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酒米・エサ米・てんてこまい【小松泰信・地方の眼力】2025年4月9日

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当コラム、福島第一原子力発電所事故以後、福島県の純米酒を取り寄せ、毎晩二合ほど飲む。これもまた値上がりしそうな気配。

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酒米の確保困難

 「主食用米の価格が酒米を上回り、酒米の生産をやめて、利幅の大きい主食用米に切り替える農家が出ている」ため、酒米の確保が困難として、減産や生産見合わせも視野に入れる酒造会社が出てきていることを朝日新聞(3月26日付)が伝えている。
 「農家がこれまで通り酒米の生産を続けるには、せめて、(主食用の)うるち米と同程度の価格で酒米を買ってほしい」と、生産農家の思いを代弁するのは、兵庫県酒米振興会の担当者。
 酒米は主食用米より栽培が難しく、かつ単収も少ないため、主食用米より高値で取引されてきた。
 農林水産省のデータによれば、13~23年産の主食用米の相対取引価格が1俵(60キロ)当たり11,000~14,000円台だったのに対し、主力酒米の山田錦は24,000円前後で推移。ところが、「令和の米騒動」で主食用米は値上がり。今年2月における24年産の相対取引価格は税込み26,485円となり、価格が逆転した。
 京都市の酒造大手の担当者は、「作付面積の減少により、必要量を確保できるか心配だ」「今年は部分的な減産や生産見合わせもありうる」と話している。
 同市の他社の担当者も、「これまで通り酒米を生産していただくよう、農家さんにはただひたすらお願いするしかない」と話す。
 他方、山口県の酒造会社は、19年から厳しい自社基準を満たす高品質の酒米生産者に賞金を出したり、相場を上回る価格で買い取るなどにより、「酒米の確保には苦労していない」とのこと。
 愛媛県は、24年産の県産酒米は前年より値上がりし、減産を余儀なくされている酒蔵も出ていることから、25年度当初予算に酒蔵支援策として2362万円を盛り込み、酒米購入費の10%を補助することになっている。
 山形県も2月補正予算に4,010万円を計上。県内の酒蔵が県産4品種の酒米を使う場合、値上がり分の半額を補助する方針。「酒米の生産とともに高品質な酒造りもしっかり支えていく」と話すのは、県産品・貿易振興課の担当者。

酒を造れば造るほど赤字に

 「コシヒカリなど主食用米の値上がりに伴い、酒米の価格が高騰し、石川、富山の酒造会社が対応に頭を痛めている」ことを報じているのは北國新聞(4月8日付)。石川県酒造組合連合会によれば、今年産酒米の仕入れ値が前年比3、4割ほど上がると見込んでおり、「価格転嫁にも限界があり、利益が出ない」(酒造関係者)厳しい状況。
 酒造りは原価の8割を酒米が占め、酒米の高騰が利益を大きく左右することなどから、「このままじゃ、酒を造れば造るほど赤字になる」とは、同連合会長。その会長が経営する酒造会社は、酒米価格高騰を見据え、6月にも各銘柄の値上げに踏み切るそうだ。しかし、「値上げにより売り上げが多少落ち込むが致し方ない。それでも利益が出るかは分からない」とのこと。
 さらに奥能登豪雨の影響から、今年産酒米の生産量減少を懸念する声も上がっていることも紹介されている。

ふるさと納税もてんてこまい

 日本経済新聞(電子版・4月9日5時)によれば、新潟県南魚沼市は1日、ふるさと納税で2025年産のコメが返礼品となる寄付の受け付けを始めたが、初日だけで約600件、約5,000万円の寄付があったそうだ。前年同日時点(約590万円)の8.5倍。「あまりの殺到に驚いている。消費者のコメを確保したいという気持ちが影響したのではないか」と分析するのは、てんてこまいの同市担当者。
 茨城新聞クロスアイ(4月9日7時)によれば、茨城県坂東市のふるさと納税返礼品のコメ約1万件が、在庫不足で申し込み者に送れなくなっているそうだ。市によると、7,000円の寄付に対して市内の農業法人が手がける昨年産のコメ5キロを送ることになっていたが、コメの価格高騰を背景に申し込みが急増。申込数や在庫、配送済みの数が正確に把握できなくなり、在庫以上の分を受けたことが原因とのこと。市は代替品を確保できず、本年産のコメを送るか、全額を返金するかの対応を取るそうだ。

深刻なエサ米不足

 米騒動に振り回されているのは人間だけではない。
 「豚や鶏といった家畜のエサに使う飼料用米の不足が深刻だ。価格が高騰している主食用米の生産をコメ農家が優先し、作付けが減っているためだ」で始まる日本経済新聞(4月4日付)の記事は、家畜にまで及ぶコメ問題を取り上げている。
 「全国のコメ農家に聞いているが、今年は飼料用米を作らないという声が目立つ。奪い合いになりそうだ」と、焦りを隠せないのは飼料メーカーの仕入れ担当者。自社の配合飼料に使うコメの調達が思うように進まないからだ。
 飼料用米を配合したエサを使って豚を育てているブライトピック(神奈川県綾瀬市)によれば、「飼料用米を食べて育った豚の肉質は、甘い口どけのなめらかな仕上がりになる」が、「手に入れられる飼料用米が減っている」(同社社長)そうだ。
 主食用米価格の上昇に伴い飼料用米価格も上昇していることなどから、「もはや飼料用米に価格面のメリットはないが、調達できなければ餌の品質にも関わる」との飼料業界の声も紹介されている。
 「主食用米の需給調整という位置づけではなく、飼料用米としての生産を増やす観点から、独立した枠組みで政策を進めるべきだ」とコメントするのは、冬木勝仁氏(東北大学教授・農業経済学)。

食い改めよ

 NHKNEWS(4月9日・10時48分)は、江藤農林水産大臣が9日午前、石破総理大臣との会談後、記者団に対し「上昇したコメの価格を落ち着かせるため、この夏の端境期まで切れ目なく備蓄米が供給されるよう、夏まで毎月備蓄米の売り渡しを実施する」と述べ、石破総理からの指示を受けて政府の備蓄米の放出を、今夏まで毎月実施すると表明したことを報じた。
 米騒動が及ぼしている影響の広がりと深さを知れば知るほど、この程度の弥縫策(びほうさく・一時逃れの策略)で解決する問題ではないことは明らかである。さまざまな用途で利用されるコメの特性は、不足時には悪影響が多方面に広がることを意味している。生産過程で生み出される多面的機能も考え合わせれば、コメの価値は極めて大きい。
 しかし政府の姿勢は、その価値に対する敬意を著しく欠くものである。まさに、食い改めるべきものと言えよう。

 「地方の眼力」なめんなよ

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