7年産米の事前契約価格に関心強まる【熊野孝文・米マーケット情報】2025年3月25日
早期米産地の宮崎県では、今月中旬から田植えが始まり4月初旬にかけてピークを迎える。価格高騰を受けて生産者の主食用米の作付け意欲が強まっているとのことで、県の推計によると早期米だけで5700haほどの作付けが見込まれ、普通期作を含め主食用米の作付面積は前年産より1400haほど増加すると見込まれている。農水省の意向調査でも7年産主食用米の作付面積は1月末現在全国合計で2万3000ha増えると見込まれている。実際に田植えが始まったところは早期米産地のごく一部だが、米穀業者の情報交換会では早くも7年産米の動向に関心が集まり、具体的な価格が取り沙汰されている。
3月19日に千代田区で開催された全米工の東日本情報交換会では、全国から参集した組合員から以下のような情報が寄せられた。
北海道=ユーザーの視点が変わってきており、外国産米について主食用でもMA枠外のコメを使用するところもあり、クリーニング(再精米)の委託も増えている。国産米のニーズが減り、外国産米の使用が増えると加工用米や特定米穀も影響が出るだろう。
宮城=宮城県のある地区の再生協議会では7年産主食用米の作付けが前年より10%増えると予想。農家に主食用米の作付けを抑制させることは難しくなっている。6年産米はカントリーでの入札で1.8ミリ下のくず米でも2万円を超えている。あまりの高値に驚いて見ているぐらいしかない。
山形=再生協議会では主食用米の生産量を2%増との目標を掲げているが、1.5%ぐらいの増加になると予想されている。その分、飼料用米や加工用米は減る。ただし、主食用米は種子不足で「はえぬき」の種はない。雪若丸の種は残っているが、それをたくさん作って売れるのか?
茨城=主食用米の種の注文が多かった。辞めようとしていた農家もコメの高騰で「もう一年やる」という気になった。備蓄米放出でどのような影響が出るのか?売り物が増えているように感じる。
茨城=「にじのきらめき」の作付けが急激に増えそうだが種子がないので、何でもよいから主食用米の品種を作付けしようとする動き。もち米の作付けは減りそうなので6年産米の在庫を積み増して来年を見越して備えている。
埼玉=主食用米は今までにないような動き。学校給食でもこのままでは国産米がなくなるので外国産米を出して欲しいというところもある。外食でも中堅から小さなところまでカルローズを欲しがっており、想像を超えるような量が7月、8月までに入って来るのではないか。7年産は休耕田でも田植えするところもあり、彩のかがやきの種子はない。
新潟=7年産加工用米の価格交渉を2万円から2万5000円のレンジで行っている。
滋賀=「にじのきらめき」の種子は手に入らないので「にこまる」が代替として作付けされる。
兵庫=清酒の2月の売り上げはメーカーによって差が出ている。経済酒メーカーの中には3月に原料米の注文を4倍に増やしたところもある。7年産加工用米は2万3000円から2万5000円で何とか契約してもらった。山田錦は作る人が減るのではと心配していたが、何とか数量を確保できそうだ。
3月21日には関東近県の米穀業者が集まって都内で情報交換会と席上取引会が開催されたが、ここでも7年産の動向について多くの情報が寄せられた。主だった情報としては「7年産米の事前契約では『2万7000円を保証する』と言う卸や、商社の中には『複数年契約で3万円』と言うところもある。
さらには新潟から『いくらで買うのか価格を出してくれ』と言うところもある」。「千葉、茨城は3万円を打診されている」。「種もみの配布は終わったが、飼料用米を作る生産者はゼロ。加工用米を作る生産者は1人でこれも複数年契約した分で、取引先のほぼ全員が主食用米に転換する。早場は3万円以上になるだろうが、銀行からは『リスクだ』と言われた」。「加工用もち米を作る人がいなくなった」。「五百川を3月27日に田植えする。夷隅ではいっぱい作付けされるだろう」-などと具体的な価格についても言及された。7年産米の動向と同じくらい話題になったのが備蓄米の動向で、参加者からは各自が持つルートを駆使して備蓄米を入手しようとしたものの1社も入手したという情報はなかった。備蓄米についてはほとんどが大手卸に流れ、中小卸には少量しか回って来ないと見られているほか、価格に関してもブレンドされるため量販店での白米価格引き下げ効果はないとされたほか、そもそも現状は6年産米が早食いされており、極めてタイトな状況で21万t程度では需給を緩める効果はないという見方もあった。こうした見方もあってか情報交換会の後の席上取引会では、6年産千葉コシヒカリ1等が置場4万5200円で買われた。
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