事業間連携態勢構築で 担い手対応力を強化 第12回JAバンク担い手金融リーダー全国大会2017年1月26日
JAバンク担い手金融リーダー全国大会が、1月23日、24日の両日、千葉県浦安市で開催された。
12回目となる今年の大会は、「大規模化する担い手への対応力強化に向けた事業間連携態勢の構築・強化」をメインテーマに開催された。
大会には、JAの信用事業の中核となる担い手金融リーダーや信連職員に加えて、地域の担い手に出向き地域農業振興に大きな役割を果たしているJAのTACが昨年の14名から倍増の27名など約250名が参加した。
大会では、農林中金の山田秀顕常務理事が主催者あいさつをし、農水省経営局の山口靖金融調整課長とJA全中の馬場利彦参事が来賓として挨拶した。そのなかで馬場参事は、「担い手の要望にJAグループの総合力で応えていくことが大事だ」と強調した。
◆TACと金融リーダーの連携を
事業間連携の取組み事例として、JA全農営農販売企画部の村田雅彦次長が、TACの活動について、またJA利根沼田金融共済事業本部金融共済部の生方邦彦推進課長代理が同JAにおける営農・指導販売部、金融共済部、支店間の事業連携を先進事例として報告した。
村田次長は、全国のTACの取組み状況を紹介するとともに、昨年11月のTACパワーアップ大会の分科会で協議された「金融部門との連携促進」で提起された課題とその原因および解決策について次のように報告した。
それによると「困っていること(課題)」としては「部門間連携に対する意識が薄い」、その原因は「部門共通の目標が明確に設定されていない」ことであり、解決策としては「渉外担当者同士の活動目標を明確化し、定期的に確認する」ことがまずあげられた。
次いで以下のような例を指摘した。▽(課題)「農業資金情報をTACに伝えきれていない」、(原因)「営農部門に金融商品の勉強会をしていない」、(解決策)「渉外担当者の交流機会を設ける」。
▽(課題)「部門間での情報を共有したいが進展がない」、(原因)「TACシステムの機能が十分に使えていない」、(解決策)「総合事業としての意識を持ち、情報共有を行う」。
▽(課題)「何が必要な情報なのかわからない」、(原因)「コミュニケーション不足・知識不足」、(解決策)「統一された情報連絡シートの作成」。
◆「事業継承」を契機に
そして「担い手金融リーダー、TACがお互いに解決策を実行し、担い手の課題解決力を強化していくことが重要」と強調し、今後のTACと担い手金融リーダーとの連携具体策として「事業承継」をあげた。
これは、いま農業を担っている親世代から「事業継承でしっかりと後継者をサポートできれば、第二世代・第三世代とJAグループとの強固な信頼関係が構築できる」からだ。実際に、経営状況や資産状況などを含めて「事業承継」が必要だと思っていても、家族間だけでは話がしにくかったりして進んでいないのが現状だといえる。そこにTACや担い手金融リーダーなどJA職員が定期的・継続的に訪問し、継続的な話し合いができるようにしようというものだ。
これを促進するために全農はJA青年部や4Hクラブの協力を得て「事業承継ブック」を作成し、全国のJAで取りくむよう呼びかけている。
◆営農と金融担当者でコンニャク生産者を訪問
JA利根沼田の生方課長代理は、同JAは全国一のコンニャク生産県である群馬県内の約4割を占める主産地であるが、JAの取扱量は金額ベースで19%にとどまっていると課題を指摘。JAへの出荷を促進するために、管内全コンニャク生産者・約275戸を対象に、営農系1名・金融系1名の2人1組で20チームを編成し、出荷シーズン前後に訪問活動に取組むことで、生産者の高齢化や小規模農家が廃業するなかでも、JA取扱量が26年の3738㌧から28年には3870㌧に順調に増加してきた、と報告した。
同様に、JAの取扱額が管内生産額の0.9%しかない果樹についても、収穫時期の集金や両替サービスなどと併せて農業関連資材の取扱量増加や農業資金などをPRするほか、農機部門(オートパル)で開催する農機展示会に支店金融担当者が常駐し、農業資金の借入相談にもスピーディーに対応するような取り組みも実施している。
こうした活動で「営農・指導販売部と金融共済部や各支店職員の同行訪問で相互補完が可能となり、効率的な訪問活動を展開でき、両部門の連携が強化され、生産者との関係強化に一定程度の効果があった。継続的な取組みにより、JA事業のさらなる利用拡大も期待できる」と語った。
◆30年問題では全農がリーダーシップ発揮を
このほか、農林中金の山田勝己営業企画部長が、金融業界を含めた情勢を報告。(有)フジタファームの藤田毅社長が「日本農業の方向 平成30年問題とその後」と題して基調講演をした。また、イオンアグリ創造(株)の福永庸明社長も講演した。
藤田社長は自身が営農している酪農について、指定団体が生乳の96%のシェアがあることで、需給調整ができ、乳価が少しづつだが上がり生産に「没頭でき、売れている、ありがたい世界だ」としたうえで、子牛価格の高騰や世界の穀物需給を反映した飼料価格の上昇に危惧を表明した。
さらに30年産米からの生産調整の見直しなどで、今後の農業環境がどうなるか分からないが、「全農がどれだけリーダーシップを取れるのかがカギ」だとし、コスト低減のためには「JAグループの力を発揮してシェアをアップする」ことだとも強調した。
大会は、24日も含めて参加者がグループに分かれ「事業間連携強化」などについて討議した。
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