金融共済:JA共済優績表彰2015
協同組合の基本守り 地域に合った実践活動を2015年5月14日
【インタビュー】市村幸太郎・JA共済連経営管理委員会会長
・「ふれあい」のなかでニーズを知る
・暮らしを支えるという気持ちが大事
・感覚で覚えたことは絶対に忘れない
今年もJA共済事業で優秀な実績を残してきたJAを表彰する「平成26年度JA共済優績組合表彰」の日がやってきた。この1年間を振り返りながら、JA共済事業そしてJA運動の課題やこれからのあり方などについて、市村幸太郎JA共済連会長にお話しいただいた。聞き手は、石田正昭龍谷大学教授にお願いした。
◆「ふれあい」のなかでニーズを知る
――JA共済優績組合表彰の大賞に4JAが選ばれましたが、この4JAへのメッセージを。
最近の厳しい環境の中では、しかも所得が目減りしている中で、組合員・利用者の皆さまに最良の保障とサービスを提供するために、JAの経営層から職員の皆さんまで目的を共有化して、大変なご苦労をされて取り組んでこられた結果だと思います。それは簡単に「おめでとう」という言葉で表すことはできませんが、受賞JAの組合長をはじめ役職員の皆さんのご苦労とその成果に敬意をはらうと同時に、今後もぜひ連続受賞を続けて欲しいと思います。
――26年度の全国推進目標も4年連続で達成していますが、これも素晴らしいことですね。
JAの事業の中で、共済事業は「ありがとう」とか「お世話になりました」という一言によって、契約者とJA職員とが強く結びつく事業です。その言葉でJA職員はさらに「がんばろう」というファイトがわいてきて、それがJAという協同組合の職員としての使命感につながっていきます。
このように、使命感に目覚めた職員はモチベーションが向上しどんどん伸びていきます。
(写真)市村幸太郎・JA共済連経営管理委員会会長
――JA共済の魅力をさらに地域の方にアピールしていくにはどうすれば良いでしょうか。
農家が土地持ち非農家に、農村地帯が新興住宅地に移り変わっていくという環境変化の中で、JA共済では、「3Q訪問活動」や「エリア戦略」を策定し展開しています。新興住宅地などの新しい人たちを訪問するときは、様々なふれあい活動を行うことで接点をつくりますが、その時に共済だけの話ではなく、「家庭菜園でもやってみませんか。道具なら用意しますよ」といって、いろいろな話をする。そういう「ふれあい」のなかで家庭の事情を知り、ニーズがどこにあり、どういう提案ができるのかを考える。そういう心の通う活動で結ばれていくことが大事です。
JAグループでは3年に1回全国大会を開催し、進むべき方向を決議しています。その方針とともに協同組合の基本精神は、北海道から沖縄まで共有しなければいけませんが、具体的な実践は北海道は北海道の、沖縄は沖縄の地域に合った活動を実践することが大事だと考えます。全国のJAすべてが画一的な活動をしていくには無理があります。
◆暮らしを支えるという気持ちが大事
――今回の農協改革についてはどうお考えですか。
私は、JAの魂は絶対に変わってはいけないと考えています。しかし、60年もの間何も変えずに成功した例はないので、運用面では変えるべきところは変える。つまり、魂の部分・真髄の部分は変えずに、これからの少子高齢化社会のなかで日本の地方をどう維持していくのかという観点に立って考えていくことが重要です。
――総合事業を行い地域に役立ち、信頼されるJAになるために、具体的にどうするのかが問われていると思いますが…
JAにも反省すべき点はあります。
経営的にみれば、一般の企業もそうですが、事業利益を出して自己資本を増やす。そのことを多くのJAが目指してきた点は否めません。それは、経営上は悪いことではありませんが、それが過度になり過ぎると、効率の悪いものを排除するようになってしまいます。排除することは、イコール組合員の利便性をなくすことでもあったわけです。
その反省に立って、貯金や購買の移動バスを運行したり、中山間地の高齢者を対象に職員が定期的に訪問するといった取組みを行なうJAが多くなっています。私の地元のJAでは、高齢者への訪問などの取組みを始めたところ、町役場から「見守り協定」を結んでほしいという要請があり、いくつかの町と協定するに至りました。
(写真)石田正昭・龍谷大学農学部教授
――単純に推進だけにまわればいいのではなく、そういうコミュニケーション力を持つことが、協同組合の職員として必要ですね。
JAへの理解・協力の度合いは利用高の多寡だけで決まるものではありません。夫婦二人で15万円の年金しかないのに5万円も貯金してくれることがどういうことか、その重みをJA職員は感じ取らなければなりません。
事業推進目標を達成することだけを目指すのではなく、その人の暮らしを支えるという気持ちで優しく接していけば自ずと成果はついてきますし、JA離れも生じにくくなります。
JA共済では、3Q訪問活動を通じた「あんしんチェック」の実施等により、きめ細やかな推進活動をおこなっています。
(写真)石田正昭・龍谷大学農学部教授
◆感覚で覚えたことは絶対に忘れない
――今のJAやその役職員には、どのようなことが求められているとお考えですか。
JAの規模の大小に関係なく、PDCAサイクルを回しながら、計画と実践状況およびその取組み結果のギャップ分析をきちんとして、そのギャップをいかに改善するかをみんなで共有する風土をつくりあげていけば、職員を育てるOJTになると私は考えています。
また、最近は「絆」や「人間力」という言葉を安易に使う風潮がありますが、この言葉がどういう意味なのか感覚的に分かっている人は多くはないと思います。理屈だけで覚えたことはすぐに忘れてしまいますが、感覚で覚えたことは絶対に忘れません。仕事は理性・理論だといいますが、それに加え、感覚の部分も大事なことだと考えています。
鈴虫が両方の翅を震わせることであのきれいな音を出すように、自分の心とお客様の心を互いに震わせるといった感覚をつかむことが大事です。それによって、本当の「絆」や「人間力」が育まれ、仕事もうまくいくようになるのです。
――事業だけではなく、自分たちの住んでいる地域がどう変わりつつあるのか、そこにどう関わっていくのかを考えることが必要ですね。
若い職員も含めて、地域の環境変化や地域との関わり方を考え・実行できる環境を管理職がどうつくるかです。管理職は数字の管理だけになりがちです。このようなことを再認識してもらうため、私は全共連の会長に就任後、JA共済連全国本部の部長クラス全員にJAの現場へ行って見てもらい、意見交換を通じて共済事業の現場の苦しみや悩みを感じてもらいました。
(写真)市村会長(右)とインタビュアーの石田氏
――会長に就任されて9カ月が経ちましたが、どのような感想をお持ちですか。
まだ、全体の流れなどを自分なりに理解し整理している段階です。その中で感じているのは、共済という共通した事業はあるけれども、JAの規模の大小や環境は様々であり、市場性の違いやJA職員の考え方も千差万別です。そのなかで「エリア戦略」を進めるには、市場の小さいところは目標設定もそれに合わせないといけませんが、体制面をどうするか…ということをきちんと職員全体で共有・合意形成しながら、進めていくことが大事だと考えています。
また、「農協共済審議会答申」の具体化はこれから総仕上げとなります。JAにおける事務負荷を大幅に軽減することは非常に重要ですが、システム化等で省力化・効率化する部分と、絶対に機械化してはいけない「人の心で動く部分」とを切り分けることも必要だと考えています。
組合員・利用者の皆さまとの心の通った関係があるからこそ、「やはりJA共済は必要だ」と言ってもらえるのだと確信しております。
――今日は貴重なお話をありがとうございました。
【インタビューを終えて】
◆地域を支える職員力
市村会長の話は、共済事業だけにあてはまるものではない。事業論を超えて組織論にも通じる重要な問題提起であった。JAが人間重視、組合員優先の「協同組合の優位性」を発揮する上で、JA職員の役割とその役割を果たすために必要な姿勢・資質の問題であった。
物事を論理的に考える力、これは「読む」「書く」「まとめる」「発表する」などの基礎能力から作られるが、この能力を磨くだけでは相手の心をとらえられない。思いやりを持って相手に接する“やさしい心”の涵養が何よりも大切だという。それには「聞く」「話す」のコミュニケーション能力を磨くことが重要で、自ら率先して組合員さんとの面会の場面を作り出す必要があるという。
共済・信用事業を中心に事業連ごとのCS・ES活動が盛んだが、そこには何か共通項があって然るべきで、その共通項とは組合員さんの声を「耳、目、心」を使って受け止めることではないかと思う。組合員さんの「ありがとう」という言葉で締めくくられるような面会の場面をどれだけ作り出せるか、これがJAの存在価値を決める。そんなことを教えられたインタビューであった。(石田正昭)
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