女性の農園経営者【イタリア通信】2024年10月12日
イタリアの農園経営者の28%は女性。それも若い女性が大きな数を占めています。
理由は色々あるでしょうが、EUや国が色々な政策を行っているのが大きいでしょう。
幾つかの政策を挙げてみると:
EUの共通農業政策・CAPは若者や女性の農業従事者、新規参入者などにたいして助成金や低利融資などの特別支援を提供しています。
イタリアでは国の農業・食品市場研究所 Ismeaが農業分野の若者や女性の起業支援に力を入れており、特に土地の購入や運営資金の融資プログラムを提供しています。
またイタリア政府は、EUの資金を活用して全国運営プログラム(PON)により、農業に従事する女性や若者を地域の特性に応じた持続可能な農業や、農業ビジネスの立ち上げ・拡大を研修や助成金などにより支援しています。
そして女性の経営者は有機農業やアグリトゥーリズモ、地元の特産物に力を入れる傾向が強いそうです。
私はローマの北100キロほどにある、故郷、前橋市の姉妹都市、白ワインで有名なオルヴィエートに本部を置くワイナリーのコンソーシアムの副会長を務める女性企業家ジュリア・ディ・コシモさんの農園、アルジッレ社を訪問して話を聞きました。
アルジッレとは神が人間創造の材料に使ったといわれる土、この土地が粘土質であることからつけた名前だそうです。
この地区は古代は海底であり、粘土質ばかりでなく、貝殻が変化した石灰質の土も含んでおり、美味しいワインのもとになる良いブドウが出来ます。特に石灰質はワインにフレッシュな味を与えてくれるとのことです。
今年36歳のジュリアさんはミラノの有名な大学、ボッコーニで経営学を学び、修士課程を卒業、夫はオルヴィエートの町でレストランを経営しています。
ジュリアさん
「この農園は私の祖父が趣味でワイン作りを始めたもので、当時は年間15.000本ほどでしたが、私はそれをしっかりとした企業に育て、昨年は9万本作りました。それにオリーブオイルや小麦も作っています。
現在従業員は私を含めて7人、ブドウの収穫時には季節労働者を雇っています。
私は大学を出てミラノでコンサルタント会社に勤めていましたが、祖父のワイナリーを継ぐ者がいないので、母などの反対を押し切り引き受けました。
大学で勉強したことは農園経営の基礎にはなっていますが、ワイン造りはここに住んで、一から教えてもらいながら、体で覚えました。
ワイナリーで働く女性の多くは経理や広報など。私のようにブドウの木の管理から収穫、醸造から商品化、経営までやっている人は少ないと思います。
アルジッレはエステート・ワイナリー。ここの農園で作られたブドウのみを使っています。そして環境にやさしい農業を目指し、農園すべてを有機栽培に切り替え、来年には認定される予定です。
その為にブドウや熟成タンクなどを洗った汚染水を業者に渡して処理してもらうのではなく、浄化槽を作り、砂利を敷き詰めた中に小さな穴をあけた管を通し、その上に土を盛り汚水を流します。そしてその上にアイリスの苗を植えています。アイリスの根からブドウの汚れを食べる菌が出て、水が下の口から出るころには浄化されており、清掃用などに使っています。
またオルヴィエート原産の品種のブドウを使ったワインや、素焼きの壺で熟成したワインなど、色々と考えて作っています。ワイン造りは大好き。とても楽しいです。」と顔を輝かせて語ってくれました
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