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金融共済:JA共済優績組合表彰2016

【インタビュー】くらしと営農を支えるJA共済事業めざし 市村幸太郎・JA共済連経営管理委員会会長2016年5月19日

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聞き手:太田原高昭・北海道大学名誉教授

 今年もJA共済事業で優秀な実績を残してきたJAを表彰する「平成27年度JA共済優績組合表彰」の日がやってきた。競合の激化や組合員の高齢化など厳しい環境下でも目標を達成された大賞受賞組合をはじめとする多くの組合が表彰式に列席し表彰を受ける。そしてJA共済では、4月から「地域に広げる助け合いの心~くらしと営農を支えるJA共済~」を掲げて新たな「3か年計画」がはじまっている。そこで、この3か年計画の要諦とは何かを、市村幸太郎JA共済連経営管理委員会会長にお話しいただいた。聞き手は、太田原高昭北海道大学名誉教授にお願いした。

地域で農協の存在感を高める

 太田原 初めに4月14日から熊本県を中心に大きな地震が続き、多くの方々が被害を受けておられます...。

 市村 被害を受けられた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。地震の沈静化と被害を受けられた皆さまや地域の一刻も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。JA共済連といたしましても迅速な損害調査をおこなうために各県本部や全国本部から職員を現地に派遣するなど、最大限の努力をしてまいります。


◆コツコツと毎日積み重ねていく

市村幸太郎・JA共済連経営管理委員会会長 太田原 平成27年度のJA共済の全国普及推進目標が達成されました。共済・保険市場は成熟市場といわれ、外資系も参入して大変きびしいなかで連続して目標達成できたのは、保険とは違うJA共済の魅力が理解されたからだと思いますが、いかがですか。

 市村 いまの経済はかつての高度経済成長時代とは異なっており、次代を担う30~40歳代世帯の所得もあまり増えていません。そのためもあって、かつてのような死亡保障型の共済ではなく生存保障を中心にしたものに変化してきています。一方で、少子高齢化で人口が減少し、共済・保険市場は縮小してきています。
 こうした厳しい状況のなかで目標を達成されたJAの役職員の皆さんの力は高く評価されるものだと思います。と同時に受賞JAの組合員・利用者の心の中には、「JAは色々言われることもあるけれど、やはり地域にとってなくてはならない存在だ」といった、長年にわたって培われてきた信頼関係が、脈々と受け継がれているのではないかと思います。
 JAとはそういう肌感覚で組合員・利用者と接する人間的な組織だと思います。このような真心をやりとりするような信頼関係があるからこそ、今の様な厳しい時代でも、ありがたいことに目標が連続して達成できているのだと思います。

 太田原 人間的な関係が培われているからこそなんですね。


◆直売所が非農家と農協を結ぶ

太田原 高昭・北海道大学名誉教授 市村 組合員・利用者のもとにコツコツ毎日足を運んで、それを積み重ねていくことが協同組合の精神ではないかと思っています。そのような積み重ねがあるからこそ地域社会にとってなくてはならないインフラ的な役目をJAが果たすことができるわけです。

 太田原 農村エリアでは、そういうJAへの安心感とか信頼感が長年にわたって培われ、それがJA共済に対する信頼や安心になっていると思いますが、都市部周辺の人たちも准組合員としてたくさん加入してくれています。その人たちがJA共済を選択するのはなぜだと思いますか?

 市村 JA・JA共済は農村部では人と人との結びつきと信頼で成り立ってきましたが、都市部周辺では「私たちは農協には関係ない。農協とは取引きできないのでは?」、といった感じでこれまでは一言でいったら馴染みがなかったんですね。
 ところが15年くらい前から各地域で直売所が地元の新鮮な野菜を提供するようになって、都市部周辺の人たちからも「生産者の顔が見える」「地元の野菜はこんなに美味しいモノなのか」と見直され、JAも身近な存在になったと感じます。それが心のドアを開くきっかけとなり、「私たちもJAの話を聞いてみようか」。ここから始まって選択肢の一つになっていったのだと思います。

 太田原 直売所が都市部周辺の人にもJAの存在を身近なものとし、JA共済の地域への浸透にも一役買ったということですね。

 市村 JAは営農・経済や金融、共済をはじめいろいろな事業を営んでいます。直売所の存在が、改めてJAが農業を核とした総合事業にあることを気づかせてくれるきっかけとなった。JAの自己改革を進めるヒントも、このようにJAの本来の姿にどう取組み、機能を高め、発信していくかだと思っています。

 太田原 今回優績表彰されるJAは、やはりそういうJAでしょうか。


◆総合農協は絶対に守っていく

【インタビュー】くらしと営農を支えるJA共済事業めざし 市村 表彰を受けるJAは、それぞれ組織としての成熟度が高いJAです。長い間にそれぞれのJAの風土を作ってこられた。その風土が役職員の意識を高めているといえますし、共済、金融という前に、職場の皆が助け合うという風土づくりが成功していると思います。
 JAにはいろいろな事業がありますが、役職員の力を一つに結集にしやすいのは共済事業だと思っています。共済事業というのは「理(利)」だけで人が動くものではなく、感性とか感情という「心」が入っていないと大きな力が発揮できない事業です。地域に「しあわせの輪」を広げていくためには、まず役職員が輪になる、そんな組織風土づくりがJA全体に必要です。

 太田原 共済推進だけが優秀だというJAはないということですね。総合農協としてうまく機能しているからこそみんなでやれるわけですね。

 市村 共済事業だけでやっていたらバラバラになるでしょう。 そういう意味でも農協改革の議論は色々出ていますが、総合事業としてのJA運営は絶対に守っていかなければならないと思っています。

 太田原 市村会長から総合事業を守っていくというお話をいただきましたが、これが自己改革の基本だといえますね。


◆変化のイメージを明確に持って

 太田原 話は変わりますが、新たな「3か年計画」のスローガンは「地域に広げる助け合いの心~くらしと営農を支えるJA共済」となっています。地域をきちんと見て、それを助け合いの心で包んでいく、という素晴らしいスローガンですね。ここに込めた想いはなんですか。

 市村 これまでは地域経済の低調化や農家・非農家が混住化していくなかで、農協経営を維持することを意識した事業運営が重視されてきた点は否めません。今回の改革の目玉は、少子高齢化などで農家組合員が減少していくなかで、もう一度、営農を振興させながら農業所得を増やす。それとともに、混住化した地域社会のなかでJAが本来の役割を発揮していくためには、地域のなかでどう存在感を高めていくか。そしてそれを成し遂げていくためにどうしていくかということです。
 難しく考えるのではなく、農業や地域というものをもう一度思い返して、きちんとやる。そのためにJA共済でも「地域・農業活性化積立金」を創設して、農業振興や介護・健康増進や文化支援など、地域や県域などそれぞれの実状に合わせて活用していくことで、地域に合った「くらしや営農」の活動を支援してまいります。
 北海道から沖縄までスローガンは同じですが、中身は、それぞれのJAによって地域にあったかたちで農業振興にきちんと焦点をあてていただければと思っています。
 地域のことは自分たちが一番よく知っているわけですから、全国でみんながそれぞれの地域にあった取組みを考えていったら色々アイデアも出てくると思います。

 太田原 農家組合員だけでなく、地域全体の活性化をJA共済として後押ししていくというお考えですね。
 最後に全国のJAや職員のみなさんにメッセージはありますか。

 市村 JAや連合会の職員の皆さまには、ここ数年での「変化のイメージ」を明確に持ってほしいと思っています。
 そしてあわせて現場に目を向けることで「あっ! こんなに変わっていくものなのか」と。「これはいい」と実感し、それをまた現場で活かすような好循環をつくっていただけたらと思っています。

 太田原 くらしと営農を支えるJA共済の「3か年計画」のイメージが膨らんできました。
 今日は貴重なお話をありがとうございました。


インタビューを終えて

◆共済事業の可能性に期待

 市村会長は、ご自分の考えがどんどん出てくる方で、インタビューは楽しかった。「味のある人間的な組織」としての農協への強固な確信から、お話は常に「農業」と「地域」に焦点があり、連合会の会長として大切な「勘どころ」を押さえておられる。
 「農協改革」を、農業を核とした総合事業の大切さを気づかせてくれたと逆説的に評価しながら、「総合事業の分割はどんなことをしても阻止しなければならない」と対決点を鮮明にされる。直売所が地域住民を農協ファンにしているという話も説得力があった。
 その中で新たな3か年計画で「営農支援」を打ち出していることが注目され、共済事業に新たな魅力が加わるものと思われる。准組合員にとっても「地域の農業振興に貢献している」ことが実感できるのではないか。
 紙面の都合で割愛されたが、ふれあい農園の多面的な活用など、新鮮なアイディアが次々と飛び出し、共済事業のさまざまな可能性に目を開かせてくれた。市村会長の下で連合会も「味のある人間的な組織」になっていくことを期待したい。
(太田原高昭)

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