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【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】目指す方向を明確にせずして酪農・乳業の未来なし2025年4月17日

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 稲作だけでない。全国を回っていて、一番急速に廃業が加速しているのが酪農だ。今、頑張ってくれている酪農家さんは希望の光だ。支え合う仕組みの強化が不可欠だ。

財政当局の意向を反映した「基本法」の基本姿勢
 まず、財政当局の意向そのままの農政の基本方向を確認しておきたい。
1. 食料自給率は重要な指標とはしない。自給率向上に予算を投入するのは非効率だから、できるかぎり輸入を増やす。
2. 農業に予算かけてきたが、農家も減り、農村も疲弊している。潰れるほうが悪い。
3. 農家が激減することを前提に考え、農業・農村にこれ以上の予算は投入しない。スマート農業と輸出で企業などが儲かればそれでよい。
4. その代わり、有事には、支援でなく、罰金で脅して強制的に増産してもらう。
5. 価格転嫁政策は無理だとわかったので「努力義務」「コスト指標」などでお茶を濁す。
 このように、国民の命を守る食料、それを生み出す農業振興こそが「国防」であることが忘れられ、日本の地域社会の崩壊も顧みず、一部の利益のみが効率であるかのような方向性が示され、現状認識、危機認識の欠如と言わざるを得ない。

5年後の生乳生産目標730万トンの意味
 お金を出せばいつでも安く輸入できる時代は終わりを告げている。しかも、今後の国際乳製品需給は新興国の需要増加に対して供給力が追いつかない逼迫の見通しが明白な中で、6割も輸入に頼っている日本は、何をすべきか。
 国産は、圧倒的に足りていないのだから、総力を挙げて、生乳を増産し、輸入を国産に置き換えていくことが求められる。そのためには、生産抑制という選択肢はない。増産のみである。
 それなのに、乳牛の飼養頭数は減少を見込み、生乳生産は現状維持、飼料自給率も現状維持、といった「何もしない」方針が出されている。

これ以上の生産基盤の弱体化は業界全体の崩壊~生産調整から出口調整へ
 日本は、現場の酪農家にしわ寄せをし過ぎてきた。余ってきたから、搾るな、牛は殺せ、牛乳は捨てよ、こんどは足りないから搾れと。牛がすぐに対応できるわけがない。バターの緊急輸入が増える。現場は振り回され、借金ばかりが増えて、疲弊してきた。酪農家も組織もよく踏ん張って対応してきた。
 不足と過剰への場当たり的な対応を要請され、酪農家は翻弄され、疲弊してきた歴史をもう繰り返してはならない。酪農家が限界に来ている。牛は水道の蛇口でない。時間のズレが生じて、生産調整は必ずチグハグになる。
 もう限界だし、そんなことをしている場合ではない。乳製品の6割、チーズの8割が輸入ということは、国産は足りていないのだ。わずかな国内需給の変動で、生産者にしわ寄せをして振り回している場合ではない。特に、酪農家が生乳を販売した段階で生乳はメーカーのものになっているのだから、脱脂粉乳の在庫が多いから、赤字で苦しむ酪農家に脱脂粉乳の在庫処理費用として、北海道の酪農家だけで、年間350億円を超えるような負担をさせるのか、という声もある。
 お金を出せばいつでも安く輸入できる時代は終わった。国産振興せずして、国民の命も守れない。なのに、生産調整に協力しないと補助金を出さないとか、そんなことしている場合ではない。自由な増産を促し、出口をつくればいいだけだ。バターや脱脂粉乳の政府買い上げは他国は当然の如くやっている。乳製品の備蓄も増やし、内外の援助物資にも使えばよい。それらは安全保障のコストだし、市民を助ける貢献でもある。
 メーカーも輸入乳製品原料を使うのをやめて国産に切り替えないと、そのうち海外から買えなくなる時代も来る。今、酪農家が急減しているのを放置したら、メーカーも成り立たなくなる。株主のために目先の利益を・・・、と言っているうちに、業界は崩壊しかねない。「短期利益の追求は長期的な崩壊につながる」ことを忘れてはならない。

新基金の意義
 国がやらぬなら民間でという新たな基金が動き出す。これは画期的なことだ。ただし、いくつかの懸念事項がある。
 酪農家と乳業の負担で、国の拠出がない。これは本来、国がやるべきことで、各国はそうしている。せめて、国が大半を出して、民間からも補足するべきものではないか。結局、苦しんでいる酪農家の新たな負担を上乗せすることになるのは避けたい。
 米国・カナダ・EUでは設定された最低限の価格(「融資単価」、「支持価格」、「介入価格」など)で政府が穀物・乳製品を買上げ、国内外の援助に回す仕組みを維持している。かつ、農家の所得が最低限維持できるように直接支払いも行う二重の支援がある。
 牛豚マルキンは、国が3/4、生産者が1/4の拠出で、家族労働費を含めたコストをカバーする仕組みにしている。これに近いものを酪農にも作るという方向でやるべきではないか。
 しかも、クロスコンプライアスとして、拠出金を出さないと、補助事業が受けられなくするというのは疑問がある。本来、最低限の環境に配慮した農法を実践していることを補助政策の要件とするものであり、この基金に拠出することが「農家の最低限の義務」だという性格のものではないように思われる。
 かつ、マルキンのように、どういう事態にどういう条件で何を発動するのか、明確にルールを決めておかなくては、基金の使用が不透明になる。また、本来、国がやるべき政策を放棄して、当事者に負担を押し付けてくる流れを作りかねない。
 そもそも、「生産調整」という考え方から抜け出る必要がある。減産でなく増産して輸入から国産に置き換える需要創出(特にチーズ)こそ今必要だ。30万トン程度の増減で右往左往を繰り返す場当たり的な需給調整から脱却するには、30万トン程度がチーズ向けではけるようにすればよいだけだ。チーズ向け生乳の内外価格差を政策的に農家あるいはメーカーに補填するのに100億円もかからない。
 まず、30万トン前後でチーズ向けの置き換えを伸び縮みするバッファーを確保しておけば、生産調整に協力しないと補助事業は受けられないとか、そういう方向で酪農家を縛る必要はなくなる。
 農家を苦しめる、意地悪な政策から脱却しないと、本当に農家がいなくなってしまう。国内外への人道支援も含めた需要復元・創出で消費者も農家も共に助ける出口対策に財政出動すれば、農業を守り、食料危機にも備えられる。

画期的な酪農家と消費者の自給圏
 生協陣営に新たな動きが出ている。減少する生乳生産に歯止めをかけ、酪農家を守り、組合員の牛乳・乳製品を確保するために、生協による「牛乳循環圏」の構築だ。800頭規模の共同牧場をつくり、傘下の酪農家さんにそこに入ってもらって、組合員の生乳・乳製品需要をすべて賄う仕組みだ。消費者と生産者が支え合う素晴らしい画期的なモデルだ。
 この仕組みは、酪農家に負担を増やすのではなく、低温殺菌の瓶牛乳を高い価格で買い取ることで消費者が買い支える仕組みの強化だ。生協の職員も組合員(消費者)も酪農生産にも参画する。政府や大手乳業、酪農団体の対応が不十分であればあるほど、こうした消費者自身が酪農家と直接結びついて支え合う仕組みが希望の光であり、ますます広がるであろう。
 ここでは、独自のTMRセンターもつくり、傘下の耕種農家に牧草などの栽培を増やしてもらい、地域の食品残渣などの活用も増やして、飼料の国産率を64%まで高めており、さらに上昇させようと取り組んでいる。これも画期的だ。(ただし、牧草の種の国産率は0.001%程度なので、これは大きな課題として残っている。)

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