地方の需要が消失 マイナス金利の弊害指摘 協同金融研で鳥畑教授2016年5月24日
協同金融研究会(代表=齊藤正・駒沢大学教授)は5月20日、都内で研究会を開き、マイナス金利政策による地域経済と生活への影響をテーマに意見交換した。研究会では静岡大学の鳥畑与一教授が報告。「地域循環のシステムが破壊され、需要が消失している」と、マイナス金利の危うさを指摘した。
鳥畑教授は、マイナス金利政策の有効性をみる場合の視点として、「不況の原因は、供給サイドと需要サイドのどちらにあるのかという疑問に帰着する」と指摘。
供給サイドの制約では、企業側の人件費や税、資金調達などのコスト、技術力や生産性などの収益力がある。つまりこうした制約をクリアできないため新たな投資ができないというわけだ。一方、需要サイドでは少子高齢化や格差の拡大による需要不足がある。
マイナス金利政策は国債利回りのマイナス化を利用して、赤字国債による大規模な需要喚起策で、まずはインフレ状態に誘導することにある。ただ日本には「その余力があるのか、リスクは過小評価できるのか」と同教授は言う。その判断材料に欧州のマイナス金利施策を挙げ、「ユーロ圏のデフレ傾向は継続し、銀行融資も伸び悩んでいる.。効果なしが共通認識になっている」と指摘した。
そのうえで、マイナス金利が地域金融機関や地域の中小零細企業や個人に与える影響について、(1)地域限定で預金・貸出業務中心の地域金融機関は、利ざや縮小の影響が大きい、(2)貯貸率の低い金融機関ほど影響が大きく、証券運用の収益が悪化する、(3)家計部門全体として利子収入が大きく減少する、(4)中小零細企業への安定的な資金供給が困難になる、などの問題点を挙げる。
最後に同教授は、新自由主義に基づく改革は「1%に富が集中する経済システムで、集中した富は結局、タックスヘイブンやファンドとして国際的な短期利益追求や投機に向かう。巨大な需要不足を財政金融政策で解決することはできない」と述べた。
(写真)マイナス金利の有効性について話す鳥畑教授
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