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【インタビュー】農林中央金庫 内海智江常務執行役員事務部門長 多様な人材を活かす職場づくりへ2021年5月11日

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農林中央金庫は4月1日からの新役員体制で初の女性常務執行役員を登用した。女性職員が多く働く事務部門の担当役員に就任した内海智江常務執行役員に抱負などを聞いた。

内海智江常務執行役員事務部門長内海智江常務執行役員事務部門長

--最初に入庫からの経歴をお聞かせいただけますか。

大学卒業後は日本長期信用銀行に入行し、10年ほど働いていました。当時、長銀の経営が厳しくなった時期で、私は有価証券の決済を担当する部門にいて金融機関に出向き、株券を担保にしてお金を借りるという仕事をしていました。

いろいろな金融機関に足を運びましたが、そのなかの1つが農林中央金庫でした。当時、長銀には「国民の税金を使うのか」と非難の嵐の毎日で、私が出向く取引先でも、「どうせ潰れる銀行だ」と聞こえよがしに言ってくる方がたくさんいました。

しかし、農林中央金庫の方だけは、それまでどおり真摯に対応していただきました。単に事務的に株券を確認していただき、預かってもらい、よろしくお願いします、とやりとりをするだけではありますが、そんななかにも対応や動作に、人柄が現われると思います。本当に誠実にきちんと対応してくださる方々で、こういった方々がいるところで働きたいと思い、中途採用で今に至っています。

入庫して最初の12年間は資金為替部でスワップやデリバティブのドキュメンテーション業務を担当していました。国内外の取引先と交渉を行い、英文の取引契約書を作成する仕事です。

その後、秘書室に異動になりました。それまでは、系統組織の皆様と直接お会いする機会がほとんどありませんでしたので、その異動の内示があったとき、当時の部長は私を呼び出し、農協の系統組織についてイチからレクチャーをしてくれたことを覚えています。

異動して改めて思ったのは、経営管理委員の皆様は本当に金庫のことを真剣に考えてご意見を下さるということ、そして金庫は系統の皆様に支えられている組織であり、使命がはっきりしている点も含めて、ほかの金融機関にはない組織だということでした。

--印象に残っていることはありますか?

ある県の特産品を紹介するイベントを金庫が開催したときに、その地元の会長さんからお話しを聞く機会がありました。これはこういう農家がこんな工夫をした、だからおいしいんだ、といったことを細かく教えて下さり、このように普段から農業そのものや農家の方々と接している会長さんたちがJAグループを支えているということを実感しましたし、だからこそ農業や農家のことを他に伝えることもできるんだと思いました。

--女性で初めての常務執行役員就任です。改めて抱負を聞かせてください。

事務部門担当の常務執行役員は金庫では初めてのことであり、女性が選任されたのも初めてということです。また、今回専務職がなくなり、全役員が同じ立場で理事長と業務について相談ができるという機動的な体制になりました。

事務部門というのはコロナ禍でもなかなかテレワークがしづらい業務ですし、かつ女性が主体の職場で、それこそお子さんを抱えていたり、介護をしていたりなど、いろいろな職員がいます。私がこうした部門担当の役員に就任したということは、多様な人材や立場の方の意見を聞きながら、より良い組織にしていこうということだろうと思います。機動的な役員体制にしたのもそのためだと考えています。それをしっかりふまえて、みんなの声を聞いて、誰もが安心して働ける職場を作っていきたいと思っています。
例えば、女性はどうしても育児や介護などの中心になりやすいですから、そのようななかで女性が働き続けるにはどういう環境や仕組みをつくればいいのか、ということです。

私自身も小さい子ども2人を連れ、台風の日に保育園に、しかも布団も持っていかなければならないということがありました。布団を2つ抱えて子どもの手を引いて。今となってはあんなこともあったなあ、と思いますが、その最中は本当につらかったものです。

そういう人が今もいますから、そのときは大変でも、一定期間が経てば本当に戦力になれるということをご本人たちにも知ってほしいですし、周りの職員にも、今はこの人はこういう状況だから、こういう働き方で工夫しようよ、そして、いつかここに戻ってきて戦力になってもらおう、と長い目でライフサイクルを見ることができないかということです。

私もいろいろな人に助けていただいたお蔭で、今まで働けたと思いますし、もっと女性職員が長く働けるような場所にできたらと考えています。

--JAなどの農業現場の女性登用についてもメッセージをお願いします。

とくに農協組織は女性部の活動が活発であるなど、主役は女性だなというくらいの感覚で受け止めています。実際の生活に密着している人のほうが、より効果的で、役立つ意見が言えるということもあると思います。もっと女性が様々な組織の経営に携わっていけるといいと思います。

(うつみ・ともえ)
1968年6月生まれ。神奈川県出身。リッチモンド大経営学部卒。2000年農林中央金庫入庫。18年本店業務部長。20年農中ビジネスサポート(株)取締役を経て、同年6月より同代表取締役社長、21年4月より農林中央金庫常務執行役員(いずれも現職)。お子さんは大学生の長女と高校生の長男。

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