7年産米概算金は先物市場の価格が参考に【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月1日
全農新潟に続き、全農あきたが早めに7年産概算金価格を農協に通知した。主力のあきたこまちは2万4000円のいうもので6年産当初の概算金に比べ大幅に値上げされたことから農協・組合員生産者から歓迎されている。こうした概算金が早めに提示できる要因として先行指標としてコメ先物市場で形成される7年産米価格があるためである。先物市場の価格は、農水省が毎月公表している相対価格とパラレルに動いていることから全農が卸に販売している価格と同値水準になっている。この価格が先行指標として7年産米が出回る7年10月限、12月限、8年2月限で形成されているので、まだ田植えが始まっていないにも関わらず7年産米概算金を決める参考になっている。
農協系統の概算金とコメ先物市場で形成される7年産米の価格の関係に触れる前に目下の最大の焦点になっている政府備蓄米売却とスポット価格の関係について言及してみたい。
3月26日政府備蓄米の第2回目の入札売却が実施されたが、この日は偶然にもクリスタルライスの今年度最終になる第8回目のFAX取引会が開催された。
FAX取引会の概要は、上場数量は前回(1月16日)より8%多い68産地銘柄7万0989俵が売り提示された。上場加重平均価格は4万6531円(1俵当たり税別)で前回価格とほぼ同値になっている。
主要産地銘柄の売り唱え価格は表の通りだが、これで明らかなように前回と同値になった要因は、東北・北陸・関東は前回価格より値上げしたもののウエイトの高い北海道が値下げしたことによる。結果は公表されないが参加者によると銘柄によっては最低価格でも落札できたとしており、全体では半分ほどの落札に留まり、割高感から卸が応札に慎重になっている。また、大手卸は備蓄米売却で当面の玉不足が解消したことからクリスタルライスの取引会では応札しなかった模様。すでに量販店では備蓄米と見られるブレンド米が5キロ3600円程度で販売されたほか、中には産地を示したコシヒカリが同値圏で売られているものもあり、こうした店頭価格での事例を見ると一時的にせよ備蓄米売却による値下げ販売された精米はあった。ただし、備蓄米入札により米価全体の引き下げ効果があるのかという点については「21万t」では効果が限られるという見方が多い。これは何と言っても現在の在庫量がかつてなく低水準になっているためで、農水省が調査して公表している民間在庫は、今年1月末現在が前年同月よりも44万tも少ない230万tになっている。備蓄米が21万t売却されても端境期には適正在庫と言われる180万tには届かず、さらなる追加売却を実施しないと需給のひっ迫は緩和されないと見られている。その一方で予想よりも早く関税支払いの外国産米が量販店店頭に並び始め、外国産米流入が月を追うごとに大きな量になると予想されている。この関税支払いの外国産米の影響がどう出て来るのかは売れ行き次第という面があるが、外食企業や中食企業の中には本格的に外国産米を使用し始めたところもあり、その影響を過小評価することは出来ない。
農協概算金とコメ先物市場の価格の関係では、3月31日現在の先物価格は7年産米の受け渡し限月の引け値は、7年10月限は2万6240円、12月限2万6550円、8年2月限2万6660円になっている。概算金を2万4000円に設定しても経費を1俵最大2000円と見てこの価格で先物市場に売りつなげば十分に利益が確保できる価格帯になっている。堂島取引所が作成したコメ先物市場で形成される限月ごとの価格と農水省が毎月発表している相対価格の相関を示した価格推移グラフでは、見事にパラレルになっている。相対価格は全農系統が卸に販売した価格を調査したものであり、これが先物市場で形成される価格とパラレルになっているということは、まだ、田植えもしていない7年産米の価格も将来価格として使えるということで、全農県本部が7年産概算金策定の参考にしても不思議ではない。
コメ先物市場で形成される価格は全農系統が概算金支払いの参考価格にするだけでなく、集荷業者や卸が生産者と事前契約する際にも使える。単にヘッジして価格変動のリスクを回避するだけでなく、パックご飯のメーカーの中には原料米のコストを事前に確定させるため先物市場を活用し始めたところもある。堂島取引所ではこうした具体的な事例を集めて先物市場の活用法について当業者にわかりやすく説明、啓発することにしている。
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