インタビュー 全国共済農協連合会 青江伯夫会長に聞く2020年9月30日
全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)が1951(昭和26)年に設立され、来年は70年を迎える。人口の減少、高齢化の進展、さらにここにきて、相次ぐ大きな自然災害と、JA共済を取り巻く環境が大きく変化している。新型コロナ感染症の拡大に伴い、さらに不安が高まるなかで、安心と満足を提供するJA共済の役割はますます重要になっている。今回、新しくJA共済連経営管理委員会会長に就任した青江伯夫氏に抱負を聞いた。
JA共済連70周年 相互扶助の原点へ 高まるJA共済の役割
JA共済事業の理念や取り組みを広く理解いただく
―JA共済連の会長になられ、共済事業への思いと、これからの抱負を聞かせてください。
JA共済連の歴史は約70年になりますが、歴史の重みをひしひしと感じているところです。同時に、今の時代に合ったJA共済のあるべき姿を考え、地域に溶け込み、地域に貢献していけるような事業を展開したいと考えています。
私は岡山県共済連に入会し、これまで組合員・地域住民に安心して幸せに生活してもらうことを使命としてJA共済事業に関わる運動を続けてきました。JA共済事業にとって大事なことは、「一人は万人のために、万人は一人のために」という「相互扶助(助け合い)」の理念のもと、地域に「しあわせの輪」を広げ、豊かで安心して暮らすことができる地域社会づくりに取り組んでいることを組合員・地域住民の皆さまに広く理解していただくことです。
そのことを念頭に、岡山県共済連時代には県内を駆け回り、多くの組合員・契約者にお会いし、コミュニケーションを図ってきました。そのおかげで、皆さまからたくさんのパワーをいただくこともできました。それが今の私の仕事に対する根幹をなしております。
会長就任に際し、JAにおける共済事業の重要性を改めて認識すると同時に、岡山県での経験をもとに、これからさらに頑張りたいという想いです。
期待される組織をめざすためにはトップが周りに元気な姿を示すことが大事です。私は「自らが上を向いて日々邁進する。」をいつも心がけています。
わかりやすい保障提供
―人口減少や組合員の高齢化が進む中、JA共済としてどのような取り組みが必要でしょうか。
JA共済連70年の歴史を踏まえ、もう一度原点に立ち返って考え直すことが大事です。JA共済の原点は「農協の共済」です。農業の現場で、組合員・地域住民のために、ニーズに沿った事業を行うという「相互扶助」の理念に立ち返る必要があると考えます。
JA共済には「ひと・いえ・くるま」の3つの大きな柱があります。いずれも重要な柱であり、これら3つの保障を提供できるのはJA共済の大きな強みです。
万一の保障を軸とした「ひと」の保障を中心に、組合員・地域住民の皆さまに保障の重要性を分かりやすく説明し、地域密着で総合保障を提供するJA共済事業の"色"を明確に打ち出していく必要性を感じています。
LAをはじめとするJA職員も懸命に推進活動をしていますが、広報活動などと効果的に組み合わせることで、さらに普及していくことができます。
JA共済事業の"色"をもっと活かせる組織となるよう、スピード感をもって業務に邁進してまいります。
多様な人材育成を
―JAは人の組織です。これからのJA共済連にはどのような人材が求められるでしょうか。
組織には多様な人材が必要です。JA共済連の職員の中にも農作業を経験したことの無い職員がいます。例えば長靴を履いて組合員と一緒に田畑に出るなどの様々な経験をすることにより、職員の多様性を拡げることができるのではないかと考えています。
また、JA共済連という組織は、"ひと"を相手にしている事業体であり、組合員・利用者や地域住民の皆さまに信頼されなければ事業は成り立たないということを職員教育の中心に据えるようにしていかなければならないと考えております。
かつてはJA職員の多くが組合員農家を回って共済推進をしていました。その中にあって一人ひとりの生活のことを考えながら行う共済推進はJAにおける職員教育の一つを担っていたと思います。
岡山県共済連時代に支所に赴任していたとき、あるJAの専務から、「共済推進は、職員の一つの通信簿になる」と言われたことがあります。JAでどんな仕事に従事していても、組合員・利用者に寄り添って一生懸命やっていると、組合員の信頼が得られ、結果的に共済にもご加入いただけるというその言葉が、今でも強く印象に残っています。その意味でも共済はJAにおける総合事業の原点だと思います。
―新型コロナウイルス感染症の拡大、大きな自然災害が相次いでいます。高齢化も進み、これからのJA共済の役割はますます大きくなると思いますが。
コロナ禍の状況下では、対面中心の3Q訪問活動を主体とした推進体制についてもこれまでと同じようにはいきません。電話やダイレクトメールを活用した「3Qコール」のほか、インターネット等を駆使した推進のあり方をこれまで以上に追求し、最善の体制で臨みたいと思います。一方、毎年のように大きな自然災害が全国で発生しています。東日本大震災のときにJA共済は建物更生共済を中心に1兆円近い共済金をお支払いし、組合員・利用者の皆さまにお役立ていただいたことを、私は今でも誇りに思っています。これまで以上にJA共済への理解を広げ、さらに多くの人に加入していただきたいと考えています。
2年前の7月西日本豪雨では、岡山県も大きな被害に見舞われました。特に被害が大きかったのが、私の出身地の隣町である倉敷市真備町でした。復興ボランティアで現地に入った時、被災者の方から「JA共済に加入しなかった私たちも悪いが、JAももっと加入を勧めていてくれたら」と言われたことに大変衝撃を受けました。地域の隅々までしっかり推進し、JA共済の大切さを知ってもらう。そのスタートラインに立たなければ、この事業は始まらないことを改めて痛感しました。
「歩」の心を大切に
―好きな言葉、あるいは座右の銘にされていることは。
好きな文字は「歩」です。「歩」の字は「止」と「少」からなっています。つまり「止まる」ことが「少ない」と読むことができます。一歩ずつでも、とにかく立ち止まって休むことなく、前へ歩めということです。大学時代に属した、バレーボールのコーチから言われた言葉です。
「農業を元気に! 農家を元気に! 地域を元気に!」をモットーに、これからも農協運動に全力を挙げて取り組む覚悟です。
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(3)病気や環境幅広く クリニック西日本分室 小川哲郎さん2025年9月18日
-
【石破首相退陣に思う】米増産は評価 国のテコ入れで農業守れ 参政党代表 神谷宗幣参議院議員2025年9月18日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】協同組合は生産者と消費者と国民全体を守る~農協人は原点に立ち返って踏ん張ろう2025年9月18日
-
「ひとめぼれ」3万1000円に 全農みやぎが追加払い オファーに応え集荷するため2025年9月18日
-
アケビの皮・間引き野菜・オカヒジキ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第356回2025年9月18日
-
石川佳純の卓球教室「47都道府県サンクスツアー」三重県で開催 JA全農2025年9月18日
-
西郷倉庫で25年産米入庫始まる JA鶴岡2025年9月18日
-
日本初・民間主導の再突入衛星「あおば」打ち上げ事業を支援 JA三井リース2025年9月18日
-
ドトールコーヒー監修アイスバー「ドトール キャラメルカフェラテ」新発売 協同乳業2025年9月18日
-
「らくのうプチマルシェ」28日に新宿で開催 全酪連2025年9月18日
-
埼玉県「スマート農業技術実演・展示会」参加者を募集2025年9月18日
-
「AGRI WEEK in F VILLAGE 2025」に協賛 食と農業を学ぶ秋の祭典 クボタ2025年9月18日
-
農家向け生成AI活用支援サービス「農業AI顧問」提供開始 農情人2025年9月18日
-
段ボール、堆肥、苗で不耕起栽培「ノーディグ菜園」を普及 日本ノーディグ協会2025年9月18日
-
深作農園「日本でいちばん大切にしたい会社」で「審査委員会特別賞」受賞2025年9月18日
-
果実のフードロス削減と農家支援「キリン 氷結mottainai キウイのたまご」セブン‐イレブン限定で新発売2025年9月18日
-
グローバル・インフラ・マネジメントからシリーズB資金調達 AGRIST2025年9月18日
-
利用者が講師に オンラインで「手前みそお披露目会」開催 パルシステム東京2025年9月18日
-
福島県に「コメリハード&グリーン船引店」10月1日に新規開店2025年9月18日
-
鳥インフル 米モンタナ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年9月18日