逆ザヤ解消でさらに経営が安定 JA共済連通常総代会2016年7月29日
JA共済連は、7月28日に都内で第40回通常総代会を開催し、27年度の事業報告および剰余金処分案を承認した。
総代会の開会にあたって市村幸太郎経営委員会会長は、「農業者の所得増大や地域の活性化に貢献していくために、第27回JA全国大会決議および今次3か年計画で掲げた『共済事業実施体制の強化』『地域活性化・農業経営に貢献する取り組みの強化』『連合会改革の実践と永続的な健全性・信頼性の確保』を柱とした施策の着実な実践に向けて、全役職員が一丸となって職務に邁進する」と語り、さらに、連合会改革について「共同元受方式を堅持し、県本部のJAに対する指導・サポート機能の強化を進めるとともに、連合会全体の効率化に向けた検討を進めて」と語った。
◆全JAがエリア戦略を導入
27年度は、(1)地域密着の事業推進、(2)契約者・利用者満足度の向上、(3)農協共済審議会答申の具体化に向けた連合会改革の実行、(4)地域の活性化・農業者の所得増大に向けた共済事業における取組みの検討、の4つを柱に事業を展開した。
地域密着の事業推進では、「すべての導入対象JAにエリア戦略が導入された」こと。3Q訪問活動によって「加入内容の確認」「世帯内の保障点検」を行う「あんしんチェック」にタブレット端末を活用して取り組み、実施世帯数は前年度比100.5%の515万4209世帯となった。また、ニューパートナー獲得実績も51万1677人と前年度を10.5%上回る実績となった。
契約者・利用者満足度向上では、大規模災害発生時の損害調査・支払査定態勢を構築するため、県別の損害耐性整備計画に取り組み、JAの自然災害損害調査員が4万8360人、連合会総合職は取得率100%の4025人全員が取得している。
◆共済金支払総額3兆4233億円
27年度の新規契約高は、生命総合共済は、契約件数が186万3000件(前年度比97.4%)、保障共済金額が7兆4495億円(同85.3%)だった。このうち、医療共済・がん共済・定期医療共済の医療系共済の契約件数は70万7000件、保障共済金額は3002億円となっている。
建物更生共済契約件数は89万6000件で、保障共済金額は10兆9124億円となり、両者を合わせた保障共済金額は18兆3620億円(同91.8%)となった。
自動車共済の契約件数は838万9000件(同100.3%)、共済掛金(連合会が収納した共済掛金)は2830億円(同99.5%)となり、競合が激しいなかよく健闘しているといえる。
一方、共済金の支払は、事故共済金が9121億円(同94.4%)、満期共済金が2兆5111億円(同95.8%)、総額3兆4233億円(同95.8%)となっている。こうした共済金の支払が組合員・利用者の生活保障の一助となっている。
◆基礎利益が1753億円増加
27年度決算の大きな特徴の一つは、共済事業本来の期間損益を示す指標である「基礎利益」のうち、長年継続していた「利差損」(逆ザヤ)が、26年度決算で実施した責任準備金の特別積立効果などにより解消し「純ザヤ」となり、さらに安定的な経営を行える条件が整ったことだ。
この結果、基礎利益は、「費差益」1356億円(前年度差▲78億円)、「利差益」326億円(同+1370億円)、「危険差益」5483億円(同+467億円)、合計7166億円(同+1753億円)となった。
こうした状況の中で決算にあたっては、東日本大震災の影響でこれまで見送られてきた建物更生共済「むたき」の危険差割戻しを5年ぶりに設定するなど、契約者割戻しの引上げを実施。会員への出資配当金を前年同率の1.80%で実施するとともに、事業分量配当金を建物更生共済の利差損改善などを踏まえ、前年度より15億円増額して配当する。
さらに、自動車共済の危険差収支が改善することから48億円(前年度30億円)の臨時配当も実施する。
なお、損益の状況は、直接事業収益が5兆9499億円(前年度比107.6%)、財産運用収益1兆1607億円(同104.6%)となった。一方、直接事業費用は4兆7931億円(同96.1%)で、経常利益は2766億円(同114.6%)となり、当期剰余金は1304億円(同98.5%)となった。
総資産は55兆8375億円(同103.1%)、運用資産は53兆6233億円(同102.4%)となっている。また、将来生じうる共済金等の支払に備えて積み立てている責任準備金は49兆4823億円(同103.6%)となった。
なお、JA共済連はJAグループの農業振興や地域貢献活動を支援する「地域・農業活性化積立金」を設置することにした(詳細は別掲)。
(写真)JA共済連通常総代会、挨拶する市村会長
(関連記事)
・農業振興・地域貢献活動支援ー積立金 JA共済連 (16.07.29)
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