フラワーバレンタイン〜男性から女性に花を贈る2月14日~【花づくりの現場から 宇田明】第53回2025年2月13日
2月14日はバレンタインデー。日本では女性が男性にチョコレートを贈る日。
デパートやスーパーの広大なチョコレート売り場は多くの買い物客でにぎわい、毎年マスコミの話題になっています。
しかし、日本のバレンタインデーは、日本独自に発展した文化です。
世界では、「性別を問わず、お互いに愛や感謝を伝えあう日」とされ、男性が女性に花を贈ることが一般的です。実際、2月14日は世界でもっとも花が贈られる日です。
日本で「バレンタインデー=チョコレート」が定着した背景には、チョコレートメーカーの巧みなマーケティング戦略がありました。
それに対し、本来の「男性が女性に花を贈る日」にしようという花業界の取り組みがフラワーバレンタインです。
チョコレート業界が「バレンタインデー=チョコレート」という文化を作りあげたように、花業界も「バレンタインデー=花」とすることで、花の消費拡大を目指しています。
花業界の悲願は、若い世代に花を買っていただくことです。
総務省家計調査(2023年)によると、29歳以下の切り花購入額は2,830円で、70歳以上の1/4に過ぎません。
これは二人以上世帯の世帯主の年齢であり、独身の若者世代の切り花購入額は公式データがなく、肌感覚ではほとんどゼロに近いと考えられます。
現在、花の消費は高齢女性に支えられており、今後、法事や墓参りなどの伝統行事の衰退とともに減少することが予想されています。
そこで、若者が花を買ったり、贈ったりする文化を根付かせるために、2011年にフラワーバレンタインの活動がはじまりました。
当初は花業界の有志が中心となって活動をしていましたが、2014年からは全国の花業界組織が参加する(一社)花の国日本協議会へと発展しました。
まとまりがなかった花業界が一致団結し、「オール花業界」の取り組みが実現したことは画期的なことです。
現在では、農林水産省の「ジャパンフラワー強化プロジェクト推進事業」の一環として、全国の駅前や繁華街などで、フラワーバレンタインのキャンペーンが展開されています。
とはいえ、「バレンタインデー=チョコレート」という文化はすでに日本に深く根付いており、その牙城に花が食いこむことは容易ではありません。
都心のおしゃれな花屋では、2月14日の夕刻から花を買い求める若い男性客がレジに列をつくる光景が見られるようになりました。しかし、地方ではポスターやポップすら見かけない花屋が多く、認知度が依然として低いのが現状です。
地方の花屋の多くは、日々の来店客が少ないうえに、そのほとんどが高齢女性。
こうした環境では、フラワーバレンタインが普及しないのも無理はありません。
そのため、フラワーバレンタインは都会だけのイベントで、地方で活動しても無駄とのあきらめムードが漂い、一時、活動は停滞気味でした。
ところが、コロナ禍を経て地方でも変化が感じられるようになってきました。
SNSに都心の若い男性が花を購入する様子が投稿されることで、「花を買う」という行為へのハードルが下がったのです。
その影響は、バレンタインデーよりも1月の成人式に顕著に表れています。
成人式では帰郷した二十歳の若者が参加するため、写真撮影で衣装と花のセットが定着し、切り花が必需品となりました。
また、コロナ禍をきっかけに、家族の大切さが見なおされ、両親や祖父母から花を贈られるようになりました。
それが連鎖し、若者が感謝の気持ちをこめて、花を贈るスタイルが広がりつつあります。
その結果、成人の日の売上が母の日を超えた花屋も出てきています。
若者は、これまでの花の岩盤支持層である高齢者とは明らかに好みが異なります。
若者は、青色やレインボーカラーに染色した花や、くすみ色の花などSNS映えする花を好みます。
地方の花屋も成人式、バレンタインデー、ホワイトデー、卒業式には若者の好みにあった品ぞろえを意識する必要があります。
まだ、フラワーバレンタインでの花の消費はチョコレートに遠く及びません。
しかし、これまで動かなかった若者をすこしずつ動かしはじめたことは大きな成果です。
2月14日は、年代に関係なく男性が女性に花を贈る日。
この文化を定着させることで、花の新たな需要を創出し、より多くの人が花を楽しむきっかけになることが期待されています。
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