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金融共済:農業復興元年

【農業復興元年】"グローカル"な視点で現場後押し 積極的な"援農"も 農林中金・奥和登理事長に聞く(下)2023年4月5日

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生産資材の高騰などで疲弊する農業現場の再生に向けて、農林中金はどんな役割を果たそうとしているのか。JA鹿児島きもつきの下小野田寛組合長による奥和登理事長へのインタビュー後半では、農林中金がJAや地域をいかに支えていくか、新たな模索を始めている姿が浮かび上がった。

"グローカル"な視点で現場後押し 積極的な"援農"も 農林中金・奥和登理事長に聞く(上)から

農林中金の奥理事長(右)と聞き手のJA鹿児島きもつきの下小野田組合長農林中金の奥理事長(右)と聞き手のJA鹿児島きもつきの下小野田組合長

輸出5兆円目標へオールジャパンの戦略も

下小野田 販売力、販売先という意味で、今までは国内での産地間競争でしのぎを削ってきましたが、鹿児島はアジアに近いのでもう少し輸出に力を入れたいと和牛やキンカンなどの販売ルート作りに取り組んでいます。国が2030年に農林水産物の輸出5兆円という目標を掲げていますが、農林中金はどう取り組まれますか。

農林中金の奥理事長農林中金 奥理事長

 人口が増え、GDPも増えていくアジアは戦略的なエリアだと思います。農林中金は、シンガポールなどの融資先のうち、日本からの農林水産物の輸入業者をいかに確保してレストランやホテルに届けるかがポイントですので、そういったアプローチなどを通して輸出に貢献したいと思っています。国内の産地間競争も重要ですが、これは日本のお米だとか日本のシャインマスカットだとか知ってもらうことも重要で、WBCではないですが、オールジャパンのような形で輸出戦略を考えていくことが大切かなと思っています。

"援農"が果たす3つの目的と意義

下小野田 輸出を伸ばす意味で国内のインバウンド需要をうまくつかむということも大事だと思いますが、コロナが少し収まってきた中で、農林中金で取り組んでいることはありますか。

 海外の方に、地方に行って日本の食や文化、空気を味わってもらいたいと考えています。実は、農林中金では、"援農"というとおこがましいですが、昨年ごろから職員がボランティアで農家に出向いて農作業を手伝う取り組みを始めています。職員の自発的な取り組みですが、これには三つの目的、意義があると考えています。

まず、農家さんは人手が足りない状況ですので、例えば最初の半日ぐらいは足手まといでも、二日目、三日目は着実に労働力としてお手伝いができるということです。
二つ目は、農林中金の原点はまさにそうした現場にあるわけですが、職員がこうした経験を通じて、自分の仕事がどう繋がっているか理解できるということです。
三つ目は、取引先にも声をかけて一緒に地域に行くことで、東京の人が地域の雰囲気に触れる機会を作るということです。こうした三つの観点を意識して、職員には取り組んでほしいと思っています。

地域のため広い意味での金融仲介機能発揮を

JA鹿児島きもつき 下小野田寛組合長JA鹿児島きもつき 下小野田寛組合長

下小野田 大変将来に繋がるお話だと思います。私は地方にいて、他の金融機関にはないJAバンクの役割はますます重要になっていると感じていますが、JAバンクのリーダーとして全国のJAの活動をどのように支援されていくのか、改めてお伺いします。

 JAバンクならではの金融仲介機能として、単に融資、信用リスクの仲介だけではなく、農業とくらしと地域、この三つの領域を繋ぐ機能をいかに発揮し、徹底していくかということだと思います。
農業の部分は農業所得向上のために何ができるか。担い手へのコンサルティングなどの取組みを進めています。くらしの部分は、地域に住む方の金融の利便性をいかに提供し、資産形成をサポートするかということですね。地域については本当に取り組みが広いと思います。「ふるさと共創」というテーマで、例えばスマホ教室や子ども食堂などもそうですが、農林中金の職員が、信連・JAとともに、地域のためにどんな取り組みができるか。広い意味での金融仲介機能を発揮したいと考えています。

もう一つは、JAの事務作業をできるだけデジタル化・効率化して、農家や地域に出向く時間を作ることが大切で、そのためのシステムやインフラを提供することも必要だと考えています。こうした部分も含めてJAバンクはしっかりとJAのために、農家や地域の方のために取り組んでいきたいと思っています。

農林水産業や地域は人間の拠り所であり宝

下小野田 最後に改めてグローカルな視点で、現場にメッセージをいただきたいと思います。

 これからのグローカルを考えるとき、ウェルビーイング、すなわち人の幸せや幸福度を考えると、農林水産業あるいは地域というのは人間にとっての拠り所、宝みたいなものだと思うんですね。物質社会は一定のところまできて、これから人類が求めていくのはやはり精神的な部分だと思いますので、都市の人に対して気持ちの安らぎを与えられる母なる地域であってほしいと思いますし、その地域の風景なり文化なりを大切にしていただき、かつ都市からの人を受け入れて農業や食を伝えてほしいと思います。JAグループはそこを支え続けないといけないと考えています。

そのため農林中金は、資金運用を行うだけでなく、人材も派遣させていただきますし、一方で農林中金の職員がそういうマインドをなくさないよう組織運営に努めたいと思っています。また、組合長の方へのエールとして、ぜひそうした器、地域を守っていただきたいと思いますし、私たちがしっかりとそれを後押しさせていただきたいと思っています。

【インタビューを終えて】
昭和58年、今からまさに40年前に奥理事長と私はそれぞれ農林中金、全共連に入った同期であります。その後お付き合いを重ねてきましたが、当時は当然40年後、お互い今の立場になろうとは想像すらできませんでした。『グローカル』な視点で今なお青雲の志を胸に前に進んでいきたいと人生を感じた対談でした。

(下小野田)

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