地域、くらし、漁業の優れた実例を共有 農林中金が第3回経営フォーラム2024年12月2日
農林中金は11月29日、東京都内で第3回JAバンク経営者フォーラムを開き、JA、JFの強みを生かした三つの優良実践事例を発表した。フォーラムには全国からJA関係者ら約150人が参加し、各地のくらしと地域、そして漁業の経験を共有した。
経営フォーラムの参加者
主催者を代表して農林中金の奥和登理事長が「もう一段の財務体質改善に取り組み、来年からの次期中期戦略では、農業、くらし、地域の多様なニーズに対して総合事業性を生かした金融仲介機能を果たしていく。課題は組合員、事業者との中長期的つながりを作る点と総合事業体としての経営戦略を高度化すること。事例を共有することでJAグループが活性化する役割を発揮したい」とあいさつした。
奥和登農林中金理事長
来賓の山野徹JA全中会長は「基本法は改定されたが、取り巻く環境は厳しさは加速している。経営基盤の対応強化は待ったなし。JAの第30回全国大会では自己改革に総合事業を通じたつながり作り、組合員との関係強化が求められ、実践するうえで協同の力が求められている」とあいさつした。
山野徹JA全中会長
来賓が紹介されたのち、農林中金の秋吉亮理事兼常務執行役員が全国のJAから69の優良事例の推薦があったことを紹介し「取り巻く情勢は悲観的に見えても、農業と地域を支えるJAグループが主役となれるチャンス。(農林中金が)他の金融機関とは違い、総合力で優位性を発揮できる、逆境を切り開く事例」とフォーラムの目的を説明した。
優良実例はビデオ映像とJA・JFへの質疑応答で紹介された。
優良実例①:「くらし」の分野(JA信州諏訪)
窓口担当者を始点としたLPS活動(窓口キーマン活動)
小平淳JA信州諏訪代表理事組合長
「くらし」の事例では、長野県のJA信州諏訪による「窓口担当者を始点としたLPS活動(窓口キーマン活動)」が紹介された。2020年以降、店舗合理化の一方で「投信窓販」を柱に据え、JA独自の養成研修の卒業生を「窓口キーマン」(20人)とし、ライフサプランサポート活動を行っている。これにより多くの利用者が投資信託に取り組み①「窓口担当者」を始点とした支社推進の活性化②「窓口」を事務の場から推進の場へと意識転換、などの成果が出ている。
小平淳代表理事組合長はこうした活動で投信残高が10倍に増え「JAを利用する意義は与えられるものではなく、自ら創造する。自分で考え、動くことで他部門の範となり、より能動的なJAになれる可能性がある」と語った。
優良事例②:「地域」の分野(JA庄内みどり)
「地域経済活性化の担い手との連携による地域振興プロジェクト」
田村久義JA庄内みどり代表理事組合長
地域の事例では、山形県のJA庄内みどり「地域経済活性化の担い手との連携による地域振興プロジェクト」が紹介された。同プロジェクトでは地域の課題を地域経済活性化の担い手(行政、JA、民間企業、生産者)が連携し、自然資本の持続可能性や「いきがい」、文化、健康などの維持促進を目指している。地場の有力養豚企業を中心に循環型農業を構築したり、庄内自然エネルギー株式会社の売電益をもとに基金を設立。都市部との移住交流を目的とした移住交流拠点施設も作っている。
田村久義代表理事組合長は「食と農、エネルギーの循環によるローカルSDGsを目指している。都会からの移住者が相互補助の支援で生き生きとされ、農業やJAの雇用にもつながっている」と成果を説明した。
優良実例③:「漁業」の分野(JF鵡川)
「漁協直販事業強化による漁業者所得向上・組合収益確保の取り組み」
小定雅之JF鵡川専務理事
漁業の事例では、北海道のJF鵡川の「漁協直販事業強化による漁業者所得向上・組合収益確保の取り組み」が紹介された。同JFでは高齢化に伴う仲買人減少などが魚価低迷の課題となり、仲買人の買取契約価格に一定の上乗せをして買い取る直販事業を始めた。直営の直売所「いちうろこ」を設立し地元消費者に販売。コロナ禍ではバーチャル直売所を立ち上げた。職員9人の少数でも営業職員2人を新たに配置。月次検討会で営業活動のPDCAを重ね、北海道信漁連と連携した漁業者所得向上、組合収益確保に取り組んでいる。
小定雅之専務理事は「SNSフォロワーは3万人で認知度が向上。バーチャル店による潜在的消費者を広げる役割がある。水産物を所得に変える機能を高めることが求められ、今後は自ら販売する力量を高めることが今後の漁協の姿」と強調した。
こうした実例紹介を受け、金融庁で「顧客本位の業務運営」の枠組みを作った、アクセンチュアの信森毅博プリンシパル・ディレクターが「体の健康・心の健康・お金の健康の三つの健康が求められている。金融庁時代に、JAに対して顧客に向き合うことの重要性を指摘し、間違っていなかった。JAやJFのファンだが、PRの不足がもったいない。現場の知恵を生かし、トライアンドエラーで挑戦を続け、失敗にめげずに新しいことにチャレンジしてほしい」とアドバイスを送った。
基調講演
よりよい組織づくりが、よりよい人材をつくる
青山学院大陸上競技部長距離ブロック監督 原晋さん
原晋青山学院大陸上競技部長距離ブロック監督
こうした挑戦を続けていくためには、人材育成とともに、それを支える組織を確立し、維持し続けることが不可欠だ。そこで、基調講演では青山学院大教授で陸上競技部長距離ブロック監督の原晋さんが「よりよい組織づくりが、よりよい人材をつくる」をテーマに講演した。
20年の監督経験を振り返り「組織力強化に注力した原メソッドの一丁目一番地は"理念"」と強調。ティーチングからコーチングへ、選手育成とそれを支える組織づくりのステージを5つに分け「チャレンジ型の運営組織に挑戦し、理念を共有し異なる価値観を認め合い、各々がリーダーマインドを持ち、高みを目指してきた」ことが、箱根駅伝での好成績にも結実していることを示した。
最後に、JAバンク代表者全国会議の寺下三郎議長が三つの優良事例を振り返り「地域に根差した協同組合、総合事業だからこその取り組みであり、多岐にわたる接点を作ることができる強みが発揮できると確信した」と閉会のあいさつを述べた。
寺下三郎JAバンク代表者全国会議議長
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