【インタビュー】勝瑞 保・JA共済連代表理事理事長 地域密着の強みを発揮 ―JA共済 「3か年計画」2016年4月11日
くらしと営農支えるJA共済自己改革の取組み着実に
「くらしと営農を支える」というJA共済の新「3か年計画」がスタートした。JAの総合事業を支える共済事業がこれから何を目指していくのか。その重要なポイントを、勝瑞保JA共済連理事長に語ってもらった。
◆多様化するニーズに応える
――新「3か年計画」のスローガンは、「地域に広げる助け合いの心」のサブタイトルとして「くらしと営農を支えるJA共済」を掲げ「くらし」と「営農」を強調していますが、その心は何でしょうか。
大きな課題認識として「JAの自己改革」に、私たちも一緒になって取り組んでいくことが必要だということです。
JAは総合事業を実施していますが、その総合事業の強みを、さらに発揮できるようになるためにJA共済として何をしていくのかということです。
JA共済としては、まず、組合員の皆さんのニーズや期待に応えていくことが何よりも大切だと考えています。組合員のニーズは多様化していますので、これにJAおよび連合会がどう応えていくかです。それにより、JA共済が地域の皆さまにとって必要なものとなり、総合事業を展開するJAの強みが発揮され、JAが地域にとってなくてはならない存在となると考えています。
そのための計画がこの「3か年計画」です。
そのために連合会としては、いままで以上にJAに対する万全な支援体制を構築していくことが重要だと考えています。
――具体的には、どのような支援を...
一つは、連合会がJAに出向く体制を強化することです。そのための要員配置も行います。もう一つは、JA共済が永続的な保障を提供していくという共済責務を全うしていく、これが連合会としての大きな役割です。そのためには、経営の健全性、信頼性を高めていくことが必要です。
◆農業の変化に対応した保障を
――「農協改革」と言われていますが、改めてJAの総合事業のなかで、共済事業をどう位置づけ、どう役割を果たしていくかということですね。
その通りです。まず、大切なことは共済事業として「何ができるのか」「何をするのか」です。ニーズに即した保障の提供が共済事業の基本ですから、これを確実に実行していく必要があります。
そのために「ひと・いえ・くるま」の保障ニーズへの対応はもちろんのこと、これからの農業のさまざまな変化をしっかりキャッチアップしていくことが求められます。農業者の所得増大、農業生産の拡大を進めていくにつれ、農業に関わるリスクも増大すると予測されます。こうした農業リスクを農業者の皆さまにきちんとお伝えをして対策をとっていただくことも、安心して営農活動をしていただくためには必要なことだと思っています。
――それが従来の「ひと・いえ・くるま」に加えて、農業についても取組みを強化していくということですね。
農業リスクへの保障提供は、グループ会社である共栄火災とともにJA共済グループとして一体的に対応していくことで、JA共済の機能を強化してまいります。
「農業リスク診断活動」を通じて、いざという時の確かな安心をお届けし、農業者の皆さまには農業に専念してもらい、事業や生活基盤の安定化をはかっていくことが大きな役割だと考えています。
もう一つは、JA自身も農業の変化に対応するなかで、農畜産物の輸出を含めたさまざまな事業リスクを抱えることになります。そうしたリスクについてもJA共済グループとしてしっかりと保障提供していくことで、共済事業として農業経営に貢献する取組みを強化していきます。
◆各地域の諸課題にも応えていく
――いまお話になった点が、新3か年の大きな特徴の一つですね。
そうです。もう一つの大きな特徴は「地域の活性化に向けた地域貢献活動」への取組みです。従来も交通事故対策等さまざまな取組みをしてきましたが、新たに「地域・農業活性化積立金」を創設し、地域貢献活動をさらに強化していきたいと考えています。
この積立金を地域貢献活動の一環として、健康増進や文化支援、農業振興など、地域や県域などそれぞれのニーズに合わせて、活用していくことで、地域に合った「くらしや営農」の活動支援を、行うことができると考えています。
これも今回の3か年計画の大きな特徴の一つといえます。
――県域や地域ごとになると、ニーズもかなり違いがありますね。
例えば、鳥獣被害対策や中山間地域の高齢独居者の買物対策など、地域ごとにさまざまなニーズがありますので、それぞれの地域実態に即した活動を展開していきたいと思います。
――地域貢献活動としては、従来よりも一歩も二歩も踏み込んだわけですね。
いままでは活動範囲が限られていましたので、もう少し範囲を広げて、活用しやすいものにしていこうと、「地域のくらし」を支えるJA共済が、もう一歩踏み込んで地域貢献しようということです。
――こういうものがあると、JAもさらに地域に入って行きやすくなりますね。
そうですね。介護なども含めて、地域にはいろいろな課題がありますので、他の連合会の事業とも連携して活用していただき、地域に密着した総合JAの強みを発揮していただければと思います。
こうしたことを通して、JAがそれぞれの地域にとって必要不可欠な存在となっていくことの支援ができればと考えています。
――「3か年計画」の重点取組事項のトップに「盤石な事業基盤の確保に向けた共済事業実施態勢の強化」が掲げられ、その取組施策として、これまで取り組まれてきたエリア戦略をさらに深化させ「エリア戦略の全JA・全支店での浸透・定着に向けた取組強化」があげられていますが...
「エリア戦略」は、これまでの取組みにより一定程度の定着・浸透はできてきていますが、今次3か年では、さらに一歩進めて事業展開をしていくこととしています。点から面への推進をさらに進めるとともに、地域ごとに異なるニーズに合わせた対応がとれるようJAの支店・支所単位での「エリア戦略」を深化させていく必要があります。
――点から面へ広げてきた「エリア戦略」をさらに深化させていく...
それぞれの地域で異なるニーズに即した保障やサービスの提供を行うことで、組合員・利用者の期待に応えることができ、こうした期待に応えていくことが、組合員・利用者の信頼を得ることにつながり、地域にとって必要不可分なJA共済となることができると思います。そのために「3Q訪問活動」を基軸とした世帯内深耕によって世帯全体への保障充足にこれまで以上に取組み、「ひと・いえ・くるまの総合保障」の提供を進めていきたいと考えています。
――国内保険市場が縮小傾向で推移するなかで、日本の共済・保険市場は、今後さらに競争激化していくとも言われていますが...
競争はこれからもより激しくなってくると考えています。競争に勝ち残るために何をしなければならないかといえば、JA共済の強みをさらに強化していくことだと考えています。
JA共済の強みとは、JAが地域に根ざし、地域に密着した事業活動を実施しているということに尽きます。
この強みをさらに発揮していくためにも「エリア戦略」の深化を進めていくことが必要だと考えています。
◆JAに出向く体制をさらに強化
――連合会はそれをバックアップしていく...
連合会としてのバックアップは、前述した様にJAに出向く体制を強化し、JAと一緒になって課題を解決していくことです。
また、連合会としての経営の効率化を進め、JAの事務負荷を軽減していくことも大きな役割だと考えています。この4月から新しい事務手続きがスタートしていますが、ペーパレス化、キャッシュレス化も一歩一歩進めていきます。
また、生命査定や引受審査機能を拠点に集約し専門性を高めるとともに、自動車損害調査体制についてもJAと連合会の機能分担を見直し、連合会において損害調査サービスを実施する体制を段階的に構築していきます。
これらの取組みにより、JAの事務負荷軽減と契約者・利用者サービスの向上を実現していきたいと考えています。
――最後にJAのみなさんへのメッセージを...。
JA共済として永続的な保障提供ができるよう健全性・信頼性を強化するとともに、JAグループ全体の「創造的な自己改革」とも連携して、着実に計画を進めていきます。事業を取り巻く環境は厳しい面もありますが、厳しい時ほど事業本来の目的や果たすべき役割を再確認し、こうした機会をチャンスと捉え改革を進めるとともに、計画の着実な実践に取り組んでまいりたいと考えています。
(写真)勝瑞 保・JA共済連代表理事理事長
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