【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】米価高騰の議論で見落とされていること2025年2月6日
なぜ、いまだに価格高騰?
米価高騰の原因は流通業界の買い占めと言われているが、見落とされている点がある。
暑さのために低品質米(白く濁ったコメ、ひび割れのコメ)が増えていて生産量の割に流通できるコメが減っている可能性がある。その見通しの甘さを認めず、流通に責任転嫁しようとしている。
「流通に問題があるから足りなくてなっているので、コメは十分あるとの政府の見通しが間違っていたわけではない」と言いたい。
しかし、市場関係者が「品薄感」を感じているから、買いだめが起こるわけで、足りていると政府が言い張るのは無理がある。水田つぶしと農家の疲弊に暑さの影響も加わって生産が減りすぎている。
価格が上がったといっても農家からすると30年前の価格に戻っただけで、やっと一息付けるか、という程度で、すでに疲弊している現場の生産が一気に増えるのは難しいと流通業界も見込んでいるのだろう。
農協が吊り上げている?
農協がコメ価格吊り上げていると言うのは実態と違う。農協は今、コメが集まらず困っている。共販で、概算金18000円で、あとで5000円追加払いの見込みでも、農家は、すぐに22000円とかで買いに来る業者さんに売ってしまいがちになる。
農業予算カットの圧力
根底には、農家が赤字でやめていくのを放置して、田んぼを潰せば、一時金、手切れ金だけ払うからもうやめなさい、と誘導して、農村現場を苦しめてきたツケだ。予算を削りたい財政当局の強い意志が働いている。
備蓄米「活用」の効果は?
発動基準が「円滑な流通に支障が生じる場合」では、曖昧で、影響も見込みづらい。いつ、どれだけ、発動されるかわからず、様子見で、これ以上は上がらない抑止効果はある程度は見込まれる。
備蓄米の放出ルールによって効果が変わる。放出基準価格を2万円にし、買戻基準価格を15000円としたら、その範囲内に米価が収まるように調整が働く。明確な数値の発動基準にして、関係者がそれを目安に動けるようにすべきである。
今のようにコメ生産を減らし現場農家の疲弊を放置する事態が続けば、趨勢的にコメ不足状態は続くと見込まれる。
今後の日本の稲作・コメ業界はどうなるのか?
生産調整から需要創出へ切り替えなくてはいけない。
需要が減るから生産も減らし続けていく誘導したら負のスパイラルで、日本の稲作・コメ業界は縮小していくだけ。日本農業の根幹と日本の主食が失われ、一時的に輸入に頼っても、それが滞れば、日本人は飢える。
日本の水田をフル活用すれば、今の700万トンから1300万トンにコメ生産を増やせる。コメ需要は減るとの見通しは間違い。備蓄1.5か月分では少なすぎる。備蓄は安全保障上の需要だ。小麦やとうもろこしの輸入が減るリスクも高まっている中、コメのパンや麺、飼料米を増やすのは安全保障上のコメ需要で、貧困層増大の下でのフードバンクや子供食堂を通じたコメ支援も必要だ。備蓄とそれらを合わせたらコメ需要は膨大にある。
どんどん増産できるように、農家に支援金を出せば、コメ価格は上がりすぎずに消費者も助かる。そして、需要を創出するのに財政出動する。そうすれば縮小でなく好循環で市場が拡大できる。
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