(429)古米と新米【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月4日
昨年から現在まで、近年では珍しいほどコメが注目を集めています。
今朝のニュースは、大手スーパーが輸入米とのブレンド米を新銘柄として販売し始めたことを伝えていた。価格は4kgで2,780円のようだ。これまでは1kg、5kg、10kgという単位で流通していたが、中途半端な4kgとした理由は恐らくは2,780円という目を引きやすい販売価格である。少し計算をしてみれば5kgで3,475円に相当することはわかるが、気持ち的に「安い」と思う消費者心理を狙うのはスーパーならではの戦略である。
ところで、現代人は通常、古米より新米を有難がる。何よりも新米はふっくらとしていて美味しい。そう感じている人が大半ではないだろうか。ところが、昨年来のコメ騒動で人々は備蓄米、つまり古米を待ち望んできた。放出のタイミングの是非は別として、「新米と古米があれば新米を選ぶ」という価値観に長い間浸ってきたが、図らずも古米である備蓄米を待ち望むという感覚が蘇った訳だ。目の前に新しいモノが無ければ古いモノでも欲しいという当然の感覚であろう。
さて、こうした状況になると大学教員というのは変な見方をしてしまうようで、昔の人もやはり古米より新米の方を有難がったのだろうか、などと考えてしまう。
そのようなことを考えていたところ、興味深い本を思い出した。清水克行『大飢饉、室町社会を襲う!』(2008)である。この中に確か関係した記述があったはずと思い、探してみたところ、目当ての部分を見つけた。
結論を言えば、中世日本の人々は、米よりも古米を欲しがった...である。何故かといえば、当時がいわば慢性的な飢饉状態にあったからだ。清水氏の書籍では「応永の飢饉」を題材に興味深い分析がなされている。
「応永」年間は1394~1428年の34年、ほぼ1世代である。日本の元号の中では昭和(63年間)、明治(45年間)に次いで長い。明治以前の日本では何かあればすぐに元号を変えていた中で、これだけ長期間変わらないというのは極めて珍しい。それだけ平和か、その逆で、改元どころではなかったかのいずれかであり、どうも後者のようである。
さて、古米と新米の話に戻ると、当時の文献に記された古米と新米の価格はどうも古米の方が1~2割高いようだ。現代人なら保管料や金利を反映しているからと考えるかもしれない。だが、日本でもつい数年前までは保管料がかかった古米の方が安かったでないか。このような形で可能性をひとつずつ潰して最後に残った理由は、なるほど、「古米は腹が膨れる」からだという。
古米の方が新米より水分が少ないため、炊きあがったときに水分を吸収して量が多くなり、その分、腹が膨れる。そのため価格も高いということだ。日常的に絶えずコメが余っている状態なら新米が高いかもしれない。ただし、逆に日常的にコメが無い状態あるいは飢饉が慢性化するようになると、できるだけ腹を膨らませるためにも古米の方が好まれ、価格が高いということのようだ。
なお、飢饉は天候や災害など何等かの要因により一時的に深刻な食料不足に陥る状態であり、飢餓は継続した栄養不足状態、端的に言えば空腹により死に至る状態のことである。英語で飢饉は「famine」、飢餓は「starvation」、そして空腹は「hunger」という単語が用いられる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)では、何もない状態から飢饉に至る状態を1(Non)、2(Stressed)、3(Crisis)、4(Emergency)、5(Catastrophe/Famine)の5段階に分けている。カタカナが氾濫している近年の日本ではクライシスとエマージェンシーも何となく「危機」「緊急事態」とされているが、厳密には深刻度の段階が異なる。
それにしても、「古米と新米」のどちらを評価するか、この基準として我々が備えている現代の「常識」も環境により大きく変わる。これも備蓄米放出で実証された訳だ。
* *
そういえば、この本が書かれた当時(2008)は「飽食の時代」と言われていました。
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