多収でいもち病に強い「ゆみあずさ」-業務用に最適な水稲新品種を育成 農研機構とJA全農2017年11月2日
農研機構東北農研センターはJA全農と共同で、多収でいもち病に強く良食味で中食・外食に最適な水稲新品種「ゆみあずさ」を育成した。
最近の米消費動向は、家庭での炊飯が減少し、調理済み米飯(中食)や外食での消費が増加する傾向となっている。
しかし、こうした中食・外食用米(業務用米)の供給が不足し、需給のミスマッチが指摘されている。業務用米には、一定の品質・食味を持ち、価格は安い米が求められているので、生産者の所得を確保するためには、収量が向上した品種(多収米)が必要だといえる。さらに、生産コストの削減と栽培の省力化に対応するために、いもち病に強く直播栽培に適した(耐倒伏性に優れている)品種の要望が高くなっている。
こうした要望に応えるために、業務用米の生産拡大に向けて、東北地方で栽培可能な多収性品種が必要だといわれてきた。
そこで農研機構東北農業研究センターは、JA全農と共同で、東北地方で栽培が可能で、多収で、いもち病に強く、倒れにくく、さらに、直播栽培にも適した良食味水稲新品種「ゆみあずさ」を育成してきた。
(図1)新品種「ゆみあずさ」とその他の品種の収量および倒伏の比較
「ゆみあずさ」の収量は、育成地で、標肥移植栽培では743kg/10a(5か年平均)、多肥移植栽培では809kg/10a(4か年平均)で、東北地方で広く栽培されている「あきたこまち」「ひとめぼれ」より約1割多い(図1参照)。
これを見ると、「あきたこまち」「ひとめぼれ」は肥料を多く施用すると草丈が伸び倒れやすくなるので、標準的な量を施用してするが、「ゆみあずさ」は標準的な量より多く肥料を施用しても倒れにくいので玄米収量が多くなる(多収)ことが分かる。
(図2)新品種「ゆみあずさ」とその他の品種の葉いもち・穂いもちの発病程度を比較
図2を見ると、葉いもち・穂いもちのいずれに対しても抵抗性はかなり強く、いもち病が発生しやすい地域での栽培にも適している(図2)。また、耐冷性は「やや強」に分類され、食味は「あきたこまち」「ひとめぼれ」と同等の良食味だ。
出穂期、成熟期とも早生品種「あきたこまち」より遅く、中生品種「ひとめぼれ」より早い「やや早」熟期となっている。
品種名の「ゆみあずさ」は、「しなやかな弓」のような姿から、神事に使われる「梓弓」にちなんで名づけられたのだという。
当面、宮城県と秋田県の一部産地で100haの作付が計画されている。今後は、これらの地域における業務用米安定生産に貢献し、おにぎりや弁当に使われることが期待されている。
業務用米の不足や価格高騰から、輸入米にシフトする動きが業務用米実需者には出ている。米を巡る状況は、国の動向を含めてさまざまあるが、「需要のあるところに的確に届ける」ことが農業生産の基本だと考えれば、こうした多収でしかも良食味、病気にも強い米の生産の重要性はますます強くなるだろう。そして需要に的確に応えることが、日本農業の基幹である水田農業を守り、38%に落ちた食料自給率を向上させる一番の近道ではないだろうか。
重要な記事
最新の記事
-
備蓄米 「味に差なく、おいしく食べてほしい」 江藤農相2025年4月24日
-
関税発動で牛肉の注文キャンセルも 米国関税の影響を農水省が分析2025年4月24日
-
トランプ関税で米国への切り花の輸出はどうなる?【花づくりの現場から 宇田明】第58回2025年4月24日
-
【JA人事】JA北オホーツク(北海道)吉田組合長を再任2025年4月24日
-
三島とうもろこしや旬の地場野菜が勢ぞろい「坂ものてっぺんマルシェ」開催 JAふじ伊豆2025年4月24日
-
農林中金 ロンコ・インベストメント・マネジメントに資本参画 不動産分野の連携強化2025年4月24日
-
積雪地帯における「麦類」生育時期 推定を可能に 農研機構2025年4月24日
-
日本曹達 微生物農薬「マスタピース水和剤」新たな効果とメカニズムを発見 農研機構2025年4月24日
-
棚田の魅力が1枚に「棚田カード」第5弾を発行 農水省2025年4月24日
-
みずほ銀行と食農領域の持続可能な発展に向け戦略的提携 クボタ2025年4月24日
-
【人事異動】兼松(6月1日付)2025年4月24日
-
日本生協連「フェアトレード・ワークプレイス」に登録2025年4月24日
-
旭松食品「高野豆腐を国外へ広める活動」近畿農政局 食の「わ」プログラムで表彰2025年4月24日
-
群馬県渋川市の上州・村の駅「お野菜大放出祭」26日から 9種の詰め放題系イベント開催2025年4月24日
-
JA蒲郡市と市内の飲食店がタッグ 蒲郡みかんプロジェクト「みかん食堂」始動2025年4月24日
-
適用拡大情報 殺菌剤「バスアミド微粒剤」 日本曹達2025年4月24日
-
倍率8倍の人気企画「畑でレストラン2025」申込み開始 コープさっぽろ2025年4月24日
-
農業・食品産業技術開発の羅針盤「農研機構NARO開発戦略センターフォーラム」開催2025年4月24日
-
雪印メグミルク、北海道銀行と連携「家畜の排せつ物由来」J-クレジット創出へ酪農プロジェクト開始 Green Carbon2025年4月24日
-
山椒の「産地形成プロジェクト」本格始動 ハウス食品など4者2025年4月24日