の農業経営は、担い手不足がさらに深刻になる事態への「備え」が主であった。しかし、このような農協をめぐる動向から、農協事業の側面から農業経営の重要性を見直すべきではないであろうか。すなわち、農業経営を通じての実践的蓄積が組合員の支援と農協事業の強化につながり、また、農協の農場は農協の強固な支持基盤であるという側面である。シェア回復のための対策は限られている。後者による新しい可能性は今は微細でも軽視されるべきではない。直営、農協出資(対農地所有適格法人)に生産に取り組む集落営農を合わせた経営面積は年々増加を続け、現在全農地の5%に達しようとしている。これが1割に達すれば、日本農業と農協の様相は相当に変わってくる。
「全農夢ファーム」や「養液土耕栽培」などが、直営を含む多くの農協系経営体に導入されることを期待したい。都市化地帯も同様である。都市農協の直売所は多くの固定客を持っている。
(了)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(130)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年2月22日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(47)【防除学習帖】第286回2025年2月22日
-
農薬の正しい使い方(20)【今さら聞けない営農情報】第286回2025年2月22日
-
全76レシピ『JA全農さんと考えた 地味弁』宝島社から25日発売2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年2月21日
-
農林中金 新理事長に北林氏 4月1日新体制2025年2月21日
-
大分いちご果実品評会・即売会開催 大分県いちご販売強化対策協議会2025年2月21日
-
大分県内の大型量販店で「甘太くんロードショー」開催 JAおおいた2025年2月21日
-
JAいわて平泉産「いちごフェア」を開催 みのるダイニング2025年2月21日
-
JA新いわて産「寒じめほうれんそう」予約受付中 JAタウン「いわて純情セレクト」2025年2月21日
-
「あきたフレッシュ大使」募集中! あきた園芸戦略対策協議会2025年2月21日
-
「eat AKITA プロジェクト」キックオフイベントを開催 JA全農あきた2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付、6月26日付)2025年2月21日
-
農業の構造改革に貢献できる組織に 江藤農相が農中に期待2025年2月21日
-
米の過去最高値 目詰まりの証左 米自体は間違いなくある 江藤農相2025年2月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
-
村・町に続く中小都市そして大都市の過疎(?)化【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第329回2025年2月21日
-
(423)訪日外国人の行動とコメ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月21日
-
【次期酪肉近論議】畜産部会、飼料自給へ 課題噴出戸数減で経営安定対策も不十分2025年2月21日
-
「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日