コメビジネスに参入 住友化学2014年9月2日
種子から販売まで一貫して
住友化学(株)は、(株)植物ゲノムセンターから良食味で多収性のあるコメ品種(既登録品種3種を含む)や関連資産を取得し、農業生産法人などコメ生産者と契約して、種子・農薬・肥料の提供、栽培管理の支援、収穫したコメの販売などを一貫して行う事業を開始する。これに合わせて、新たにコメの品種開発や栽培技術などの研究開発体制を構築することにしている。
住友化学が植物ゲノムセンターから取得した登録済みの品種は、コシヒカリ系の短稈・多収で食味の良い中生種であるSD1号、低アミロース米のSD2号、晩生種のHD1号の3品種だ。
中心となるSD1号は、南東北から東海・北陸といった中日本地域に向いた品種だという。そして西南暖地向けには、SD1号の晩生種を現在、登録申請中だ。さらに開発中の品種に「北日本に適した品種があることを期待している」と同社アグリ事業部の大屋滋マーケティング部長。
2012年に小規模な試験栽培を開始し、13年には数カ所で、14年には小規模ほ場から数十ha規模のほ場を含む全国数十カ所のほ場で試験栽培を行った結果、事業化の目途がたったので今回の発表になったという。
生産については、生産法人や産地などと委託契約を行い、種子や肥料・農薬などの資材を供給、さらに栽培管理について支援し、収穫したコメについては、外食・中食を中心とした業務・加工用の専門業者と提携して販売していく。
◆1万ha100億円目標に
栽培方法については生産者側に任せるが、直播栽培の場合にも、一発肥料や直播栽培での登録も取得している除草剤・オサキニなどの生産資材や栽培データの提供も行っていくという。 貫和之執行役員アグロ事業部長は「数年内に1万ha100億円を目標に取り組み、地域を超えたブランドづくりをしていきたい」。初年度の15年産米については、大規模にコメを生産している法人のほ場の「3分の1とかというイメージ」で委託契約をし「数百haでスタート」したいと考えている。
同社がコメビジネスに参入する意味については、肥料事業を開始してから100年、農薬事業も60年以上になり「日本農業を元気にするために、住友化学として何ができるのかを考え、総合的にお役に立てる」と考えたからで、「この事業で、JAさんとも協力関係を築いていきたい」と話す。
同社はすでに施設・露地の野菜では、全国7か所に「住友ファーム」を設立し、自ら生産・販売を行っているが、「コメの生産は、コストダウンをはかるためには大規模化が必要」だが、すでに生産法人などで規模拡大されているので、こうした「大型生産法人との協力が大事」だと考え委託生産方式にしたという。
コメを巡る環境は極めて厳しい状況にあるといえるが、住友化学のこの事業がそのなかでどのような展開をしていくのか、注目される。
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