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【クローズアップフードビジネス】米国産コメ 外食市場狙うカリフォルニアのバラ2013年12月2日

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・米国のコメ生産量は900万t
・加州オリジナル品種「カルローズ」
・すでに1万7000tが日本に
・プロ料理人の認知度を高める
・加工米の関税をゼロに?

 安倍政権はTPP交渉について年内妥結をめざしているという。どういう内容で妥結するのか。そのときに「聖域」とされていたコメなど5分野がどうなるのか、いまだ明らかにはされていないが、関税率が下がれば安価な海外産米が入り、日本農業の根幹であるコメは壊滅的な打撃を受けるといわれている。
 TPPを積極的に推進し、年間900万トン前後のコメを生産するアメリカは、日本のコメ市場のどこをターゲットにしようとしているのかを取材した。

◆米国のコメ生産量は900万t

 まず、アメリカのコメ生産量はどれくらいなのかを見てみよう。表1はUSDA(米国農務省)が発表している2009年から2011年の米国のコメ生産量をまとめたものだ。
 年ごとに生産量は変化しているが、日本を上回る概ね900万t前後で推移し、2011年は収穫面積106万ha、生産量は839万tだ。そしてアーカンソー州とカリフォルニア州の2州で収穫面積の66%、生産量の68%強を占めていることが分かる。
 日本のコメ販売農家の平均経営規模は約1haだが、米国カリフォルニア州のそれは約160haと日本の160倍だ。規模の違いなどもあり、コメの生産コストは、日本の全国平均1万6000円(60kg)に対して米国は1800円と日本の9分の1だという。ちなみに日本の15ha以上の経営規模の場合は1万1100円で米国の6倍強となっている(「米をめぐる関係資料」平成25年7月農水省)

表1 アメリカの米生産量◆加州オリジナル品種「カルローズ」

カリフォルニア州サクラメントバレーの水田 再び表1に戻ると、アーカンソーは長粒種が主体であり、カリフォルニアは中粒種が中心と品種で棲み分けていることが読み取れる。日本と同じ短粒種(もち米を含む)は、14万t前後しかない。
 長粒種はインディカ米といわれ、日本でもタイ料理店などで使われており、東南アジアでおなじみのコメなので知っている人は多いといえるだろう。
 それでは中粒種についてはどうだろうか。「日本のおコメである短粒種とタイ米等で知られる長粒種の中間にあたり、双方の優れた点を持ち合わせ、軽い食感とアルデンテとも言える歯ごたえが特長」だと、USAライス連合は説明する。
 この中粒種は「カルローズ」(カリフォルニアのバラの意)という名称をもつカリフォルニア州のオリジナル品種で、カリフォルニア州のコメ生産量の90%強を占め、40カ国以上に輸出されている「世界でも良く知られたおコメで、アジア料理から地中海料理、西欧料理まで、幅広い料理に活用」されている(USAライス連合)。

(写真)
カリフォルニア州サクラメントバレーの水田

◆すでに1万7000tが日本に

 表2はここ数年の米国のコメ輸出量と相手国上位10カ国への輸出量をまとめたものだが、メキシコが30%前後、次いで日本が15%前後を占めている。ベスト10の推移をみると南北アメリカ諸国が多いが、最近は米国の中東政策を反映してか、トルコ、イラク、サウジアラビアそして10/11年にはリビアが第5位入ってきていることが注目される。
 日本の米国からの輸入量は、毎年35万?38万t前後となっている。品種別には長粒種が多いのだが、USAライス連合日本代表事務所の小島由美ディレクターによれば「カルローズ」は「12年産米で1万6911t輸入されており、これは11年産米の10倍」だという。
 日本人のコメ消費量は減少傾向にあるが、家庭内での消費は全消費量の3分の2で、中外食が3分の1。中外食の45%前後が外食だ(米穀機構「米の消費動向調査」)。国内のコメ消費量を800万tとすれば外食は120万t近い市場だ。見方によっては、日本の外食市場は「規模が大きく、コメの消費量も多い」ということになる。カルローズは200万t以上生産されており、十分にこの市場に対応できる。
 カルローズは粘り気が少なく、冷めても風味が落ちにくいという特長を活かした「サラダやリゾットに最適」だとUSAライス連合は外食産業を対象としたアピールを徹底。同連合日本語版ホームページは、「カルローズ」について、その特長はもとより、その特長を活かした用途(調理)やそのレシピなど、カルローズのアピール記事が満載されている。

表2 アメリカの米輸出量と相手国上位10◆プロ料理人の認知度を高める

 さらに今年7月には、プロの料理人にカルローズを使った新メニューを創作してもらう料理コンテストを行い、フランス料理のシェフをはじめ約200人が参加した。昨年までは一般の消費者を対象にしていたが、「外食産業での認知度を効率的に高める」ために、プロに対象を絞ったのだという。
 実際に東京の中央区箱崎でコメはカルローズしか使わないというカフェキッチン&マルシェ「ビンチェ」で、「海老と帆立のレモン風味雑炊」を食べてみたが、国産米だと時間が経つとスープの味が変わったり、コメが糊状になったりするが、カルローズの場合は最後まで、スープの味が変わらず、コメがふやけたり糊状になることもなく、サラサラと食べることができた。
 ビンチェのオーナーである水村郁代さんはある外食産業で働いているときにカルローズに出会い、自分でこの店を始めてしばらくは国産米を使っていたが、シェフから「洗うなどの手間がかからないリゾットなどの料理に適したコメを」といわれ、カルローズを思い出し使い始めたらお客にも好評だった。
 価格的には「SBSなどの制度や為替の問題もあって安くはないが、国産米だと粘りをとるために水洗いしたりする手間がかかるが、そうした手間がかからないので、ほぼ互角」だ。しかし、13年産米は価格が下がっているので「コスト的には厳しい面がある」が調理のしやすさや食感からみれば「カルローズを使い続けていく」つもりだという。そういう意味では「日本の農家さんには申し訳ないけれど、関税が低くなって欲しいですね」。
 しかし水村さんは「すべてのコメ料理にカルローズが向いているとは思いません。家庭で食べる普通のご飯やおにぎりはやっぱり国産米でなければだめです」。「リゾットとか中華の炒飯や牛丼などの丼物にはカルローズ、和食のご飯は国産米というように、おコメの用途によって使い分ける時代になっていくのではないですか」とも。
 いままでは家庭で炊飯して主食として食べる美味しいコメをつくることを目標にコメがつくられてきたが、これからは、弁当やおにぎりで冷えてもおいしいコメ、炒飯やイタリア料理を中心とする地中海料理、タイやインド料理、日本人が大好きなカレーや鍋料理の締めの雑炊などで、サラサラと食べられるコメをと、用途に応じたコメの開発・生産が、外食産業などを中心に求められてくるのではないだろうか。牛丼にむいているという人もいる。そのとき、日本の生産者はどう応えるのだろうか。

◆加工米の関税をゼロに?

 「日本経済新聞」10月10日朝刊は「自民党がTPPで聖域を減らす調整」に入り「コメなど農産5項目586品目のうち、約220品目について関税をゼロにできないか検討」をはじめたとし「対象になるのは例えばリゾット用の加工米…」と伝えている。
 生米ではなく「加工米」となっているが、リゾットなど外食にターゲットを絞ったUSAライス連合の戦略と符合しているのは単なる偶然なのか? それとも意図的なものなのか、今後のなりゆきに注目していきたい。

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