米の安定取引「需給の安定が重要」 研究会報告2015年4月3日
農水省の米の安定取引研究会は3月末に5回の議論を報告書にまとめて公表した。
農水省は米の集荷業者、卸・小売業者、中食・外食業者、学識者で構成した研究会を昨年12月に立ち上げた。5回にわたり議論が行われ3月30日、安定取引の必要性とその拡大のための対応方向が報告書としてまとめられた。
米の価格は需給動向で価格が決定することが基本だが、報告書では作柄による供給変動で大幅な価格変動が生じている、と指摘。相対取引価格は22年産から24年産で60kg4000円上昇し、一方、24年産から26年産で同4000円程度程度下落するなど不安定な状況となっている。
こうした状況のなか報告書は播種前契約や複数年契約などの事前契約は価格変動を一定の幅に収めることができるとともに「行政による生産数量目標の配分に頼らない生産体制をめざす米政策の見直しの実現にも資することになる」と報告した。
一方、研究会では概算金について、作柄が明らかでない7?8月ごろに明確な根拠が示されずに毎年大きく変動するかたちで設定され市場価格にも影響を与えており「卸・小売業者、中食・外食業者が十分に納得いくものとなっておらず、その透明化を図ることが重要」との意見が出された。
具体的には生産者が営農計画を策定する6月頃の段階で「過去3年平均」や「5中3平均」などを基本に設定するなどの意見もあったが、最終的には「その前提として、需給の安定を図ることが重要」との意見も強調された。
そのほか、現物市場については、スポット取引の場や相場の参考にする場として活用されており、今後も同様の活用をしたいとの意見が多かった。また、安定取引を拡大するには国による迅速な需給・価格情報が必要なことや、生産者の作付け判断に資するよう米以外の作物も含めた幅広い情報提供が必要との意見もあった。
研究会の議論で指摘された概算金の透明化について、JA全農の岩城晴哉常務は4月2日のメディア向けの米穀事業説明会で「概算金はあくまで販売代金の一部であって(共計販売方式の)前払いの仕組み。共同計算を赤字にすれば生産者に大きな迷惑をかけるため、需給緩和の状況では概算金の設定は慎重にならざるを得ないのが事実」と強調し、「需給の安定に全力を注ぎ込んで、安定すれば適切な概算金価格を設定できるという考え方だ」として需給安定が最重要課題だと強調した。
また、概算金の透明性については今回の研究会だけでなく自民党などの米政策議論でも指摘されたが、この点について「誰に対する透明性か」と岩城常務は指摘。「言い方を変えれば概算金とは米の共計販売方式の一仕入れ方法。仕入れ単価を決めるとき、一般的に透明性がいるのか。生産者が十分納得する契約関係のなかで(透明性の問題は)出てくること」と指摘し、生産者に需給状況や共同計算コストなど概算金算定の理由を分かりやすく説明する必要があるものの、通常は仕入れ値などを明らかにしない商取引が一般的であることを強調した。
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