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トラクターデモにエールを送る【小松泰信・地方の眼力】2025年2月5日

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農産物の消費拡大や農業者の所得増大を訴え、トラクターで町内を行進した島根県吉賀町の農家の行動を応援する声が上がっている。(日本農業新聞、1月31日付・中四国)

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農業、すなわち食料を守れない国に未来はない

 「トラクターで町内を行進」と、何か遠慮気味に書かれているが、近年EUで行われているトラクターデモそのもの。人口6000人弱の吉賀町は島根県の南西部最南端に位置する典型的な中山間地。町によると、町内の耕作放棄地は2023年度228ヘクタールで農地面積の約2割を占め、20年度の119ヘクタールから2倍近く増えた。農家数は農林水産省統計で15年度の835戸から20年度は702戸に落ち込んでいる。
 山陰中央新報(2024年12月19日付)によれば、農業者ら約40人が、「自給率の大幅アップにつながる国消国産、米をはじめとした農畜産物の安定した価格維持を訴えていく」と呼びかけ、町内を約3キロにわたり22台のトラクターでデモ行進し、国や県に対して農畜産物価格への資材費転嫁や耕作放棄地の解消に取り組むよう訴えた。
 町役場本庁舎前では、デモ行進を主催した町農政会議の斎藤一栄会長が「農業、すなわち食料を守れない国に未来はない」と声明文を読み上げた。受け取った岩本一巳町長は「農業は町の基幹産業であり、町村会などを通して皆さんの思いを国政に届けたい」と述べた。なお、農政会議とは農協の政治団体で、島根県には11の農政会議がある。

行動する農政会議

 『日本の進路』(2025年2月号、自主・平和・民主のための広範な国民連合)は、「農業すなわち食料を守れない国に未来はない」というタイトルで斎藤会長のインタビューを載せている。
 デモの概要は、つぎの通り。
①中山間地を守ろうと、「行動する農政会議」を目標に掲げ、今回の行動は1年以上前からいろいろと話し合ってきた。
②全国から4000人が武道館に集まって、国会議員にも来てもらって「エイ、エイ、オー」と気勢を上げただけでは効果が少ない。町や村でみんなが立ち上がる必要がある。外に出て、消費者・国民に訴える、行動する必要があるのではないかと考えた。
③「趣意書」を持ってトラクターがある家を一軒ずつ回った。トラクターデモをやりたいと話したら即座に、「分かった協力する」とうれしい反応。
④保育園の前では、園児たちが野菜の絵などを描いた手作りの旗を持っての大歓迎。授業中の小中学校の生徒たちも、窓から「がんばれ」との応援。寒い中にもかかわらず、住民たちの声援も受け、励まされた。

国会をむしろ旗で包囲せよ

 斎藤氏は、「中山間地域で農畜産業を営む農業者として、国民の食を支えているという自負心があります。肥料や飼料、燃料などの高騰の一方で農畜産物価格の低迷が続き、1年間やってもわずかな収入、赤字続きでは農業は継続できません」と危機感を募らせ、「農業者に寄り添う農政」を切望する。
 さらに、「農業者は米を作っても米価が安すぎてとても農業が継続できない、後継者も出てこない。一方、昨年夏以降コメの不足、価格が上がって消費者が困った。貧困も広がっていますから」と状況を冷静に分析した上で、「農業は国民の命を守っている第1次産業だという自覚を、消費者も含めて持つことが必要だと思います。放っておくと消費者と生産者が対立します。対立させないようにするのが国の役割です」と、正鵠を射る。
 そのためには、「農業者が農業を継続できる米価、消費者が安心して買える米価、この差を財政的に支える政策が国の役割です。そのために国のお金をつぎ込むのは当然だと思います。昔の食管制度――生産者米価と消費者米価、その差額を国は負担する――の考え方は必要だと思います。仕組みをどうするかは別にして、コメなどの基礎的な食料については、そういう政策にすべきです」と、貴重な政策提言。まったく同感。
 最後に、「今年は島根県内で、それぞれの農政会議が、できれば同じ日、統一行動日を決めて、トラクターパレードをやりたいと思っています。そして全国にのろしを上げたい。そしてできるだけ早く、『国会をむしろ旗で包囲』『銀座4丁目でパレード』して政府と消費者の方々に訴えたいと思っています」と、意気込みを語っている。

チラシ配布やシンポで癒えない傷を負う

 JAcom農業協同組合新聞(1月17日付)によれば、改定「食料・農業・農村基本計画」がまとまる3月末を期して、山形県の農家・菅野芳秀氏らが「令和の百姓一揆」を呼びかけている。
 菅野氏は、都心でのトラクターデモをキックオフとし、シンポジウムを行い、その後全国をまわって農民、地域住民の意見を聞きながら、知恵と経験を集め「生の声」を国政に届ける予定。この一連の過程を「一揆」と呼んでいる。
 「実力行使を伴うものではなく穏やかな取り組みだが、ただチラシ配布だけ、シンポだけで癒えるほど傷は浅くない」との言葉から、憤怒の炎がうかがえる。
 「農民を殺すな、米作りを守っていこうと訴え、農民、消費者、国や自治体も連携していく最後の機会だ、という気持ちを『一揆』に込め」、土と共に生きるための連携を呼びかけるとのこと。重く受け止め、連帯の意を示したい。

デモとパレードは大違い

 島根県吉賀町農政会議の「トラクターデモ」も「令和の百姓一揆」も、本来ならばJA全中が旗を振るべきもの。しかし、強いられた農協改革で、JAグループがそのような力も魂も失った今となっては、農の現状を誰よりも憂い、農の価値を誰よりも大切にしている現場の農業者による決起に期待するしかない。
 ところで、ひとつ気になっていることがある。それはここで紹介した記事において、「デモ」を「パレード」と呼んでいるところが散見されることである。「パレード」とは 「祭礼や祝賀の際に、行列を組んで市街を練り歩くこと」である。そこには、憤りや怒りの感情は込められていない。もし、「デモ」という言葉を用いることで、誰かを、何かを刺激することを恐れているとすれば、それ自体が「デモ」の対象である。もう遠慮はいらない、我慢もいらない。だから、大手を振ってデモろうぜ!

 「地方の眼力」なめんなよ

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