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「寿司屋」の志、産地との提携で2014年10月16日

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 JA全農の米穀事業では、業務用ニーズに合った品質・価格の米を安定的に生産してもらうよう産地に対して多収穫品種や低コスト栽培を提案し、一方で実需者とは事前契約を結び安定した生産者手取りを確保する取り組みに力を入れている。10月7日付記事「【JA全農がめざすもの】第4回米穀事業 業務用需要と安定契約 農家の経営発展めざす」ではそうした産地のひとつ、JA茨城みなみをレポートしたが、今号は実需者側の思いを聞こうと回転寿司チェーン「株式会社あきんどスシロー」本部(大阪府吹田市:豊崎賢一代表取締役社長)を訪ねた。

◆「寿司屋」が出発点

あきんどスシロー。全国に370店舗超ある 「株式会社あきんどスシロー」の創業は1984年、今年30年を迎えた。売上げ高は1193億円(13年9月期)で、2011年には回転寿司業界で日本一に。現在、店舗数は国内に377店ある(2014年9月末)。
 1970年代に登場した回転寿司や持ち帰り寿司店などはいわゆる異業種が参入した新たな業態というイメージが強いが、同社の前身は大阪市内の一軒の寿司屋。
 創業時から「高価な寿司を安価でお腹いっぱいたべていただきたい」との思いで回転寿司というスタイルに転換、人件費などのコストダウンを図ってきた。
 「私たちは寿司屋だ、という誇り、こだわりはしっかり持ち続けたいと考えています」と野口清史広告宣伝部長は話す。企業理念には「新鮮、清潔、工夫、スピード」という「寿司屋の基本を守ります」という言葉も掲げている。

(写真)
あきんどスシロー。全国に370店舗超ある

 

◆品種にはこだわらず

豊崎社長自ら収穫体験。JA滋賀蒲生町で。 その寿司屋の基本中の基本が酢飯、すなわち「しゃり」ということになる。
 では、どんな米が求められるのか? 商品部の荒谷和男部長は「高い米がうまいしゃりになるとは限りません」と話す。
 大事なのは酢との相性で同社は米酢100%を使用しているが、それが十分に混ざるよう適度な水分が炊飯した米に求められるという。また、米の特性には寿司として固まるための粘り気も必要だが、同時に口に入れてからはうまくほぐれなければならない。こうした特性に加えて、やはり味も大切で出汁や砂糖などで味を調えるが「コメ本来の甘味」が決め手になるという。
 このようなおいしいしゃりに向く米が同社が求める米であって「特定の品種、あるいは新米であることにこだわっているわけではありません」と荒谷部長は話す。
 同社はすべての店舗が店内で炊飯する。しかも開店前、昼食ピーク時など一日に複数回、米を炊く。常に炊き立てに近い状態でしゃりを提供することにこだわるため、荒谷部長は「あえて言えば当社は、冷めてもおいしい米という特性はあまり求めないということになります」と話す。

(写真)
豊崎社長自ら収穫体験。JA滋賀蒲生町で。

 

◆産地の挑戦受け止め

契約産地ののぼり 米へのこだわりを持つ同社の年間の米使用量は約1万3500tだという。JAと提携し、産地を育て望む米を安定的に調達する契約栽培を提案したのが全農パールライス(株)だ。前号で紹介したJA茨城みなみの「ふくまる」のほか、JA滋賀蒲生町が滋賀県の新品種「レイク65」の栽培で同社との結びつきを実現している。26年産からはほかに千葉県のJAきみつでも取り組みが始まり、来年には兵庫県下のJAでも取り組む予定だ。地域に合った多収穫米の栽培などで業務用米需要に積極的に応えようとする新たな産地が増えている。
 「こだわりをいくら持っていても米や魚が手に入らなければ私たちの仕事はない。一方で米産地も新たな取り組みを進めていることをJAグループとの取引のなかで知りました。産地と提携し将来を拓いていこうとの思いがこの取り組みの背景にあります」と荒谷部長。
 その地域の気候など特性に合った品種を安定的に作ってもらい同社のニーズに合った米が提供されれば、という。具体的に納入される精米は全農パールライスが提携産地の米を軸にブレンドし、双方で検討を進めて納入品を決めている。
 「こちらもブレンドの提案をするなど、関係者が集まって試食もします。お互いが理解していくなかで米はおいしくなったと感じています。“工夫”も寿司屋の基本です。常に改良を重ねていきます」という。
 契約産地では「スシローの米を作っています」と書かれたのぼりが立つ。今後も米へのこだわりを産地との顔の見える関係で発信していく方針だ。「提携産地をもっと増やしていきたい。お互いに志を高め、産地の方々に喜んでもらえる事業を展開していきたい。それがお客様に喜んでもらえることにつながると考えています」と野口部長は話している。

(写真)
契約産地ののぼり


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