シンとんぼ(116) -改正食料・農業・農村基本法(2)-2024年11月2日
シンとんぼには農業の持続的発展と食料の安定供給への切なる思いがあり、この思いが一日でも早く実現されることを願いながら、今後の農業を占う様々な事項についてして持論を展開している。現在、本年6月に改正された食料・農業・農村基本法をしっかりと学び、同法を理解した上で農業関係者が何をしなければならないのかを思案を巡らせている。実際の具体的な内容については来年3月に出される予定の「食料・農業・農村基本計画」で明らかとなるだろうから、詳細の検討は後に行うこととし、まずは改正法から国の考え方の方向性を探っていこうと思う。
前回、改正法の第一条に追加された「食料安全保障の確保等」の中に、「食料の合理的な価格」と「食料の安定供給」の2つのキーワードがあり、特に前者は生産費の上昇分を農産物価格に正しく転嫁するためには一刻も早く実現してほしい内容であると述べた。
これらのことについて国が何をやろうとしているのか、農水省が公表している「食料・農業・基本法の一部を改正する法律の概要」での説明をひも解いてみよう。
まず「食料の合理的な価格」の形成については、「需給事情及び品質評価が適切に反映されつつ食料の持続的な供給が行われるよう、農業者、食品事業者、消費者その他の食料システム関係者により、その持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならない旨を規定」とある。ここでいう"食料システム"とは、「食料の生産から消費に至る各段階の関係者が有機的に連携することにより、全体として機能を発揮する一連の活動の総体をいう」と第2条第5項に規定されている。
これをシントンボなりに解釈すると、「農産物の価格は、需給や品質が適切に反映しつつも農産物が安定して再生産ができるよう生産から販売の各段階で合理的な設定を行い、一部の関係者にしわ寄せがいかないように適正に形成されなければならない」といっているように思う。
これは、生産者にしわ寄せがいくような仕組みを払拭する意味でも一刻も早く実現してほしいものだが、どのようにして合理的な費用を算出しようとしているのか注意が必要だと思う。なぜなら、費用の大半を占める生産資材価格を正しく反映してもらえるようにしなければ、どこかにしわ寄せがいく構図が再現される恐れがあるからだ。過去に「農家の手取りが増えないのは生産資材価格が諸外国に比べて高いからだと断じられた」歴史があり、安易にそういう方向に行かないよう注視していかなければならないだろう。
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