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【浜矩子が斬る! 日本経済】「日本政治と欧州の反面教師」避けたい合従連衡2024年11月5日

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10月の総選挙が日本の政治状況に大きな変化をもたらした。選挙公示前は、単独過半数を制していた自民党が大幅に議席を減らした。公示前の247議席に対して、選挙後の議席数は191になった。

エコノミスト 浜矩子氏エコノミスト 浜矩子氏

公明党の選挙後24議席を併せても215議席で、過半数(233議席)に届かなかった。連立与党で何とか過半数確保という目標は空しくも未達に終わった。対照的に、最大野党の立憲民主党は公示前の98議席から148議席へと躍進した。国民民主党の公示前7議席から28議席へという驚異の議席4倍増劇もあった。かくして、野党と無所属議員を併せて250議席を占めるという国会内構図が誕生した。

これは大いにめでたいことだ。ついに自民一強というどうにもならない勢力図が崩れたのである。これで、ようやく動く政治の世界が日本に戻って来た。あまりにも長く続いて来た閉塞政治に風穴が開く。それが現実的に期待される状況となっている。まずは、有権者の選択に杯を挙げるべきだろう。

だが、問題はこれからだという面を否定するわけにはいかない。一躍、キングメーカーの座に躍り出た国民民主を巡る駆け引きが喧(かまびす)しい。諸政党間の腹の探り合いが慌ただしい。緊迫感と真摯(しんし)さがみなぎる国会論戦が実現する日は来るだろうか。絶え間ない勢力争いが常態化し、一向に何も決まらないということにならないだろうか。政党間の妥協が繰り返され、最善の政策選択が遠のくばかりとならないだろうか。

この気掛かりな問題を考える上で、反面教師となりそうなのが、現下の欧州政治模様だ。同床異夢の連立政権がそちこちに出現している。欧州連合(EU)の二大勢力である独仏いずれも然りだ。フランスでは、失地挽回を図ったマクロン大統領の電撃国民議会選挙が裏目に出て、実に危なっかしい中道系連立政権が出来上がってしまった。およそ求心力に欠ける中で、予算編成に四苦八苦している。

フランスにも増して危うさが深いのが、ドイツの連立政権だ。中道左派の社会民主党(SPD)・中道右派の自由民主党(FDP)・緑の党の三者で連立を形成している。だが、次第に連立とは名ばかりの様相が深まっている。それも無理はない。この三者の場合、同床異夢を通り越して呉越同舟といった方が実態に近い。

SPDは福祉国家としての基盤を立て直したい。そのための財政手当の実現を追求しようとしている。FDPは市場原理の復活によるドイツ経済の再活性化を目論んでいる。緑の党は、言うまでもない。グリーントランスフォーメーションを目いっぱい推進しようとしている。三者の間に方向感の共有がない。ひたすら、政権奪取のために、全く別の方向を向いている者同士の合体物が出来上がってしまったのである。

このとんでもない連立政権の主要閣僚の顔ぶれがすごい。首相はSPD党首のオラフ・ショルツ氏だ。財務相はFDPを代表するクリスチャン・リンドナー氏だ。そして、経済担当相が緑の党のロベルト・ハーベック氏である。面白いというか、無茶苦茶だというか。これでどうやって一致団結が成立するというのか。

連立政権も、そこに問題意識の共有があれば、奏功する可能性はある。国民のためにどうお役に立てるのか。苦しんでいる人々をどう救うのか。こうした政治の命題を巡って、真剣に議論できる土壌が形成されていればいい。最悪なのは、政党としての政治生命の維持のために合従連衡し、悪連携しようとすることだ。

皮肉なことに、ドイツのこのひび割れ茶碗のような連立の接着力を強めることができるのは、米大統領選におけるドナルド・トランプの勝利だという観測がある。共通の敵が団結につながるのだという。こういう情けないことにならないために、政治環境大激変下の日本の政治家たちは、賢く行動することができるだろうか。

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