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おもしろうてやがて悲しき「楽しい日本」【小松泰信・地方の眼力】2025年1月8日

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「『強い日本』は主に国家が主導したものでした。『豊かな日本』は主に企業が主導したものであったと思っています。そして、これからは一人一人の人たちがそれを実現する、『楽しい日本』を目指すべきだ」(石破内閣総理大臣年頭記者会見、1月6日)

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「令和の日本列島改造」で「楽しい日本」

 「楽しい日本」という表現は、故堺屋太一氏(元経済企画庁長官、小説家、評論家)によるもので、首相も大いに共感。その中身は、「強さ、豊かさといった先人の皆さん方がつくり上げた偉大な功績の上に、世界平和の下、全ての人々が安心と安全を感じ、信じ、多様な価値観 を持つ一人一人の国民が、今日より明日は良くなる、そのように実感をし、自分の夢に挑戦し、自己実現を図っていける、互いが大切にし合う、そういう活力ある国家」である。
 「令和の日本列島改造」をそのような国づくりの柱に位置付け、「地方創生2.0」を強力に推進していくことを宣明した。それは、これまでの国づくりが創り出した「一極集中」を見直し、「多様性を未来の力」とすることを意味している。
 毎日新聞(1月8日付)によれば、石破氏は地方創生を語る際に、国土交通省が中間層にあたる中央世帯(年間収入の上位40~60%)を対象に「手元に残る金額が多い」順に並べた「都道府県別の経済的豊かさ(19年)」ランキングを重用しているそうだ。それによれば、「可処分所得から基礎支出(食料費、家賃等、光熱水道費の合計支出額)を差し引いて算出した結果、1位は茨城、2位は島根、3位は鳥取だった。家賃や教育費などが高い東京は25位」という結果から、「若い人や女性がなぜ地方を選ばないか、ということを突き詰めて考えなければなりません」と、24年12月での講演で訴えたそうだ。

地方が望む事業を支援せよ

 「『地方創生』を目玉にした首相の年頭会見は具体性に乏しく、新味も魅力もなかった。地方創生を『令和の列島改造』と命名して『石破カラー』を出したつもりなのかもしれないが、過去の政策を焼き直しただけである」と手厳しい指摘で始まるのは、石川県金沢市に本社を置く北國新聞(1月8日付)の社説。
 安倍政権が打ち出し、石破氏が地方創生相を務めた時の、いわゆる「地方創生1.0」では、政府機関の地方移転を打ち出した。42道府県が69政府機関の誘致を提案したが、8年かけて実現したのは文化庁本庁の京都移転と国立工芸館の金沢移転だけ。
 「安倍1強」の時ですら中央省庁の抵抗が強かったことから、「少数与党の石破政権が旗を振っても看板倒れに終わるだろう」と、取り付く島もない。
 その一方で、「地方には国に後押ししてほしい事業がある」とする。「北陸でいえば、北陸新幹線の大阪延伸」と例示し、「地方創生の目玉にふさわしい事業を強力に後押ししてくれる方がよほどありがたい」と訴える。
 「国の若手職員による二拠点活動の支援」についても、「経費を増やして仕事の効率を下げるだけであり、持続可能な制度とは思えない」と突き放す。
 さらに、「地方での創業や、首都圏に立地する企業の本社機能の移転にも取り組む」との意気込みに対しても、「首都圏から地方へ移転する企業は、地方から首都圏に移転する企業の数を差し引くと、年間で数十社にすぎない」ことを指摘し、現在ある地方拠点強化税制を思い切って手厚く、充実させることを提言している。

地域は自前のアイデアとプランを練り上げろ

 誤解を恐れずいえば、同紙の厳しい論調は、「地方創生2.0」にでもすがりつきたい同県の厳しい状況を表している。
 1月4日付の同紙社説は、「能登半島地震の被災地復興にも資する踏み込んだ施策を打ち出すこと」を政府に求めている。
 「地震と豪雨に見舞われた奥能登が象徴するとおり、過疎、高齢化が進んだ地域が大災害にあえば、10年、20年先に直面するような課題が一気に目の前に現れる。(中略)災害に脆弱な地方の現実を、あらためて浮き彫りにしたのが能登半島地震である」として、「災害多発国の日本において、災害の備えなしには地方は持続しえない」ことから、「事前防災」が地方創生の基盤とする。そして、その要に防災庁を位置付ける。
 また、「国のさまざまな施策を地方の視点から思い切って見直すこと」から、地方創生を再起動させることを提言する。
 例えば、厚生労働省が医師偏在の対策パッケージにおいて、不足地域で勤務する医師への手当増額や、都市部など過剰エリアにおける実質的な開業規制を盛り込んだことを取り上げ、「医師の勤務地を自由な選択に任せていては過疎医療は細るばかりである。規制については憲法が保障する職業選択の自由に抵触するとの指摘も出ているが、医療は公共インフラであり、過疎地への誘導を含め、一定の制限をかける時期にきているのではないか」と鋭く迫っている。
 さらに、「能登半島地震の被災地で進む復興計画の策定作業では、ふるさとをどうすべきかという強い危機感のもと、世代を超え、当事者意識が地域全体に広がったように見える。震災前はやり過ごすことのできた地域の課題からも、もう目を背けることはできない」として、「いま必要なのは、地域が練り上げた自前のアイデア、まちづくりプランを実現に導く力強い後押しである。新たな地方創生の胎動が被災地から広がっていくような柔軟な支援策を政府に望みたい」と結んでいる。異議はない。

能天気で「楽しい日本」

 もちろん石破氏も会見で能登半島地震と奥能登豪雨にふれている。元日の追悼式に参加し、被災地の創造的復興のために力を尽くすことを誓ってきたことや、平時の備えによる被害の最小化を図ること、被災者に尊厳ある避難生活を提供するべく、スフィア基準(人道憲章と人道対応に関する最低基準)を踏まえた環境整備を迅速に提供することなどに言及し、「これは国家の責務であります」と言明している。
 2026年度中に、専任の大臣と十分な人数のエキスパートを備えた「防災庁」を設置するために、準備を加速させるそうだ。 
 冬真っ只中の能登半島。災害関連死は政府と自治体の不作為による人災。そう考えるならば、たった今できる「国家の責務」を可及的速やかに果たすべし。
 それもまともにできないくせに、「人命、人権最優先の防災立国を構築し、我が国を、世界有数の災害大国である我が国を、世界一の防災大国」とし、「我が国の災害対策の知や技術を海外に向けて発信し、世界の防災にも貢献するとともに、これを新たな産業の柱にしてまいります」と来れば、腰から力が抜け腑抜け状態。
 この流れ、マジおもしろうて笑っちゃう。やがて、これがこの国の悲しき現実と気づく。今年も能天気で「楽しい日本」万歳。

 「地方の眼力」なめんなよ

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