【追悼】松下雅雄JAはだの元組合長((一社)農協協会副会長) 2017年10月30日
神奈川県秦野市古谷義幸市長
元JAはだの代表理事組合長で(一社)農協協会副会長の松下雅雄氏は9月13日に逝去された。
行政と一体となって地域農業振興と組合員の豊かな暮らしづくりに長年にわたりリーダーシップを発揮した故松下氏へ、地元、秦野市の古谷義幸市長に追悼文をお寄せいただいた。
秦野市農業協同組合・元組合長、松下雅雄さんが、9月13日に逝去されました。
松下さんは、平成8年秦野市の農業協同組合長に就任され、以来14年余の長きにわたり、強力なリーダーシップのもと、組合の強化充実と組合員の福祉増進のために、深く傾倒され、著しい成果を収められました。
丹沢にいだかれ、美しい里地里山とそこから育まれる名水を有する本市は、東京都や横浜市などの大消費地に近接している都市農業の利点を生かし、安定・持続的な販路の確保や、観光農業の振興、そして、多くの市民に新鮮で安全な地場農産物を供給する、魅力的な「地産地消」など、市と農協が連携して持続可能な農業振興の実現に向けた取組みを進めています。
こうした中、松下さんが組合長として取り組まれたことの一つに、農産物直売所「じばさんず」の開設があります。
生産者の販売先確保を目的に、平成14年にオープンした同施設は、本市や近郊の住民ばかりでなく、東京や横浜の人気レストランにも好評で、新鮮で安全な魅力あふれる地場農産物を直売し続けています。消費者はもちろん、「少量多品目の農産物でも販売できるようになった。」と生産者にも好評です。
松下さんは、"販売なくして生産なし。"と言われました。これは、"買ってくれる人がいるから、生産にも力を入れることができる。"まずは、販売ありきです。そのためには、生産者が安心して生産できるよう「じばさんず」の販売力を強化することが肝要ということです。自分の出荷した農産物が売れると、よりいいものを作ろうと意欲がでる。やりがいに繋がります。これは、農業に限らず、物を生産して販売する全ての業種共通に言えることです。利益がでて、「自立できる農業」のための取組みを推進するのが農協の役割であり、それを支援するのが、行政の役割だと思います。
市との関わりの中でも、多くの功績を収められています。
平成17年、農協の本所に、農協、農業委員会、そして、市との3者による「はだの都市農業支援センター」開設にあたっては、技術・経営・マーケティング指導、担い手育成、荒廃農地対策、起業や農業参画の促進などに、連携し、効果的かつ戦略的に取り組むことができる環境整備に尽力されました。3者それぞれの力をワンフロアで活かす体制は、本市の農業振興に大変役立っています。
また、平成18年に開校した「はだの市民農業塾」は、支援センター同様、3者が協力して、農業の担い手づくりを目的に、新規就農や市民農園の利用者等を希望する市民や、農産加工品の製造・販売希望する農業者等を対象に開講しました。農業塾には、「新規就農」、「基礎セミナー」、「農産加工セミナー」の3つのコースがありますが、特に、「新規就農コース」では、これまでに77名が卒業し、その内の62名が新規就農されています。
(写真)松下雅雄・JAはだの元組合長(※2013年10月21日撮影)
また、韓国農業との交流にも、積極的に取り組まれました。
松下さんは、韓国京畿道高揚市の知同道農業協同組合との「姉妹農協締結」や韓国農協中央会被州市支部との「友好農協契約締結」を実現させています。
これにより、農家や農協職員の相互交流が盛んに行われることになりました。
私は、常日頃、農業政策には、「攻めの農業」と「守りの農業」があると申し上げています。意欲ある農業者に対して、生産性の向上と経営基盤の安定に必要な支援や、将来の農業を担う新たな就農者への支援を行っていく「攻めの農業」。
一方で、昔ながらの田園風景といった農地の多面的な機能を維持・保全していく「守りの農業」。両面の推進が必要だと思っています。
松下さんとは、お互いの考えを、率直に言い合える関係でした。だからこそ、農協と連携した様々な取組みを進めることができたと思います。
平成21年に組合長をお辞めになった後、本市観光協会会長に就任いただきました。
秦野市観光協会と京畿北部観光協会との友好締結を実現したほか、本市と坡州市のロータリークラブ及び商工会議所の友好締結も支援されました。
農業のみならず、本市観光等の推進にも多大なる貢献をいただきました。9月2日に公開された大地康雄さん主演の映画「じんじん~其の二~」は、松下さん宅の離れを寄宿先に設定して、本市の豊かな自然を「じばさんず」や本市一番の祭りである「たばこ祭」を場面に、若者の成長を旅芸人の人情あふれる関わりで表現された、全国の皆様にご覧いただきたい映画です。この映画の完成は、松下さんの活躍の一端ですが、大変なご苦労に心から感謝しています。
このような偉大なご功績を、今後も本市の発展に生かさなければと決意を新たにするところです。
市政への長年のご協力と本市の農業等の発展に尽くされたご功績に対し、改めて心から敬意と感謝を申し上げます。
ありがとうございました。
安らかなるご冥福を心からお祈り申し上げます。
(写真)古谷義幸・秦野市長
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(130)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年2月22日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(47)【防除学習帖】第286回2025年2月22日
-
農薬の正しい使い方(20)【今さら聞けない営農情報】第286回2025年2月22日
-
全76レシピ『JA全農さんと考えた 地味弁』宝島社から25日発売2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年2月21日
-
農林中金 新理事長に北林氏 4月1日新体制2025年2月21日
-
大分いちご果実品評会・即売会開催 大分県いちご販売強化対策協議会2025年2月21日
-
大分県内の大型量販店で「甘太くんロードショー」開催 JAおおいた2025年2月21日
-
JAいわて平泉産「いちごフェア」を開催 みのるダイニング2025年2月21日
-
JA新いわて産「寒じめほうれんそう」予約受付中 JAタウン「いわて純情セレクト」2025年2月21日
-
「あきたフレッシュ大使」募集中! あきた園芸戦略対策協議会2025年2月21日
-
「eat AKITA プロジェクト」キックオフイベントを開催 JA全農あきた2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付、6月26日付)2025年2月21日
-
農業の構造改革に貢献できる組織に 江藤農相が農中に期待2025年2月21日
-
米の過去最高値 目詰まりの証左 米自体は間違いなくある 江藤農相2025年2月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
-
村・町に続く中小都市そして大都市の過疎(?)化【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第329回2025年2月21日
-
(423)訪日外国人の行動とコメ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月21日
-
【次期酪肉近論議】畜産部会、飼料自給へ 課題噴出戸数減で経営安定対策も不十分2025年2月21日
-
「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日