経常利益881億円を確保 農林中金決算2013年5月24日
農林中央金庫は5月23日、2012年度決算を発表した。目標利益水準を確保したうえで、自己資本比率も高水準を維持している。
◆目標水準を確保
経常収益は前期比377億円増の9708億円となった。このうち資金運用収益は同400億円増の6347億円。円安による配当増などが影響した。
一方、経常費用は同180億円増えたが8827億円で、その結果、経常利益は881億円となった。前期比で196億円増えた。農林中金は通期目標を500?1000億円としており、目標利益水準を確保した。
また、純利益は1068億円と同451億円の増加。税務上の調整があったことから純利益が経常利益を上回る決算結果となった。
自己資本比率は今期から国際統一基準の「バーゼル?基準」が導入された。このうち「普通出資等Tier1比率(中核的自己資本)」は15.98%、「Tier1比率」は16.10%で「総自己資本比率」は23.77%と高水準を維持した。バーゼル?基準では有価証券の評価差額などを自己資本に繰り入れないといった変更がある。
(写真)
会見に臨む河野良雄代表理事理事長(左)と高橋則広専務理事
◆利益目標を上方修正
総資産はJA貯金の伸びや有価証券の評価額増などの影響で前期より9兆1000億円ほど増えて80兆8610億円となった。また、有価証券の評価損益は1兆2366億円改善し、1兆7409億円の評価益となった。
農林中金はこの日の経営管理委員会で約500億円の見込みとなる剰余金について普通出資に対して6%配当する方針を決めた。6月26日の通常総代会で正式に決める。
河野良雄理事長は、「内外の環境は本格的な景気回復には不透明感が残ることに加え、かつてない金融緩和策のなかで金融市場の振れが大変大きくなることが想定される。適切なリスク管理のもとで目標経常利益水準を従来の500?1000億円から、1000億円前後に引き上げて収益力の強化を図っていく」と述べた。
再重要課題と位置づけている震災復興対応の取り組みについては、復興ローン、復興ファンドをはじめとした金融面での対応と、今年度からの新たな取り組みとして、被災地で稲作を再開する被災者に費用助成を実施していることなどにも触れ、「2013年は創立90周年を迎える節目の年。新しい中期経営計画のもとで、農林水産業と食の発展や地域の活性化に貢献する取り組みに率先して取り組んでいきたい」と述べた。
◆実現性ある政策を
アベノミクスによる現在の市場環境について河野理事長は「異次元の金融緩和を始めてからの水準からいえばかなり株も上がり、円も安くなり、金利もそれほど上昇していないという状況。当初の政策意図にかなっているのではないか」と評価。また、4月末にヨーロッパを訪問した際には、日本に対して世界経済を引っ張る牽引役になってほしいという希望があったとして、「金融政策だけではなく次の新しい財政政策、成長産業の展開に火が点けば日本経済の20年間の低迷に少しは光明が見えて上昇できるのではないか」との見通しを示した。
その成長戦略に政府は農業を位置づけ「所得倍増目標」を掲げて検討を始めていることについては、「前向きな政策が出されると思う。系統全体もJAを中心にそれにコミットして成長産業になれるような努力をしていかなければならないと思っている。ぜひ実現性のある政策に持っていけるようにわれわれも協力していきたいと思っている」と話した。
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