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退廃せし政党の大敗【小松泰信・地方の眼力】2024年10月30日

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「裏金も県警の隠蔽疑惑も、権力を持つ人が好き勝手をする点で同じ」と語るのは、今回の衆院選で野党に投票した鹿児島市の主婦(西日本新聞、10月30日付)。

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衆院選の民意はここまで及ぶ

 県警の隠蔽とは、鹿児島県警で不祥事のもみ消しと隠蔽が疑われている5事案。西日本新聞(9月6日付)によれば次の通り。
①鹿児島県医師会職員による強制性交容疑事件(21年9月発生);加害男性の父親が元警察官。署が告訴状受理を拒む。
②霧島署巡査部長のストーカー容疑事件(23年2月発生);県警が事件を放置した疑い。県警が防犯カメラの映像消去。霧島署が被害相談記録を作成せず。県警は「署は作成対象外の監察事案だと判断した。削除した事実はないと確認した」
③捜査書類の廃棄促す文書(刑事企画課だより、県警が23年10月作成);「再審や国賠請求で保管した捜査書類が組織的にプラスになることはない」と明記。
④枕崎署巡査部長の盗撮事件(県警が23年12月把握、24年5月に逮捕);県警は「19~23年に少なくとも80回の盗撮行為を確認した」
⑤霧島署巡査長のストーカー容疑事案(県警が23年12月把握);駐在所の巡回連絡簿を悪用。被害女性は当初事件化を要望、県警は女性が要望を撤回したとして捜査終結。
 氷山の一角とまではいわないが、これだけあれば限りなくクロに近いグレーの反社組織。
 その鹿児島県で、4小選挙区のうち3選挙区で自民党前職が落選した。落選前職の一人が小里泰弘農林水産大臣。比例復活もかなわず、辞意を表明している。
 「県警の不祥事もみ消し疑惑に関する調査特別委員会(百条委員会)の設置に(34人を擁する最大会派の自民党県議団が)反対したことも、有権者の反発を招いた」と大敗の要因を分析するのは、複数の自民関係者。まぁ、後の祭り。
 百条委員会の設置案を提出した野党系会派「県民連合」(7人)の福司山宣介県議は「衆院選の民意も背景に、あらためて設置を訴えていく」と語ったとのこと。警察が疑惑のコンビニでは示しがつかぬ。どんどんやるべし。

ここでも出てくる負の安倍レガシー

 「約6年間、本当にずっと苦しんできた。尊厳を踏みにじられ、処罰感情が和らぐことはありません」「誰にも言えず、孤独でした」「適正に処罰してほしい。私を救ってほしい」と、記者会見でハンカチを握りしめ、涙を流し、絞り出すように語る女性の声を聴き、姿を見て、胸が締め付けられた。
 ここまで追い込んだのは北川健太郎。大阪地方検察庁検事正等を務め、検事時代は「関西検察のエース」として名を馳せたそうだ。大阪地検検事正在任中には、佐川宣寿元国税庁長官らを不起訴処分とした学校法人森友学園への国有地売却に関する決裁文書改ざん問題などの捜査を指揮した。その人物が、2018年、酒に酔って抵抗できない状態の女性(当時の部下)に性的暴行をしたとして、準強制性交等罪に問われた。その初公判の25日、「争うことはしません」と起訴内容を認め、「被害者に深刻な被害を与えたことを反省し、謝罪します」と述べた。
 佐川宣寿、学校法人森友学園とくれば、森友学園への国有地売却をめぐり、決裁文書改竄の経緯を記した文書(通称「赤木ファイル」)を省内に残し、改竄を強要され、うつ病を発症し、自ら命を絶たれた赤木俊夫氏の無念を思い出す。
 そして忘れてならないのが、故安倍晋三、昭恵夫妻。もしも安倍氏が存命であったら、安倍案件として女性は泣き寝入りを強いられ、北川はのうのうと法曹界で生きていけたのか? おぞましい限り。

アベ政治の罪深さ

 衆院選での与党過半数割れの結果に関する、識者二人の興味深い見解を西日本新聞(10月29日付)から紹介する。
 御厨貴氏(東京大名誉教授)は、「自民党派閥裏金事件に端を発した『政治とカネ』問題と、その後のいいかげんな対応を有権者が見逃していないという証しだ。(中略)決め手になったのは、裏金問題で非公認にした候補者に対する政党交付金2千万円の支給だ」と分析。
 田中均氏(日本総研国際戦略研究所特別顧問)は、「石破政権は発足して間もない。むしろそれよりも、第2次安倍政権以降の12年間の在り方が問われた結果なのではないか。裏金問題や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題だけではない。森友、加計学園や『桜を見る会』の問題もそうだ。『1強体制』の下で数々の問題が起きたが、事実関係の究明はなされなかった。十分な説明はなく、誰かが責任を取ることもなかった。こうした政治体質に対して有権者が『ノー』を突き付けたのだろう」と分析。
 当コラムは、田中氏が指摘する、「アベ政治」の許しがたい所業へのたまりにたまった国民の怒り不満が、御厨氏が指摘する「裏金事件に端を発した『政治とカネ』」を引き金に爆発し、2千万円の「裏公認」がとどめを刺したと見る。
 
JAグループは民意を無視するのか

 北海道新聞(10月28日付)の社説も、「党による再調査はもちろん、裏金議員の政治倫理審査会への出席や証人喚問の受諾などを早急に判断しなければならない」「目標時期をあいまいにしている政策活動費の廃止や、30年来の積み残し課題となっている企業・団体献金の禁止は、退路を断って実現すべきだ」と訴える。
 さらには、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と党の関係もいまだに不明な点が多い」「1強体制の政治は、集団的自衛権の行使容認や防衛力の大幅増強などの大きな転換政策も、国会軽視で進めるやりたい放題の側面があった。森友・加計学園や日本学術会議の任命拒否の問題など、数々の不祥事や疑惑も生んだ」と、アベ政治の罪を示し、「今回の選挙結果は、与野党の伯仲による立法府の復権を求めた民意の表れ」と総括する。
 さて、JAグループの政治組織である全国農政連は、今回229人の候補者を推薦した。推薦した顔ぶれを見ると野党はゼロ。23人は、裏金問題に関係した候補者で、うち3人は自民党から非公認とされている。
 長谷川浩敏会長が、153人の当選議員について「信頼関係をより一層強化し、政治活動を支援していく」と強調したことを日本農業新聞(10月29日付)が伝えている。
 民意と乖離した推薦と談話には唖然とする。この組織が退廃政党と一緒に自滅するのは結構。だが、道連れだけは願い下げ。

 「地方の眼力」なめんなよ

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