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瑞穂の国から見ず穂の国へ【小松泰信・地方の眼力】2025年4月16日

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「日本の農業は衰退の一途をたどり、食料自給率は30%台で増加の兆しが見えません。私には国は農業を保護する気がないように思えます。農家への補助金は欧米に比べ少額で、我が家のような小さな農家には恩恵はありません。我が家は米作りから10年前に撤退しました」(毎日新聞4月14日付、山口県50代女性の投稿より)

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確かに「極めてイレギュラー(異常)な状態」

 農林水産省は4月14日、3月31日から4月6日に全国のスーパーで販売されたコメ5キロ当たりの平均価格が、前年同期と比べ2倍超の4,214円だったと発表した。データの集計を始めた2022年3月以降の最高値を更新。前週との比較では8円高く、値上がりは14週連続。3月下旬から備蓄米が一部店頭に並んでいるものの、現時点での放出効果は限定的。
 同省は同日、コメの卸売業者や小売業者との意見交換会を開き、値下げに向けた取り組みを要請。出席した江藤拓農林水産大臣は「極めてイレギュラー(異常)な状態だ。備蓄米売り渡しの意図や目的について理解していただきたい」と述べている。
 大臣が、業者に備蓄米放出の意図や目的への理解を求めることこそ、「極めてイレギュラー(異常)な状態」と言える。

届かぬ政府備蓄米

 西日本新聞(4月16日付)は、地方の流通業者からの「うちの範囲では出回っていない。苦しいが耐えるしかない」との悲痛な声を紹介し、政府備蓄米放出の恩恵が地域や小売店の規模などによって偏りが生じていることを伝えている。 
 「県内の業者が備蓄米の入札に参加しておらず、入ってきていない。4月に入ってコメを値上げせざるを得なかった」と話すのは、宮崎県内のスーパーの店長。同スーパーの仕入れ担当者によれば、「備蓄米はほぼ東京より東にある」ことから、「輸送費が高く、どっちみち店頭価格が高くなってしまうので調達を諦めた」とのこと。
 備蓄米の保管場所は東日本に多く、全国農業協同組合連合会(JA全農)の担当者が、「近場に持って行くよりは遠くに持って行った方が運賃がかかるのは、その通りだ」とコメントしている。
 
欠かせぬ「コメ供給力強化」策

 このような状況から、西日本新聞(4月16日付)の社説は、「政府は主食であるコメの需給逼迫を解消し、価格の引き下げと安定化に取り組むべきだ」と訴える。なぜなら、「コメの高騰は外食や中食の値上げに波及する。このまま長期化すれば、食べ盛りの子どもがいる家庭や低所得世帯など家計への影響は一層大きくなる」からだ。
 「備蓄米の売り渡しに原則1年以内の買い戻し条件が付き、入札参加者がJA全農を中心とする集荷業者に限られたこと」を問題とし、「市場価格を引き下げる効果を高めるには、備蓄米を全国の卸売業者に行き渡らせる必要がある」とする。
 さらに、「中長期的にはコメの供給力強化が欠かせない」ことを強調する。
 11日に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」では、30年のコメ生産量を23年実績よりも3%多い818万トンとする目標を掲げている。しかし、「作付面積が148万ヘクタールから144万ヘクタールに減る代わりに、単位面積当たりの収穫量が増えて増産になる」という、作付面積を減らし生産性向上に頼るシナリオを「楽観的」と疑問視する。

「新規就農者の支援と育成」が鍵

 愛媛新聞(4月13日付)の社説は、まず4月1日より施行され、運用の基本方針が11日に閣議決定された「食料供給困難事態対策法」に言及する。同法は、「食料危機の度合いに応じて国が生産者や輸入業者に安定供給や増産を促すことを定めている」が、「農家に増産や転作に対応できる体力がなければ実効性は確保できない。支援拡充や条件整備で安定経営を促し、農業従事者の減少と高齢化に歯止めをかけることが求められる」として、「平時から輸入元の分散や備蓄量の確保に加え、国内生産の強化に本腰を入れねばならない」と迫る。
 具体的には、「新規就農者の支援と育成」が鍵を握るとして、「農地集約による経営規模拡大、雇用就農の促進、デジタル技術を活用したスマート農業の推進など、あらゆる方策を用いて担い手確保と生産性向上に努めてほしい」とする。

阻止せよ「コメの輸入拡大」

 「後継者不足や生産基盤の脆弱さを克服し、持続可能な農業をつくるという原点に立ち返った政策が求められる」とする北海道新聞(4月12日付)の社説は、「トランプ米政権の関税措置をめぐる日米協議の行方」を気がかりとする。なぜなら、「日本に農産物の市場開放を迫る姿勢を鮮明にしている」からだ。
 「現在の日本の状況を好機と見て、環太平洋連携協定(TPP)の交渉と同様にコメの輸入拡大を強硬に迫る可能性がある。市場開放が進めば、道内をはじめとする生産者への打撃は必至で、食料安全保障の観点からも問題だ」として、「自動車の安全基準(小松注;米政府が日本の非関税障壁としている)などを堅持する見返りに、安易に譲歩するようなことがあってはならない」と、政府に注文を付ける。

前門のトランプ、後門の財務省

 前門に立ちはだかるのが虎ならぬトランプだとすれば、後門には狼ならぬ財務省が控えている。
 財務省は15日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会を開き、コメ価格高騰の対応として輸入米の活用を拡大すべきだと提言した。政府が関税をかけず輸入するミニマムアクセス(最低輸入量)約77万トンの中で主食用が占める最大10万トンの枠を拡充すれば、コメの安定供給につながると指摘している。
 稲作農家への影響を考慮して設定した主食用の枠を拡大すれば、割安な輸入米が増え、稲作農家の収入を圧迫することになる。
 「令和の米騒動」以降、稲作農家が少しだけ報われる程度の米価水準で、消費者や業者に「価格高騰」という災禍が降りかかるとすれば、それは国の悪政によるもの。生産者には何の問題もない。少しでも安い商品を求める消費者や業者の行動は責められないが、その流れに棹さす財政審と財務省の罪は大きい。
 輸入米の増加は、農家の稲作離れを加速させ、瑞穂の国なるものを支えてきた水田のかい廃を加速させる。
 美田と実るほど頭を垂れる稲穂に満ちた農村風景は消え、打ちしおれて頭を垂れてたたずむ人びとのみ。

 「地方の眼力」なめんなよ

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