(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
少し前に中国の「豚ホテル」について紹介しました。当時はその規模が話題の中心でしたが、ベクトルはこの方向だけではありません。
「豚ホテル」について初めてのニュースが流れたのは2018年のロイター電あたりであろうか。その後、急速に日本でも認知され始めた。このコラムで取り上げたのは2022年10月7日である。かなり遅くなったが、このコラムは速報性を重視するために書いている訳ではないので、横目で見ながら機会を見て各所で紹介してきた。
当時話題であった豚ホテルは、湖北省鄂州市郊外にある「湖北中新開維現代牧業」の26階建養豚場である。日本では20階建て以上の高層マンションをタワー・マンションと言うが、この養豚場は26階建てのためタワー・豚マンションである。年間出荷頭数が約60万頭にも上ると報道されていた。
少し気になり最近の写真を探したところ、すぐ隣に同規模の建物がツイン・タワーのように建設されていた。「規模の経済」を徹底的に追及した形が米国ではなく中国の最新タワー・豚マンとは何とも言えないが、これも現実である。
ところで、中国人のこうした「発想」と「行動力」は、是非は別として日本人とはまさに次元が異なる。例えば、同じ「豚ホテル」でもベクトルが全く異なる方向性を突き詰めた例がある。
こちらは約1年前に報道されているためそれなりに知られていると思う。浙江省近金華市にある「養豚場ホテル」である。名前を聞いて思い出す方がいるであろうが、日本でも「金華豚」は有名である。中国では四大名豚のひとつであり、金華豚から作るハムは世界三大ハムの1つで約900年の歴史を持つと言われる超高級食品である。頭と尻が黒いため、「パンダ豚(熊猫猪)」とも言われている。これ自体は有名な話なので少し畜産に関心があれば周知の知識であろう。
さて、旧北京放送は現在では中国国際放送局となっているが、その中に日本語部がある。2023年6月27日付けのニュースの見出しは「1泊17万円の養豚場ホテル 見どころはパンダ豚」中国浙江省1、である。
やや衝撃的な内容、そして表現は「豚ビュー」の客室説明である。以下に引用する。
「この客室は、ガラス越しに大小さまざまな豚たちが『食べ、飲み、排泄し、眠る』様子を見ることができます。1泊8888元と高額ですが、部屋を引き払う際に、豚1頭、または豚肉1年分を送られ、自宅まで届けてもらえます。豚1頭から取れる食肉部は50キロ余りで、現在の市場価格で計算すると6000元(約11万9000円)余りに相当し、実質約2000元(約4万円)で宿泊できます。」
この「養豚場ホテル」は、金華豚を育てる全過程をガラス越しに見学できる作りのようで、「スマート養殖観光、科学教育普及、親子旅行、レジャー娯楽の総合的観光スポットとなり人気を呼んでいます」との触れ込みである。公開写真を見ると豪華客室の壁面がガラスでその向こうが養豚場であり、豚たちの生活が丸見え状態となっている。
確かに、近年世界的にも家畜伝染病などの疾病が拡大し養豚場などの畜産経営現場では外部からの感染防止手段が徹底され、一般人はなかなか見ることができない。そのため、そこに稀少性を見出したのかもしれない。
それにしても、一方で26階建て高層養豚場を作り、他方で1泊17万円の養豚場ホテルを作る。そして、豚肉1年分を提供し、実質的に1年間の豚肉代金と宿泊費用をセットにして提供する。この考えは流石である。日本でも、〇〇1年分の提供のようなサービスを実施している生産者や組織はあるが、正直なところ、ここまで豚たちのプライバシー(?)を高級感とともにさらけ出したサービスを実施して顧客を獲得しようという例は聞いたことがない。
* *
どこかの局のグルメ・ドキュメンタリーで宿泊レポでもして頂きたいものです。
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