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【地域を診る】トランプ関税不況から地域を守る途 食と農の循環が肝 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年4月22日

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今地域に何が起きているのかを探るシリーズ。京都橘大学学長の岡田知弘氏が解説する。今回は「トランプ関税不況から地域を守る途」として地域経済活性化の必要性を探った。

京都橘大学教授 岡田知弘氏

京都橘大学教授 岡田知弘氏

いよいよトランプ関税が始動した。全輸入品に一律10%の関税をかけたうえ、各国ごとの貿易赤字と関税・非関税障壁を問題にして「相互関税」を課すものであり、日本に対しては24%の関税引き上げを決めた。

かつて米国政府が主導したWTOルールもちゃぶ台返しで破壊する一方的な高関税の通告や、関税を引き上げても国内の物価や景況に影響しないという議論自体が、米国内外から強い反発をうけた。最も早く反応したのは株式市場であり、足元のニューヨーク証券取引所をはじめとして各国株式相場が暴落し、世界同時株安が起こった。この反発にトランプ大統領が動揺し、相互関税の発動を90日間停止すると緊急表明し、混乱が続いている。

トランプ大統領や側近の説明を読んで、最も気になるのは貿易を国と国との取引として捉えて、その貿易差額をもとに、米国が「搾取されている」と繰り返し述べている点である。だが、現代の貿易は、国が直接担っているわけではない。1970年代から、国連や米国当局も認めているように、多国籍企業が大きな役割を果たしている。

例えば、米国の自動車企業や半導体企業は、カナダや中国等に進出し、そこで完成品や中間製品、部品を生産し、米国に逆輸入する行動をとって、多国籍企業全体の収益を最大化してきた。その際に障害となったのが、企業内貿易にかかる各国の関税や非関税障壁であった。これを逓減、撤廃させることで多国籍企業全体の利益が増えていくと考え、自由貿易協定を結び、さらにサービスや知的所有権も含めて利益の最大化をはかったのがWTO協定であった。

これを、国と国との貿易収支という視点でとらえると、米国側の貿易赤字の膨張に見える。だが、実際には、企業内世界分業を活用した米国多国籍企業の国内販売力の高さを示しているともいえる。

ちなみに、多国籍企業の貿易を研究している小山大介京都橘大学教授の推計によると、2022年の米国の輸出額のうち68%、そして輸入額の61%がこの多国籍企業関連貿易が占めているという。となると、各国に高関税をかけることは、これらの米国多国籍企業による企業内の世界貿易体制や物流体制を混乱、寸断し、製造業の生産能力を減退させることになる。外国からの投資を期待したとしても工場が稼働するのは随分先のことであり、即効性はないし、ごく一部の地域、分野にしか経済効果はないだろう。米国の製造業の復活につながることは、ほとんど期待できないといえる。

次に問題なのは、現代における国際収支は、トランプ大統領が問題にしている貿易収支だけではない。直接投資等の収益からなる所得収支や、技術移出などによるサービス収支も入っている。これらは、米国にとっては黒字部門であり、逆に日本では情報関係サービス収支の圧倒的赤字が問題となっている。これらの全体構造を見ない「手術」は、厳しい後遺症を、米国内部だけでなく日本をはじめとする各国経済にもたらし、互いの経済的対立を激しくするだけである。トランプ大統領は、軍事費の負担もディール(取引)の材料にしたり、国内での武器生産の増強を口にしており、戦争へと結びつく危険な賭けをしているといわざるをえない。

視点を日本の地域経済に移してみよう。安倍政権以来、政府は「地方創生」を掲げ、石破政権の下では「地方創生2・0」の掛け声の下、半導体をはじめとする経済安全保障関係の工場誘致や、米をはじめとする農産物の輸出促進に力を入れてきた。前者については、北海道・千歳で建設中の国策半導体メーカー「ラピダス」のために数兆円の国費を投入しつつあるが、その販路は米国の国防産業が主であるとされている。工場周辺では、地価上昇による不動産バブルが広がっている。だが、今後、トランプ関税政策のなかで半導体も対象となるので、米国に安定的に輸出できるか、見通しがつかない状況である。

また、米をはじめとする農産物輸出政策についても、大統領が日本米の700%関税論を口にしたことにより、暗雲が立ち込めてきている。農業生産者や法人の米国進出が促されると、日本の農村経済はさらに大きな打撃を受けることになる。農村地域に立地している企業も米国や日本経済の低迷によって苦しい経営を強いられ、縮小・撤退する可能性もある。

米不足と米価高騰が顕在化し、災害が続発している今、トランプ関税不況に抗するためには、地域の農林業の再生を基本にし、生産と消費をつなぎ、地域内経済循環を太くし、地域内再投資力をつけることを、地域経済政策の基本に置く必要があろう。かつて京都府内で地域食糧確立運動として取り組まれた試みに注目したい。その発展形ともいえる「地域圏フードシステム」づくりは欧州諸国でも取り組まれ、日本でも提案されてきている(『季刊農業と経済』2021年秋号)。足元の地域から食料の生産、加工、消費、廃棄の物質循環と経済循環をつくることが最も安定的なことであり、かつどの地域でも自治体や農協、企業、住民が協力すれば直ぐにでも実践可能な途だといえる。

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