微生物と細胞壁成分の葉面散布で酒米16%増収 白鶴と京大の共同研究2020年12月14日
白鶴酒造は、京都大学農学研究科と共同で、メタノールを栄養源として培養した微生物(メタノール資化性菌)の死菌体またはその細胞壁成分を、出穂後のイネ地上部にスプレー散布することで、酒造好適米(酒米)の収量を増加させることに初めて成功した。
これまでにメタノール資化性菌の種子への接種や、葉面散布によるモデル植物や蔬菜類への成長促進効果が報告されてたが、イネなどの穀類については、顕著な増収効果は認められておらず、特に大規模な実圃場では初めての成功事例となる。
酒米でメタノール資化性菌の成長促進効果が認められれば、酒米栽培分野の発展に貢献できると考え、2014年からメタノール資化性菌に関する高い技術力を有する京都大学農学研究科と共同で、圃場規模の試験に着手。同社の独自開発酒米である「白鶴錦」へのメタノール資化性菌接種の効果を、5年に渡り農業法人「白鶴ファーム」のほ場(兵庫県篠山市、同多可郡)で検証した結果、メタノール資化性菌の生菌だけではなく、死菌体やその細胞壁成分を出穂後に1回散布するだけで、単位収量と登熟歩合の増加効果があることを明らかにした。
微生物の死菌体やその細胞壁成分での効果も認められたことから、メタノール資化性菌の製剤化や品質管理が容易になるほか、環境や安全面でのリスクもない。また、出穂後1回だけの散布でも増収効果を発揮するため、簡易で安全にイネなどの穀物の収量増加効果が期待できる。さらに、穀物はCO2を固定したバイオマスであり、社会的な課題である食糧増産だけでなく、温室効果ガスの削減にも繋がる。
今後は、酒米の王者と称される「山田錦」での増収効果も検証を進めるとともに、メタノール資化性菌製剤の商品化を進める予定。
同研究成果は、特許出願中(特許:特開2019-180361)。12月10日に国際学術誌「Microbial Biotechnology」にオンライン掲載された。
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