「雨にも負けず塩にも負けず」環境変動に強いイネを開発 島根大学・赤間一仁教授インタビュー2024年7月16日
島根大学の赤間一仁教授らのグループがかん水、塩害など環境ストレスに強いイネの開発に成功した。ゲノム編集技術を使ってGABA(ギャバ)を増やし、環境ストレスにさらされた際も生存率が上昇することを確認した。注目の研究の動機や意義、今後の課題について聞いた。
環境ストレスに強いイネの開発に成功した島根大学の赤間一仁教授(左)と留学生ナディア・アクターさん
――ご実家が農家と聞きました。
赤間 はい、宮城県の石巻(旧河北町)で両親が稲作農家でした。
――今回の研究のきっかけは何ですか。
赤間 乾燥や冠水、高塩に強いイネの開発は、コメ中のGABAを高める研究から始まりました。GABAはアミノ酸の一種、正式名でガンマアミノ酪酸と呼ばれています。GABAは高血圧症の改善や睡眠の質を高める効果が知られています。
――注目の成分ですね。
赤間 GABAを植物に外からまぶすと、さまざまなストレスに耐性を示すようになるという研究はいくつかありました。
――人や動物ではなく、植物にもストレスがあるんですか。
赤間 植物は動けないので、動物よりもストレスに敏感な反応をします。内部にGABAを蓄積するのもその一つです。GABAは、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)という酵素によるグルタミン酸の脱炭酸反応によって合成されるのですが、GADには自己阻害ドメインという、ブレーキの働きをする部分があります。ストレスがかかるとブレーキが解除され、酵素の働きが高まりGABAが増加します。
――このたびの研究では、ゲノム編集技術でGAD4の自己阻害ドメインを取り除き、いわばブレーキを外してイネ体内のGABAを増やしたのですね。
赤間 そうです。コメでは約10倍に増加し、根や葉でもGABAが増えていました。
図 ゲノム編集によって作出したイネの環境ストレス耐性試験
――研究に参加された留学生ナディア・アクターさんはバングラデシュの出身ですが、研究動機には同国の農業事情も関わっているのでしょうか。
赤間 大いに関わっています。バングラデシュではかん水が頻発し塩害もあります。当初はコメのGABAを増やすことが眼目でしたが、ストレスについても調べようと研究を進めたら、ストレスによってゲノム編集したイネのGABAが一層増えただけでなく、一般のイネと比べ、乾燥、冠水、高塩という環境ストレスにさらされても生存率が高いことがわかったのです。
研究用に栽培しているイネ。気候変動のなか、実用化に期待が高まる
――今後の課題は何ですか。
赤間 これまでの研究には日本晴という品種を用いてきましたが、この品種は近年あまり栽培されていないので、コシヒカリと掛け合わせ、GABAを増やし環境ストレスに強いコシヒカリを作っています。4~5回掛け合わせると完成しますが、現在2回まで進んだところです。イネだけでなく、野菜に応用できるかどうかの調査も研究課題です。
――気候変動の中、実用化への期待が高いですね。
赤間 国内もですが、東南アジアやアフリカでは温暖化による気候変動の影響はより深刻なので、国際協力にも役立つのではと考えています。
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日