マークアップ上限kg292円に張り付いたSBS入札【熊野孝文・米マーケット情報】2024年11月26日
前回、このコラムで中米が1俵2万4000円で成約するという異常事態について触れたが、今回はそれを上回ることが起きたのでそのことについて記したい。その出来事とは先週末22日に行われた今年度第3回目のSBS入札で、なんとマークアップ(売渡価格から買入価格を差し引いた輸入差益)が最大のkg292円に張り付いてしまったのだ。1996年のミニマムアクセス受入れ以来、上限張り付きは初めてのことである。裏返してみるとkg292円という高額の関税を支払っても海外からコメを輸入して国内で販売してもビジネスが成り立つことを意味している。

前回、このコラムで中米が1俵2万4000円で成約するという異常事態について触れたが、今回はそれを上回ることが起きたのでそのことについて記したい。その出来事とは先週末22日に行われた今年度第3回目のSBS入札で、なんとマークアップ(売渡価格から買入価格を差し引いた輸入差益)が最大のkg292円に張り付いてしまったのだ。1996年のミニマムアクセス受入れ以来、上限張り付きは初めてのことである。裏返してみるとkg292円という高額の関税を支払っても海外からコメを輸入して国内で販売してもビジネスが成り立つことを意味している。
11月22日に実施された今年度第3回目のSBS入札は、一般枠2万2500t、砕精米枠2500t、合計2万5000tの枠に対して256件、7万7094tの応札があり、全量が落札された。このうち一般枠の国別落札数量と落札価格は別表の通りだが、売渡価格が税別でkg500円超えているものもある。これらの中にはバスマティライスや有機米というものも含まれているが、量販店や外食企業向けなどでもろに国産米と競合するアメリカ産中粒種やオーストラリア産短・中粒種のkg当たりの売渡価格は436円から438円である。マークアップの最高額kg292円を支払ってもこの額で国内で販売できるようになった。なにせ国産米の販売価格は業務用でもkg600円、量販店向けはkg650円以上するのだから外国産米をこの価格で仕入れても十分に採算が合う。すでに台湾産米ジャポニカ種が大手量販店で5kg2590円で販売されており、外国産米の価格競争力は十分だ。
今年度SBSのマークアップは、第一回目がkg156円、第二回目が216円と国内での需給ひっ迫を受けて輸入意欲が旺盛になり、右肩上がりになっていた。第二回目ではあまりにも落札価格が値上がりしすぎたため外国産米扱い業者の中には落札を見合わせた卸もいたが、その後、一向に国内の価格が値下がりする気配がなく、最高額のマークアップを支払っても商売が成り立つという環境が生まれた。そのマークアップで得た利益は言うまでもなく国庫に入る。これも政府備蓄米の入札売却と同じく「食糧法より財政法が優先する」という考えのもとに行われていると思えばわかりやすい。
大きな財政負担を伴う飼料用米生産や棚上げ備蓄され最終的には飼料用に売却される政府備蓄米制度を財務省がやり玉にあげるのも無理はない。その財務省が作成した資料の中に非常に気がかりなことが書かれている。
令和5年度の決算として政府備蓄米の要した財政負担としてt21万4000円で19万2000tを買い入れた経費が410億円、それに加え保管経費が142億円かかっており、飼料用や援助用に売却して得た収入を差し引いても478億円の負担が生じているなどの例を出し、「○米の政府備蓄については、適正備蓄水準を100万トン程度とし、毎年20万トン程度を主食用米として買い入れ、同程度を主食用 米の需給に影響を与えないよう飼料用等として売却(棚上備蓄)。こうした運用による保管経費や売買差損により毎年度400~ 600億円程度の多額の財政負担が発生。 ○現在の適正備蓄水準は、大不作の場合などに備え、平成13年に当時の年間需要量900万トンを前提に設定されたもの。まずは、 現在の需要量(700万トン程度)を前提に設定し直す必要があるのではないか」としている。
さらに農水省作成資料から財務省が作成したとして以下のように記している。
備蓄米放出の基本的なプロセス
① 米に関する情報収集(定期的調査)により、消費者への米穀の安定供給に支障が生じる可能性が想定される場合、緊急調査を実施
② 緊急調査の結果、国内産米の生産量が需要量を下回り、備蓄米の放出がなければ翌年6月末の民間在庫量が例年の水準を相当程度下回る可能性があれば、食糧部会を開催
③ 食糧部会において、備蓄米放出の必要性に関し、米の作柄、流通量(早期作、普通作毎)、在庫量、市場の状況、消費動向、価格及び物価動向等について総合的な観点で議論
④ 食糧部会の議論を踏まえ、農林水産大臣が備蓄米放出等を決定
農水省が発表した10月25日現在の主食用米の生産量は9月25日現在に比べ4万トン減って679万トンになった。需要量が農水省の見通しどおりに収まっても来年6月末の在庫は160万トン程度になってしまい、ひっ迫感は今年の端境のような状況になるだろう。そうした状況を見越してSBS米も異常とも言える高値に張り付いた。農水省は政府備蓄米を緊急放出する際に「食糧法より財政法が優先される」というのだろうか?
食糧部会は来年1月ではなくて年内に開催して、この緊急事態に対処する方策を早急に打ち出す必要がある。
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