(417)100年の流れ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年1月10日
令和7(2025)年、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
今年の筆者はややスロー・スタートです。
令和も7年目を迎えた。昨年末、久しぶりに帰省した子供たちと少し過去の時代認識についての雑談をした。単純に100年前、200年前に何が起こったかという他愛無い話である。途中、たまたまシェイクスピアの話題が出た。彼の没年は1616年、ほぼ400年前である。
その頃の日本で何があったかという話になり、「そういえば徳川家康はこの年に亡くなった?」、「えっ、そうだっけ?あ、本当だ!」、「ということは前年が大阪夏の陣」、「日本が鎖国(外国貿易を平戸・長崎に制限)したのもこの年?」などと話が展開した。シェイクスピアと徳川家康が同時代人という認識は意外と希薄かもしれない。言われてみれば、という感度が正直なところだ。
さて、通常、戦国時代と言えば、1467年の応仁の乱を起点とするが、仮に1543年のポルトガル人による鉄砲伝来以前までを前半としよう。その場合、鉄砲以後の新知識・技術を活用したいわば次元が異なる後半の戦国時代のピークは見方にもよるが、筆者は1582(天正10年)と考えている。
この年2月、キリシタン大名の大友宗麟、有馬晴信らのお膳立てで天正遣欧使節が派遣されている。当時としては大イベントであろう。だが、わずか4か月後に本能寺の変が起こり、天下が大きく動く。そして5年後の1587年には秀吉がキリスト教の宣教師を追放している。この間、細かい動きはあるが、潮の流れが変化したのは恐らくはこの時期であろう。お墨付きを与えられて送り出され、ローマ教皇にまで謁見して1590年に帰国して見れば、世の中も世間の風当たりも全く異なったという訳だ。
ただし、そこからがまた長い。「慣性の法則」ではないが、社会現象も同じでひとつの流れは急速には変わらない。加えて当時の日本は国内情勢が安定するまでに時間がかかったという点もある。織豊政権から1600年の関ケ原の戦いを経て1603年の徳川幕府、さらに1615年が大阪夏の陣である。本能寺の変から実に33年が経過している。
ようやく落ち着いた幕府は1616年、外国船の来航を平戸・長崎に限定した。その後、1633年には奉書船を除く外国船の渡航と在外日本人の帰国を禁止、そして1635年には全ての日本船の渡航を禁止、帰国者は死刑とし、翌1636年、長崎に出島が作られている。
これだけの長期間であれば、外国人だけでなく海外へ出た日本人の数も相当数にのぼる。そのため、こうした国策の方針転換は特に貿易に携わる人々や、海外に出た日本人に多大な困難を引き起こしたであろうことは想像に難くない。
実際、ドアを閉じた翌1637-38年には島原の乱が発生している。さらに1639年にはポルトガル人の来航が禁止、1641年にはオランダ人が出島に移され、いわゆる鎖国が完成する。
いずれにしても、「受け入れる」「開く」から「追放する」「閉じる」という形で反対方向に舵を切るのに必要な時間は1616年からでも20年近くかかった訳だ。これは貴重な歴史の教訓のひとつであろう。
もうひとつ留意したいのはポルトガル人による鉄砲の伝来からほぼ100年という時間の長さとその間の変化の興味深さである。
画期的な新技術(鉄砲)の伝来から最初の50年余りは、現代流に言えば新技術と国際交流の時代である。その間、さまざまな価値観や行動パターン、社会の仕組みなどが大きく変化した。その後、織豊政権から徳川幕府へという統治と制度の安定までにほぼ30年、さらに安定後の鎖国体制完成までが20年と考えると、鉄砲伝来からの100年はわかりやすい。
ただし、これはあくまでも歴史のひとつの見方であり、起点をどこに取るかにより大きく解釈が変わることは言うまでもない。
* *
さて、現代社会における当時の「鉄砲」に象徴されるモノは何でしょうか。そう考えると、2025年も楽しみな1年になりそうです。
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