(405)寄付【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年10月11日
「政治とカネ」、新内閣発足、そして解散から総選挙へと世の中は目まぐるしく動いています。こちらは少し視点を変え、「寄付」に関してです。
そもそも日本人はどのくらい寄付をしているのか。これを確認するには、特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会が発行している『寄付白書』を見るのが早い。世の中にはいろいろな白書があるが、その中のひとつである。
さて、寄付である。少し古いデータを漁っていたところ、2012年の個人寄付総額は6,931億円という数字を見つけた。この金額の内訳のうち、第1位は宗教関係2,287億円である。第2位と第3位は同額で緊急災害支援と国際協力が各々665億円である。第4位が教育・研究の587億円、そして第5位が国や都道府県や市町村の416億円である。
興味深い点は、第2位から第5位までを合計しても第1位の金額には達しないという点かもしれない。さらに言えば、このデータは2012年のものだ。つまり、東日本大震災の翌年の金額である。大災害の後の一般的感覚として、恐らく緊急災害支援や国際協力に対する寄付には多くの人が好意的に行動した時期である。それでも宗教関連の寄付には及ばない。
ところで、このデータには寄付と並び会費という項目がある。2012年の会費合計は3,227億円である。会費の中で最大項目は「自治会・町内会など」で、これが1,420億円である。これには驚いた。全国の自治会(町内会)数は約30万と言われている。一人当たりの町内会費はそれほど高くはないだろうが、マクロの視点から見ると凄い金額になると再認識した次第である。第2位の宗教団体の会費は543億円、自治会・町内会などの半分以下である。第3位は業界団体・商業団体・労働組合の303億円である。
この年の寄付と会費の合計は1兆158億円である。繰り返すが、これらはいずれも2012年の数字である。最新数字は先に述べた協会がまとめている。公開されている数字を見ると、2020年の個人寄付総額・会費総額は1兆2,126億円と2012年の1.7倍に伸びている。また、会費総額は2,989憶円であり2012年当時の93%と減少している。どうも、近年の日本では個人寄付が大きく伸びたが、会費は減少しているようだ。
これらの数字が国際的にどの程度の意味を持つかについても比較が示されている。日米英3カ国の個人寄付比較である。これは個人寄付総額が名目GDPに占める比率を比較したものだ。例えば、2020年の日本では1兆2,126億円は名目GDPの0.23%に相当する。同じ年の米国では3,241億ドル、円換算して34兆5,948億円と見れば、名目GDPの1.55%である。イギリスの数字は2018年だが、101億ポンド、日本円で1兆4,878億円、名目GDPの0.47%という数字が示されている。日本を1とすれば、米国は6.7倍、イギリスは2.0倍と理解してもよいかもしれない。
なお、寄付のことを英語ではdonationと呼ぶが、日本語では寄付と寄附という形で表現に違いがある。寄付という意味は同じだが、前者は一般的に用いられ、後者は現在でも法令や公用文書などという形で区別されている。
これも少し調べて見ると、かつては「付」と「附」の意味がかなりしっかりと区別されており、「わたす、あずける」などの意味を持つ「交付」「給付」などのときには「付」を使い、「つける、つく」の時には「附属」「附表」などのように「附」を用いていたようだ。
現在では両方とも同じように用いられているし、どちらかといえば「付」に統一される傾向があるようだ。
* *
いろいろな角度から見ると「寄付」も興味深いものです。
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