【本紙独自調査】22年産米の作況見込み 全国「99」 200JAの米担当者に聞く2022年9月21日
JAcom・農業協同組合新聞が毎年実施しているJAの米担当者に聞いた2022年産米の作柄見込みなどについての調査結果がこのほどまとまった。それによると調査時点での作況見込みは全国で「99」となった。調査期間は台風被害もなく順調に生育してきたという地域が多かったが、9月18日に鹿児島県に上陸し、日本列島を北上した台風14号の影響は織り込まれていない。刈り取り前の地域での被害が懸念される。調査では米生産や水田農業への課題も聞いているが、「米価が上がらなければ見通しが立たない」との声に加えて、「肥料高騰で令和5(2023)年産がどうなるか心配」との先行きへの不安を指摘する声は多い。
本紙は、9月5日から16日にかけて各県で水田面積の多いJAを中心に全国で約200JAの米担当者に聞き取りを行った。担当者が現場で見た生育状況と作況指数、1等米比率の見込みを聞くとともに、水田農業の課題などを聞いた。
農水省が8月31日に公表した8月15日現在の作柄概況では「やや良」が11都府県、「平年並み」が24道府県、「やや不良」が11県だった。
今回の本紙調査の結果では都道府県別の作況指数見込みは103~93となった。103は宮崎県、102が北海道と茨城県で「やや良」の見込みは3県となった。一方、「やや不良」に相当する98は秋田県、神奈川県、静岡県、佐賀県、長崎県の5県。「不良」に相当する93が鹿児島と大分県となった。
北海道は田植え期から順調に生育との声が多く、一部、道南地域で8月の大雨による冠水の被害が心配との指摘があったが、おおむね順調と見込む。
東北地方は県によって生育状況にばらつきがある。青森、岩手では「極端に日照時間が短く曇天が多い」という地域や「茎数が少なく穂数が少ない」という地域もあるが、作柄としては平年並みと見込む声が多かった。
一方、秋田では8月の大雨による冠水被害で「土砂が水田に入った」などの声と日照時間が少なく登熟の遅れを指摘する声が多く、やや不良との予測となった。宮城県でも大雨被害はあったものの、概ね平年並みと見込む。山形県、福島県でも一部地域で大雨による土砂流入で刈り取り不可能となった水田があることや、8月の日照時間が少なく登熟への影響を懸念する声もあったが、作柄としては平年並みを見込んだ。
関東では茨城県で少雨で高温障害の懸念があるものの概ね順調との声が多かったほか、群馬県、埼玉県でも平年並みを見込んだ。
一方、千葉県、神奈川県では田植え後に気温が低く推移し初期生育が悪かった地域や、「梅雨明けが早く6月後半の水不足で生育が悪かった」などの声があり、作況の見込みもやや不良となった。 北陸地方では新潟県でゲリラ豪雨などの被害で刈り取り不能の水田が出ているとの報告がある一方、「天候に恵まれ順調。戻り梅雨の影響もない」など地域によるばらつきが目立った。
東海地方では静岡県で生育は順調と思われたが収穫してみると粒が小さく原因を検討中との声があった。愛知県の三河地方は春に明治用水の事故で用水が不足したり、田植えが遅れた地域があるが「夏は暑くなったので生育は追いついた」という。ただ高温障害の懸念も出ている。
近畿地方では平年並みとの見込みが多数を占めた。ただ、日照不足と高温障害のどちらも米の品質に影響があるとしており「乳白米が出ているが、どちらが決定的な問題なのかよくわかっていない」との声も。ほかに「極端な高温・乾燥、長雨の繰り返し」という声も聞かれた。
中国地方ではおおむね例年並みの天候で推移したとの声が多い。四国は高温で推移したとの報告が多く「例年より生育がよく刈り取りも早い」、「昨年より状況がいい」との声が多い。
九州では福岡県では、山間部での稲の倒伏を心配する地域もあるが、おおむね良好な生育との声が多い。佐賀県では一部地域で曇天続きが指摘され作柄の低下が見込まれる結果となった。長崎県では水不足で田植えができなかった地域があったとの声が聞かれた。熊本県ではおおむね順調、大分県では作況の低下を見込んでいる。
宮崎県ではいずれの地域でも良好な生育を見込んでいる。鹿児島県では一部で作況の悪化を見込んでいる地域があるが、平年並みと見込む地域も多い。
米づくりの課題についての意見は何といっても「米価を何とかしてほしい」「再生産できる価格でなければやっていけない」などの声が多数だった。肥料など生産資材のコストも上昇しており「令和5年産米がどうなるか心配だ」との声も多く聞かれた。
とくに米価下落と生産コストの高騰で小規模農家が米づくりへの意欲をなくし、やめていくとの懸念が一層強くなっている。
米価下落で交付金で経営を支えようと「飼料用米に転換している農家が増えている」との声も多く聞かれた。「米価が上がらなければ飼料用米」との声がある一方、飼料用米への交付金が「いつまで続くのか」との不安視する声はやはり多い。また、飼料用米への支援を専用品種に限定する方向で検討が行われていることについて「反対。主食用米と作り方が同じだから飼料用米が増えた」、「種が手に入らない」などの反発の声があがった。「主食用とのコンタミを考えると専用品種を入れるとブロックローテーションができない」との指摘もあった。
ただ、なかには交付金水準の高い専用品種の積極的な導入も検討したいとの声もある。一方、飼料用米に取り組みたいとしながらも「近くに畜産がなく増やせない」との声もある。
また、水田活用の交付金の見直しで5年に1度は水張りが必要との方針に対して「きちんと説明してほしい」との意見も聞かれた。
そのほか、麦・大豆の増産には担い手の組織が必要で「人・農地プラン」の策定のなかで考えていくべきとの意見もあった。また、肥料価格の高騰をふまえ持続可能な農業に向け「みどり戦略」への取り組みを現場で進めていく、とする声も聞かれた。
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