(404)米国の農場数からの雑感【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年10月4日
「農場数」という切り口を手始めに、いろいろと考えてみました。
米国の農業センサス(2022年)によると農場数は190万487農場で、この数字は南北戦争以来、初めて200万農場を下回った水準のようだ。
「南北戦争以来、初(for the first time since before the Civil War)...」という表現を日本の時代区分で見れば、「幕末以来初」(南北戦争は1861-65年)とでもなるのであろう。この点は現代日本人が感覚的に持つ時代区分自体が世代により異なるため何とも言えない。ただし、同様の時間でも「〇〇は幕末以来初めて」と言われれば日本的には一種の感慨深さを感じるかもしれない。
少し見方を変えると、最近は世代で分ける方法も用いられている。例えば、X世代(1960-79年生まれ)、Y世代(1980-95年生まれ)、Z世代(1996-12年生まれ)、α世代(2013年生まれ以降)などだ。この分類だと現代日本における基幹的農業従事者の80%が60代以上という状況は、1960年生まれが既にX世代の最初期に分類されるため、基幹的農業従事者のほとんどがX世代より前に分類されるという訳だ。
X世代より前の名称で有名なのはベビー・ブーマー世代(日本では1947-49年生まれ)である。両者の谷間の世代の呼び名はあるのだろうが、余り普及していない。なお、米国ではX世代を1960年代後半生まれからとしている文献もある。いずれにせよ、現代の若手から見れば既にX世代自体がかなり古い世代に属する。そうは言っても、1960年生まれの筆者などは、自分はベビー・ブーマー世代ではないと多少こだわりたい気持ちも存在している。
ところで、日本の統計では生産活動の中核的な担い手である「生産年齢人口」を15~64歳としている。統計上、生産年齢最後の年である筆者としてはこの点にも微妙な感がある。そこで少し調べると、1960年の高校進学率は58%であったようだ。2020年には99%となり、現代日本は実質ほぼ全員が高校へ進学する時代となった。
一方、1960年に約10%であった大学進学率は、2020年で54%と、60年前の高校進学率にほぼ等しい水準まで上昇している。そうなると、あくまでも同年齢・同世代あたりでの比較になるが、大学卒はかつての高校卒と同じような集団内ポジションになる。それにともない、いわゆる最終学歴も上方へシフトしているようだ。
そんなことを考えつつ発足したばかりの新内閣の顔ぶれを見ると、総理以下20人のうち、大学院修了が4名、そのうち3名は海外の大学院修了である。かつての閣僚には「東大法」という学歴がずらりと並んでいたが、今回は4名、残りはさまざまである。世の中はいろいろな意味で変化してきているのであろう。
話を年齢に戻し、いわゆる肌感覚として見れば、生産活動の担い手は少なくとも18~69歳へと5年程後ろへシフトしているのが実態ではないだろうか。65歳を超えても元気に活躍している方々は非常に多い。今や定年という概念自体を再考する必要があるかもしれない。残念ながら制度はそこまで柔軟ではない。
ところで、かつて読んだ記事の中に興味深い内容があった。ある種の米国人は大都市でのビジネスをリタイヤすると田舎に適度な土地を買い牧場経営を行うことが一種の理想のようだ。そのせいかどうか、引退者農場は全米で25万以上ある。
日本人はどうか。長年都会で働いたサラリーマンは田舎に戻り土に触れる生活を望む方が多いという。だが、配偶者が必ずしも同意せず結構物議を醸すという話も聞こえてくる。相手からは「ターミナル駅の近く・マンション・病院/スーパー徒歩圏内」など、言われてみればリアルな生活を想定したリクエストが中心のようだ。もちろん、これらは人にも地域にもよるであろうが、現代社会の一面をうまく表している。
最後に2022年農業センサスの農場をまとめた表を添付しておく。じっくりと見て頂けると割と面白い。

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