産地銘柄別の格差表を示した米先物情報交換会【熊野孝文・米マーケット情報】2024年11月12日
一般財団法人農政調査委員会は11月7日、千代田区麹町の日本農業研究所で第15回コメ産業懇話会を開催し、東京農業大学の堀部篤教授が「農業・農村の持続的な発展と多様な担い手」と題して講演したのに続き、第4回「米先物取引に関する情報交換会」を開催し、先物取引に関するアンケート調査として事務局が当業者(生産者や流通業者等)から回答を得たものを、北辰物産㈱が投資家の意識調査の結果を公表した。また、堂島のコメ平均価格と産地銘柄価格の換算がわからないという意見が多かったことから、事務局より堂島コメ平均価格を基準価格とした産地銘柄別の格差表が配布された。
「米先物取引に関する情報交換会」では、生産者など当業者からコメ先物取引に参加する方法がわからないという問い合わせが多いことから堂島取引所の取引会員で口座開設が出来る4社のうち岡安商事㈱、㈱SBI証券、北辰物産株がそれぞれ口座開設の手順や取引開始に当たっての証拠金や売買手数料等について詳しく説明した。口座開設は個人や法人によって書類や手続きが異なるほか、手数料もネット売買と対面売買によって異なる。出席者から参加できる要件について具体的な質問があり、資産要件のほか年齢制限などもあることが説明された。さらにはJAから現物の受け渡しを伴わない取引には農林中金から待ったがかかるという指摘もあったが、これについては指数であっても価格変動のリスクをカバーできるためヘッジ会計として認められるという見解もあった。現物の受け渡しを伴わない先物取引は試験上場中の産地指定銘柄での取引とは大きく異なるため、生産者やJA,流通業者も堂島コメ平均という指数と実際に売り買いされる産地銘柄の関連がわからないという意見がアンケート調査の回答でも多く寄せられた。
これに対して事務局より参考資料として堂島コメ平均を基準価格にした産地銘柄別の格差表(別表)が出席者に配布された。これは農水省が毎月公表している相対取引価格のデータを用いて算出されたもので、わかりやすいように単位を100円単位にして基準価格グループをEグループとして価格の高い順からA~Gまでの7グループに分けた。活用法としては、堂島取引所ではすでに来年10月限の取引が始まっており、令和7年産米の取引を先渡し条件で農協と卸が新潟コシヒカリを事前契約する場合、堂島取引所の基準価格から1600円高い価格で契約して、買い手の卸は価格下落に備えて堂島コメ平均に売りヘッジしてリスクをカバーするという取引も可能になる。コメの格差には等級間格差、新古格差等もあり、銘柄間格差だけでは十分でないため堂島取が指定する指定現物市場と堂島取が共同で「格付け委員会」を設置して公平な格付けを行う必要がある。
投資家の堂島コメ平均に関する意識調査では、北辰物産が顧客45名から回答を得たものを集計して公表した。それによるとQ堂島コメ平均が上場されていることを知っているかの問いに71%は知っていると答えたものの29%が知らないと答えている。Q堂島コメ平均の値段について相場表もしくはチャートで見たことがあるかの問いに対して、78%が見たことがないと答え、見たことがあると答えたのは22%に留まった。Q堂島コメ平均に興味があるかの問いに対して、興味があるが40%、興味がない31%、どちらとも言えない29%の割合。Q今後、堂島コメ平均を取引してみたいかの問いに、取引したいは22%、取引したくない20%、どちらとも言えない58%の割合。Q堂島コメ平均についてセミナー、勉強会等があれば参加したいかの問いに、参加したい25%、参加したくない44%、どちらとも言えない31%の割合。Q堂島コメ平均について、現物の受け渡しが伴わない現金決済取引であることを知っているかの問いに、知っているは33%、知らないが67%。Q堂島コメ平均の最終決済価格について、農水省が公表する「相対取引価格」等を基に算出されていることを知っているかの問いに、知っているは20%、知らないが80%。Q平均米価の計算に用いる「相対取引価格」は農水省のホームページに毎月公表しているが、見たことがあるかの問いに、見たことがあるは9%、みたことがない91%。
以上のような結果で、投資家に対してもコメ先物取引そのものが知られていない実態と商品の魅力が伝わっていないことが浮き彫りにないっている。
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