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金融共済:JA共済優績組合表彰2017

【市村幸太郎・JA共済連経営管理委員会会長】地域に広げる"助け合い"の心2017年5月17日

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くらしと営農を支えるJA共済
聞き手:石田正昭・龍谷大学教授

 今年もJA共済の普及推進で優秀な実績を残してきたJAを表彰する「平成28年度JA共済優績組合表彰」の日がやってきた。日銀のマイナス金利政策や少子高齢化など、厳しい環境下でも目標を達成された大賞受賞組合をはじめとする285の組合が表彰式に列席し表彰を受ける。平成29年4月からは「地域に広げる助け合いの心~くらしと営農を支えるJA共済~」のスローガンを掲げた「3か年計画」の中間年度が始まっている。そこで、JA共済事業を取り巻く状況とこれからの事業のあり方について、市村幸太郎JA共済連経営管理委員会会長にお話しいただいた。聞き手は、石田正昭龍谷大学教授にお願いした。

◆厳しい状況下で組織のパワーを発揮

 石田 平成28年度の普及推進は6年連続で事業量目標である推進総合の全国目標を達成するなど、厳しい状況下にも関わらず、大きな成果を上げましたね。

市村幸太郎・JA共済連経営管理委員会会長 市村 推進総合目標だけではなく、重点施策(新規契約)目標も7年連続で全国目標を達成しました。また、4年ぶりに全地区での目標達成という輝かしい実績を収めることができました。熊本地震への対応や、日銀のマイナス金利政策の継続という厳しい条件の中で、JA役職員の皆さんや連合会の職員が奮闘した結果であり、心から感謝と敬意を表したいと思います。

 石田 大賞を受賞した3組合をはじめ、表彰受賞組合に一言お願いします。

 市村 表彰受賞組合は、いずれも組合のトップを中心とする役員・幹部職員の使命感に基づく強い意思と、これまで積み重ねてきたJAとしての伝統が職員の皆さまを突き動かし、一つひとつ成果を積み上げてこられた結果だと思います。
 激しく変化する事業環境下にあっても、継続して成果を出し続けている組織のパワーは、JAグループの「創造的自己改革」や各地域の農業振興においても大きな存在価値を発揮することと思います。
 大自然を相手にする農業は、短期間で結果や効果を計ることができる産業ではありません。各地のJAは、これまでも懸命に様々な環境の変化に対応しながら、組合員とともに地域の農業振興に努めてきました。国民の多くの方もそれぞれの地域では、このようなJAの姿をご覧になったり接したりしたことがあると思いますが、報道の影響等もあり、誤解されている面も少なからずあると思います。

 石田 農業に関係のない一般の方々は、JAのことをよく知らないかもしれませんね。

 市村 これまでは、系統組織としても、JAをより良く理解してもらうための努力が足りなかった面があるかも知れません。元々、特に地方社会は農業中心に成り立っていましたが、高度経済成長を経て社会構造が変容する過程で離農が進み、サラリーマン化が進みました。その結果、地域住民と農業との関係に距離感が出てきた面もあると感じます。そうした点では、今回の農業改革の議論も、一側面としては、国民の皆さんに農業やJAのことを再認識してもらう機会になるかも知れません。

 石田 先日、熊本県のJAに行ったところ、デイサービスセンターがいくつもあり、JA共済の資金援助によって施設が出来ているところもあると聞きました。JA共済が相互扶助の精神で地域に貢献していることを多くの人に知ってもらえると良いですね。

 市村 こうした施設は組合員だけではなく、地域の方々も多く利用しています。JA共済が事業で得た収益を地域社会に還元し地域貢献につなげているわけです。
 私の地元のJAでは、定年後再雇用した職員を中心に、中山間地域の高齢者を対象とした定期的な訪問活動(見守り活動)に取り組みました。この取り組みを知った自治体から高齢者の安否確認に関しJAと提携したいという申し出があり、いまでは管内の全市町と協定を結ぶまでに至りました。また、都会に住んでいる家族などの了解を得て、地方に残り離れて暮らす高齢者の血圧、骨粗鬆症、認知症の検診をJA、厚生連が協力して行ない、その結果を家族にもお知らせする取り組みも始めています。

 石田 できることから、やっていくことですね。

 市村 地域に住む皆さまのために、一歩一歩前に進んでいく。それがJAの総合事業を永続的に続けていく力になると考えます。
 4月には、こども共済・建物更生共済の仕組改訂を実施しましたし、農業者向け保障も拡充しました。
 また、最近、自治体では自転車利用者への自転車保険への加入義務付けが進んでいますが、JAでも共栄火災の「JA自転車倶楽部」で、例えば同居のお孫さんを持つ組合員・利用者に対し「お孫さんの自転車事故などに備えられる保障ができましたよ」と、おすすめすることが出来るようになりました。お孫さんへの思いやりを、保障という形でおすすめすることができるようになったわけです。このように、地域の皆さまのニーズや思いに寄り添い、お応えしていくことが真のエリア戦略につながっていくと思います。

 石田 組合員・利用者のくらしに密着したきめ細かな関わりが大事ですね。

◆「地域の風」をみんなで感じ共有する

 市村 そういう意味で、これからの組合員・利用者対応においては、JAの各事業を連動させて総合事業としての好循環を生み出し、JAの価値をさらに高めていくような施策が必要と考えています。
 つまり、営農指導員であっても、税金のことも共済のことも一声かけたり、相談を取り次いだりすることができるようにする。すなわち、職員全員が連携して多角的に組合員・利用者のニーズに応えられる仕事をしていかないといけないということです。近い将来、少子高齢化がさらに進み、若者の労働力が不足する時代が訪れますが、それらの全てを機械化やIT化だけで補うことは出来ません。そのような状況下では職員一人ひとりが組合員や地域社会の中で、どのようにすればJAの総合事業の力をフル活用できるか考える必要があります。

聞き手:石田 正昭・龍谷大学教授 石田 組合員・利用者がどのようなことを求めているのかを、共済・信用・営農担当が垣根を越えて一緒に考えるということですね。

 市村 私は「夕礼に勝るものはない」と常々感じています。支店での夕礼で、業務の報告だけでなく「○○さんにお孫さんができたよ」「お孫さんが大学に受かって喜んでいたよ」とか「おじいさんが入院した」といったその日に得られた情報を共有する夕礼を、短時間でもいいから毎日続けることで、地域社会の「風の流れ」を感じることが出来ます。それをもとに職員の誰かが組合員・利用者にお会いするときに相手がいま一番気になっていることに触れて会話が弾んでいく...。こうしたことを繰り返すことで地域社会の信頼を得られるのだと思います。
 これからはチームワークを今以上に求められる時代がくると考えています。
 それぞれの支店で、地域をチームとして職員みんなで支え合っていくという協同組合の精神で、地域社会に向き合っていかないといけません。

◆共済の使命果たすため全力を尽くす

 石田 最後に、JA共済事業の平成29年度の課題と活動方針についてお聞かせください。

 市村 平成29年度は「地域に広げる助け合いの心~くらしと営農を支えるJA共済~」を掲げた3か年計画の中間年度として、「世帯に深く地域に広い推進活動」の確立に向けて、「全組合員への訪問・ご案内による接点強化と保障拡充」「万一保障・生存保障の拡充に向けた保障性仕組みの取組強化」「平成29年4月実施の仕組改訂を活用した次世代対策と保障拡充」を着実に展開していきます。
 共済事業を取り巻く環境は、刻々と変化しており、政府の規制改革推進会議の動きなども凝視していく必要はありますが、JA共済は、いかなる事業環境下にあっても、相互扶助の理念のもとJA共済の使命である「安心と満足」の提供を通じて、組合員・利用者の信頼と期待に永続的に応えていかなければなりません。
 これからも、農を基軸に組合員・利用者の視点に立った事業運営を通じて、豊かで安心して暮らすことができる地域社会づくりに取り組んでまいります。

【インタビューを終えて】
◆人間力・チーム力養成こそJAの命

 市村会長へのインタビューは、2年前に続いて2回目。今回は共済事業という枠を超えて、JAなりJA職員のあるべき姿をつぶさに語ってもらったという印象がある。
 組合員・利用者の本当の声をどう引き出し、どう活かすかがJAのいちばん大きな課題。個人的にも組織的にも、その活かし方に工夫を重ねる余地があると説く。一つのポイントは職員の「人間力」を高め、組合員との会話に深みを持たせること。もう一つは支店や部署の「チーム力」を高めること。それには、その日に起きたことをチーム内で共有する「夕礼」が欠かせないと説く。加えて、そこで共有された情報や認識、理念は部署横断的にも共有されなければならないという。それはすなわち全役職員が一つの気持ちで仕事をする「全員経営」の姿を表している。(石田)

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