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農林中金が経営者フォーラム 総合事業の強み生かす先進事例を共有2023年11月22日

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農林中金は17日、東京都内でJAバンク経営者フォーラムを開いた。全国のJAトップらが参集し、農業・くらし・地域に関わる総合事業の強みを生かした優良事例を学び、今後の事業展開に活用することを確認した。

約70のJAトップ一堂に

あいさつする奥理事長あいさつする奥理事長

同フォーラムは、JAバンク全国大会の後継の位置づけで、トップ経営者層が一堂に会し実践的に地域の課題解決のヒントを探ろうと開いた。昨年に続き第2回となるが、約70JAが参集し優良事例を学ぶとともに、活発な意見交換も実施した。

フォーラム運営にも工夫を凝らした。まず大型スクリーンで先進事例の実践例のビデオを関係者のインタビューも交え放映。そのうえで当該JAの代表者がコメントを述べ、今後の課題や展望を含め司会者との質疑で内容を解説していく。分かりやすい演出で参加者の理解が深まった。

地域に欠かせぬ存在感を

冒頭、農林中金の奥和登理事長がフォーラムの狙いを「農業・くらし・地域の取り組み事例を共有し、JAならではの価値をいかに地域に届けるのか。人と人との助け合い、コミュニティー、互助を特徴とする、なくてはならないJAの存在感を確固たるものにしたい。フォーラムを通じ、地域ごとの課題を考えるヒントが提供できれば幸いだ」と強調した。

現在、四半世紀ぶりの食料・農業・農村基本法見直しなど農政は大転換期を迎えている。食料安全保障構築論議の盛り上がり、持続的な地域農業確立が問われる。人口減少が本格化する中で地域をいかに守るのか。奥理事長は「転換期の中でサービス事業体としてのJAの役割発揮の時でもある。地域に寄り添い、このフォーラムを通じ地域の課題解決のきっかけをつくりたい」とも述べた。

ワンストップで農業支援 JA北越後

「ワンストップ窓口」設置による園芸振興で事例発表する新潟・JA北越後の齋藤松郎会長「ワンストップ窓口」設置による園芸振興で事例発表する新潟・JA北越後の齋藤松郎会長

営農経済、信用の相互連携で総合事業を生かした農業振興の優良事例として登壇した新潟・JA北越後の齋藤松郎経営管理委員会会長は行政など関係者が一体となった「農業支援ワンストップ窓口」が新規就農の拠り所になっているとした。

同JA管内は全国有数の米産地だが、経営多角化で園芸振興にも力を入れる。県やJAが掲げる「1億円園芸産地」へ「ワンストップ窓口」を活用した新規就農育成を着実に進めている。

「ワンストップ窓口」は、相談に訪れた農業者の利便性向上とともに、行政、農業団体など関係者の情報共有の場としても機能を果たす。営農部門と金融部門が連携し新規就農者をサポート。農業融資相談員を県内JAで最初に設け、営農指導とともに金融面の支援もパッケージでできる体制が整う。

齋藤会長は「技術、資金、仲間づくりの支援を通じ、担い手がJAと一緒に地域農業振興へ歩んでもらいたい」と強調した。

資産相談で元気な都市農業 JAさがみ

専門部署設置で都市部の資産相談機能強化を事例発表する神奈川・JAさがみの西山國正組合長専門部署設置で都市部の資産相談機能強化を事例発表する神奈川・JAさがみの西山國正組合長

もう一つの優良事例は都市農業地帯である神奈川・JAさがみの西山國正組合長が報告した。

2022年4月、組合員や利用者の資産活用をサポートする専門部署「資産相談課」を設置した。資産継承をはじめ各分野の専門知識を身につけた、いわば資産管理の「スペシャリスト」の職員12人を配置し、JAへの信頼獲得と満足度アップへつなげている。

西山組合長は「一方で農業、農地を守りながら、都市近郊のJAとして地域とくらしの応援団の役割をしっかり果たしていく」と、地域の核として顧客本位を念頭に置いたJAの存在価値を説いた。また「JAは農家、組合員の何でも屋。気軽に相談に応じることが信頼醸成につながる。一人一人のライフプランに沿った対応に力を入れていく」と、「資産相談課」の役割に期待を込めた。

顧客満足度調査どう生かす

JAバンクは2022年度から利用者満足度調査(CS)を実施している。調査依頼先数140万人、うち回答数約12万人と、全国的に見ても大規模な調査を進めてきた。

問題はCS調査をどう分析し、今後の改善、事業展開に生かすのかだ。特に期待と課題の乖離(かいり)が目立つ項目として、財務分析、投資計画など経営に関する相談・アドバイスが挙げられ、対応が求められている。

そこで、基調講演は「経営におけるCS調査の活用」をテーマに、日本能率協会総合研究所の田中理恵主幹研究員が、活用事例、課題などを説明した。日本能率協会は国内で初めてCS調査をしたことで知られる。

田中氏は「顧客にとっての現実は、業界のプロの認識と違う」と、商品を利用する側と提供する側の考えのすれ違いを指摘。CS調査を活用した業務改革の成功のカギは「現場感覚のある原因分析を得た対応だ」「CS調査結果を組織内部で分析することで真のCS課題が見つかる」とした。

JAと関連付け顧客・利用者、JA本店、支店と三者はそれぞれ視点が違うとして、全体が見えるJA役員の役割が大きいと指摘。CS調査を踏まえた顧客起点で、トップの強い意志と職員へのメッセージ、職員からの自発的なアイデアを取り入れるといった「トップダウンとボトムアップの双方向の対応が欠かせない」と結論づけた。

冊子で農業・くらし・地域優良事例網羅

同フォーラムの提供した冊子では、優良事例2JAの紹介とともに、末尾に全国JA事例紹介を網羅した。農業38、くらし20、地域17事例の概略が一目でわかる。・JAさがみの西山國正組合長

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