【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
有明海の漁業被害は深刻を極め、漁船漁業だけでなくノリ養殖にまで及んでいる。鹿島や太良町など佐賀西南部は数年にわたって色落ち被害が続き、離婚、廃業、自己破産・・・本当に深刻な状況になっている。これまで獲れていた佐賀東部や福岡県なども2年連続で不作となり、漁船漁業に至っては、最後の頼みの綱だったクラゲも獲れなくなり、全く漁に行けていない状態だという。
独禁法の「違法」適用による脅しで漁協のノリ共販潰しも強められ、このままでは近いうちに有明海での漁業(貝や魚を獲る漁船漁業や佐賀西南部のノリ養殖)が無くなってしまう瀬戸際にある。
国がこの事態を放置し、既存の漁業者を非効率と位置付けて追い出し、一部企業による「成長産業化」の名目で儲けさせようとしている意図があると思わざるを得ない。一連の諫早干拓をめぐる判決もそのことを物語っている。
2018年7月30日の諫早湾干拓をめぐる福岡高裁判決では、既存漁家の漁業権が失効しているとか、「最も高度に漁場を使用する者に免許する」という表現を連発して、既存漁業者を非効率な者として排除しようとする意図が明確に示された。
さすがに、それは2019年9月に最高裁で棄却され福岡高裁に差戻しになり、2022年3月の差戻し審判決では、漁業被害の事実誤認に基づく事情変更論、権利乱用論などが主な判決理由となり、これが確定した。
漁獲が回復している根拠と国が示したグラフで、国が主張する「増加傾向」の実像は大浦支所のシバエビの漁獲で、何も獲るものがないので、やむなく熊本県沖まで出向いて、単価が安くこれまで獲ってこなかったシバエビ漁やビゼンクラゲ漁でしのいでいるのだ。
多種多様な海の幸を私たちにもたらしてきた「宝の海」が、魚が捕れず、貝が育たず、ノリ養殖も極めて不安定な状況に置かれ、その中で漁業者は懸命の努力の中で漁業を維持しているが、昨今はそれも限界を超えていて廃業者が後を絶たない。
有明海漁業は、豊かな資源を守り、地域経済・コミュニティを支える要であり、有明ノリの危機は日本のノリ産業全体の崩壊の危機であり、それは、日本国民の食卓、食文化の危機、つまり、食料の安全保障の危機であり、国土を守る安全保障の危機である。
我々は豊かな有明海を取り戻すために一緒に闘っていかねばならない。
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