【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】農業・農村を守る政策に新たな展望~超党派の国民運動が実るか2024年11月7日
前々回のコラムで紹介したとおり、2009年、当時の石破農水大臣が、2008年に筆者が刊行した『現代の食料・農業問題―誤解から打開へ』(創森社)を三度熟読され、この本を論拠にして農政改革を実行したいと表明された。
拙著での提案、及び、2009年9月15日に石破大臣が発表した「米政策の第2次シミュレーション結果と米政策改革の方向」の政策案の骨子は、
「生産調整を廃止に向けて緩和していき、農家に必要な生産費をカバーできる米価(努力目標)水準と市場米価の差額を全額補てんする。それに必要な費用は3,500~4,000億円で、生産者と消費者の双方を助けて、食料安全保障に資する政策は可能である」
というものだった。
これは、民主党政権の「戸別所得補償制度」と通ずるものであった。そして、筆者は、スイスの農業政策体系(図)から、食料安全保障のための土台部分になる「供給補償支払い」と、それを補完する直接支払いの組み合わせに着目し、図のような、「食料安全保障確立基礎支払い」を核にした超党派の議員立法「食料安全保障推進法」(仮称)の可能性を提起した。
農家だけを助ける直接支払いではなく、消費者も助け、国民全体の食料安全保障のための支払いであることを理解しやすくする意味で「食料安全保障確立基礎支払い」というネーミングも重要と考えた。そして、筆者が理事長を務める食料安全保障推進財団も活用し、各方面に働きかけることとした。
月20回前後の全国各地での講演に加え、ほぼ全ての政党から勉強会の要請があったので、各党で話をさせていただいた。国民民主党の勉強会では、この考え方を取り入れて政策を組み立てたいとの賛同をいただいた。自民党(積極財政議員連盟)、立憲民主党、共産党、れいわ新選組、日本維新の会、社民党、参政党など、ほぼすべての政党から基本的な方向性に強い賛同をいただいたと理解している。
そして、超党派の協同組合振興研究議員連盟がこれに着目してくれて、事務局長の立憲民主党の小山展弘議員を中心に内閣法制局とも打ち合わせを重ね、自民党の積極財政議員連盟の支柱である城内実議員(現・経済安全保障大臣)も賛同してくれ、議員連盟会長の森山裕議員(現・自民党幹事長)にも話をさせていただいた。
3本柱となる施策のイメージは、まず、①食料安全保障のベースになる農地10aあたりの基礎支払いを行い、それを、②コスト上昇や価格下落による経営の悪化を是正する支払いで補完し、さらに、③増産したコメや乳製品の政府買い上げを行い、備蓄積み増しや国内外の援助などに回す、というものである。
図に示した具体的な数値は、筆者が仮に置いた数字なので、数字はあくまで仮置きの仮置きだが、図のようなイメージになる。
以上からわかるように、今、議論されている農政改革への想いはみなほぼ同じであり、この流れの根っこはつながっているということである。それを超党派、かつ、国民運動として実現する絶好の機会が来ているのではないか。期待したい。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(123) -改正食料・農業・農村基本法(9)-2024年12月21日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (40) 【防除学習帖】第279回2024年12月21日
-
農薬の正しい使い方(13)【今さら聞けない営農情報】第279回2024年12月21日
-
【2024年を振り返る】揺れた国の基 食と農を憂う(2)あってはならぬ 米騒動 JA松本ハイランド組合長 田中均氏2024年12月20日
-
【2025年本紙新年号】石破総理インタビュー 元日に掲載 「どうする? この国の進路」2024年12月20日
-
24年産米 11月相対取引価格 60kg2万3961円 前年同月比+57%2024年12月20日
-
鳥インフルエンザ 鹿児島県で今シーズン国内15例目2024年12月20日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】「稼ぐ力」の本当の意味 「もうける」は後の方2024年12月20日
-
(415)年齢差の認識【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年12月20日
-
11月の消費者物価指数 生鮮食品の高騰続く2024年12月20日
-
鳥インフル 英サフォーク州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年12月20日
-
カレーパン販売個数でギネス世界記録に挑戦 協同組合ネット北海道2024年12月20日
-
【農協時論】農協の責務―組合員の声拾う事業運営をぜひ 元JA富里市常務理事 仲野隆三氏2024年12月20日
-
農林中金がバローホールディングスとポジティブ・インパクト・ファイナンスの契約締結2024年12月20日
-
「全農みんなの子ども料理教室」目黒区で開催 JA全農2024年12月20日
-
国際協同組合年目前 生協コラボInstagramキャンペーン開始 パルシステム神奈川2024年12月20日
-
「防災・災害に関する全国都道府県別意識調査2024」こくみん共済 coop〈全労済〉2024年12月20日
-
もったいないから生まれた「本鶏だし」発売から7か月で販売数2万8000パック突破 エスビー食品2024年12月20日
-
800m離れた場所の温度がわかる 中継機能搭載「ワイヤレス温度計」発売 シンワ測定2024年12月20日
-
「キユーピーパスタソース総選挙」1位は「あえるパスタソース たらこ」2024年12月20日